31 再会
季節は初春
暖かくなってきてすっかり雪も融け、緑が芽吹きだすころ
午後になり今日もいつも通り魔法の練習をしている
ウィルは家の手伝いがあるので一人で
やっているのは強化魔法を使いながら魔法障壁を同時に使う練習
障壁を使い二段ジャンプをしたり、前に飛んだあと目の前に障壁をつくりそれを蹴って後ろに反転したりといったアクロバットな動きの練習
強化魔法を使いながらだと一気に難易度があがる
そもそも同時に魔法を使うのが難しいうえ、強化魔法でスピードが上がっているので障壁を素早くつくれないと障壁にぶつかったり足場ができていると思ったらなかったり
そのせいで何度も転びあちこち擦りむいている
「くっそ~、強化魔法使うと魔法障壁の生成が間に合わない。もっと早く的確にできるようにならないと・・・」
今やっているのは一応魔法の練習だが体を動かすのでまだまだ寒いのにかなり汗をかいている
強化魔法を使うと想像以上に体が動くのでやっていて結構楽しい
「よし!もっかい!」
「ルシオーーー!!!」
「ん?」
声を掛けられたので振り向くとマヤがこちらに向かって走ってきていた
「あ!マヤ!久しぶりー!」
マヤに向かって手を振る
「ん?ちょ・・・うわっ!」
「ルシオッ!」
マヤはそのままの走る勢いで抱き着いてきた
勢いを後ろに逃がすようにマヤを受け止めながらぐるりと回る
強化魔法を使ってなかったら二人して転んでいたと思う
「マヤ!危ない!」
「ふふっ、ごめん。つい嬉しくって」
「マヤの方が体大きいんだから・・・」
「そんなに変わらないわよ」
そんなにとはいってもマヤの方が10センチくらい大きい
子供の10センチは大きいだろう
「今僕汗臭いから離れて・・・」
「ん?気にならないわよ」
「僕が気にするの」
「む~~」
不服そうだけど離れてくれた
「それより!約束通り来たわよ」
「うん、待ってた」
「ホントッ!?えへへ~」
「元気にしてた?」
「ええ!ルシオに教わった魔力強化も毎日やってるわよ!」
「おお、偉い!治癒魔法を使える量も増えたんじゃない?」
「たしかに治癒魔法を使っても前より疲れにくくなったわね」
「そういやどうしてここに?誰かに聞いたの?」
「村に着いてすぐディルクさん家の場所を聞いて、家に行ってみたら奥さんがこの辺じゃないかって」
「そっか、テッドさんは?」
「今家にお邪魔してるわ」
「じゃあ一旦僕も帰った方がいいかな」
マヤと一緒に帰りながら話をする
「ルシオはあそこで何してたの?」
「魔法の練習、いつもあの辺でやってるんだ」
「ふ~ん、どんな魔法?」
「魔法障壁を素早くつくる練習、こんな感じで」
実際にやってみせる
階段を上るように、はたから見れば空中を歩いているように見える
「なにそれっ!?凄い!アタシもやりたい!」
「え?僕もできるようになるのに時間かかったからすぐには厳しいかも」
「頑張るわ!教えてルシオ!」
「また後でね、どれくらいここにいる予定?」
「さあ?パパが良いって言うなら何日でも居たいけど・・・それより約束よ!後で教えてね!」
「わかってるって」
テッドは商人だ、きっと忙しい合間を縫って来てくれたんだろう
そう何日も滞在できないと思う
「そういえばローリスに来る途中何もなかった?暖かくなって魔獣とかも増えてると思うけど」
「一度ワイバーンに襲われたわ」
「・・・・は?」
「北の山脈の奥の方から餌を求めて降りてきたみたいってレルターさんは言ってたけど」
「レルター?」
「ローリスまでの道中護衛をしてくれてた人なの、ルシオほどじゃないけど凄腕の魔法使いよ」
「いや、えっと・・・」(つっこみたいところが多いな)
マヤの話だとワイバーンとは翼を持った大きなトカゲのような生き物らしい
まあ想像通りか
因みにドラゴンと違い火は吐かないらしい
(おお~、やっぱいるんだそういう生き物がこの世界には!)
そしてレルターという人はどうやら俺に会いに来たらしい
テッド経由で紹介してもらうかわりに護衛を引き受けたようだ
理由はマヤも詳しくは知らないみたいだが
(俺に?何の用だろ?まあ十中八九炭鉱の件が絡んでるんだろうけど)
そしてそのレルターという人は魔法使いでかなりの実力らしい
ワイバーンもレルターが討伐したので被害はなかったようだ
ワイバーンがどれほど強いのか知らないがレルターという人はかなり強いのだろう
マヤが俺ほどじゃないと言っていたが、マヤは多分俺のことを過大評価している節がある
ゆっくり歩きながら帰ったのでたくさん話ができた
それでも話したいことがまだまだあるが
「ただいまー」
「あ、お帰りルシオ。お客さんよ」
「おお!ルシオ君久しぶりだね。前よりちょっと大きくなったんじゃないか?」
「テッドさん、お久しぶりです」
テッドの横にもう一人、眼鏡をかけた温厚そうな中年男性が座っていた
(この人がレルターかな?)
「お邪魔しています。あなたがルシオ君ですか?初めまして私はレルターと申します」
「初めまして、ルシオです」
子供相手なのにとても丁寧な人だ
凄腕の魔法使いと聞いていたから、もっとこう仙人というか長い髭を生やした老人をイメージしていたが全然そんなことはなく
眼鏡でおとなしそうで、なんというか学者のような感じだ
「この冬にたまたまウェルクシュタットに寄ったとき炭鉱での話を聞いてルシオ君のことを知ったんです。オーガを倒し、治癒魔法を使い怪我人を治療して、さらに炭鉱を塞いでしまったと。それを全て八歳の少年が一人で。それで是非会ってみたくなりまして」
「はあ・・・」
「いきなりのことですみません。順を追って説明しますので少々お時間をいただけますか?」
「はい」
マヤとテッドそっちのけでレルターの話を聞くことになった




