30 神子のふり
あれから三ヶ月ほど経ち最近は雪もほとんど降らなくなってきた
まだ寒いせいで降り積もった雪はまだまだ融けずに残っているが
魔法の研究は手探りではあるが一応成果は出ている
この三ヶ月で使えるようになった魔法は二つ
一つは雷魔法
対象に電気を流す魔法で、威力を上げると雷を落とすこともできる
独学なので魔法名はない、つけるなら『サンダー』や『ライトニング』とかだろうか?
読んだことがないだけで魔導書にはあるかもしれないが
おそらく俺が使える魔法の中で殺傷能力は一番だろう
使えるようになったころ力加減を間違えて強い雷を目の前に落としてしまったことがあったが、音と衝撃でちびるかと思った
更に光も凄いので目と耳をやられてしばらくその場で動けなかった
自警団の小屋にいたバーナードが雷に驚いて様子を見に来たら俺が固まっていたから「ルシオが雷に打たれた!?」と驚いたそうだ
使い方を間違えないようにしなければ
そしてもう一つは魔法障壁
魔力を具現化させて壁をつくる魔法
こっちは特に苦労した、だがその分使い勝手は非常に良い。苦労したかいがあったというものだ
防御に使えるのはもちろんだが、移動にも使える
例えば階段のように障壁をつくるとその上を歩くこともできる
といっても足を出す度に障壁をつくり続けなければいけないのでちょっと大変だ
それに魔力の供給を絶つと途端に障壁は消えてしまう
もっと練習しないといけないのだが、使いこなせるようになれば空を歩くことも可能になるだろう
あと魔力強化は相変わらず毎日続けているので魔力総量も増えていると思う
と、まあ三ヶ月の成果はこんなものだ
(う~ん、やっぱり独学だと限界があるな・・・魔導書読むとか実際に使える人に教わる方が圧倒的に効率がいい。あ~、アシェルの家に行きたい・・・)
アシェルの家にはまだ読んでいない魔導書が何冊もある
それがただで読めるのはでかい
(おっと、そろそろかな?)
俺は現在西の自警団の小屋に居る
なぜかというともうすぐ早めに冬眠から覚めた魔熊の襲撃があるからだ
数は一頭だけ、なぜ分かるのかというと当然Loadしたからだ
魔法の練習中いきなり襲い掛かられた
まあなんなく撃退できたのだが、思うところがあってLoadしなおした
その思うところというのは、ユダ婆がうるさいことだ
山賊の件以来ユダ婆だけでなくここの村人は俺のことを神子だと思っている
しかし俺は長い儀式に耐えられず途中で逃げ出した
その為ユダ婆が神の怒りを買っただとか今でもネチネチ言ってくることがある
いいかげん鬱陶しいのでここらで一度予言してみせて、天啓はまだあるというふりをしておきたい
神の怒りを買ったものに天啓があるわけないだろう、なので予言が当たるとユダ婆もあきらめてくれると思う。多分・・・
(あらためて儀式をし直すとか言い出したらどうしよう・・・この為に十日もやり直したのに)
そんなことを考えながら外で待っているといきなり門に何かが体当たりするような音が響いた
「おおっ!?ほんとに来たね、ルシオ気を付けて」
「わかってる。でもこのままだと門を壊されちゃうよ?どうするのバーナード?」
「どうしようか・・・」
(よかった~、予定通り来てくれて)
もし来てくれなかったらまたやり直さなければならなくなるところだった
ここには俺とバーナードの他にディルクとエドワード、それに小屋の中にはユダ婆まで居る
魔熊は熊が魔獣化して狂暴になったものだ、体も普通の熊より一回りも二回りもでかい
村の門くらいなら数回体当たりすれば壊されてしまうだろう
「村の中に入られたら被害が出るかもしれないしな。ルシオ、魔法で何とかできないか?」
「できるけど」
「頼む」
ディルクにお願いされたので俺一人で片づけることにする
まず門を氷漬けにして壊されないようにした
そのあと柵を魔法障壁を使って飛び越える
するとそこには予想通りLoadする前俺を襲ってきた魔熊がいた
魔熊に狙いを定めて『アイスベルク』で氷漬けにする
はい終わり
(やっぱり氷魔法は便利だな~)
氷魔法というより水魔法なのだが
水は気体・液体・個体と変化させやすい
なので防御・攻撃・補助と色々使える
「終わったよ~、開けて~」
門の氷を消して中から閂を外してもらう
「早いな・・・おわっ!でかっ!」
「はへぇ~さすがだねルシオ」
「もうルシオに自警団に入ってもらったら?ディルク」
「いや・・・まだルシオには、はや・・・くないか・・・でもなぁ、まだ八歳だぜ?」
「でも村にルシオより強い人間いないでしょ」
「う~む・・・」
ディルクとエドワードがそんなことを話しているなかバーナードは自分より全然大きい魔熊を見て変な声を出していた
「ユダ婆ーー!もう出てきてもいいよー!」
そんなことよりユダ婆だ、本来の目的のために呼び出す
「なんと!?こりゃたまげた。こんな大きな熊に襲われたらひとたまりもないわい」
「ね?僕の言った通りでしょ?あんな儀式必要ないんだよ」
「むむむ・・・」
(これでネチネチ言われることがなくなるといいが・・・)
「ところでこれどうしよう?多分もう死んでると思うけど。氷消してもいい?」
「ん?本当か?今にも動き出しそうだぞ」
「ん~と・・・じゃあ」
魔熊の顔の部分だけ氷を消す
「どう?まだ生きてる?」
「えっ!?俺が確認するのか?バーナード頼む」
「・・・お父さん情けない」(ボソッ)
「で、でかすぎて顔まで届かないだけだ!バーナードなら届くだろ?な?」
「う~んと・・・死んでるんじゃないかな?」
バーナードが持っていた剣の鞘を使って魔熊の頭を叩いている
「魔熊って食べられる?」
「う~ん、食べられないことはないけど魔獣はどれも美味しくないと思うよ。普通の熊なら結構美味しいんだけど」
エドワードが答えてくれた
「ふ~ん・・・じゃあ燃やしちゃおっか?」
「そうだね、このままにしておくのは邪魔だし。頼めるかな?ルシオ」
「はーい、離れてて」
氷を消して魔熊を焼く
美味しくないそうなので炭になるまで燃やす
炭と灰の山ができた
「しっかしもうそんな時期か~、これから冬眠から覚めた魔獣が増えるな・・・」
「前話したようにここら辺に罠を仕掛ける?」
ディルクとエドワードがそんな話をしている
「そうだな、春になったらここは使っちゃだめだぞルシオ」
「え~」
「え~、じゃない。危ないだろ」
「僕がここで魔法使ってたら獣も近寄ってこなくなるんじゃない?」
「む、確かに・・・いや万が一のことがあったら駄目だ、やっぱり禁止!」
「は~い」
ここは広くて魔法の練習にはもってこいだったのだが、まあいい
今まで通り北の断崖付近でも練習はできる
そろそろ春が来る
もうじき約束通りマヤがやってくるかもしれない
楽しみだ




