29 魔法強化月間
冬の間は村の外を出歩く人が少なくなる
ローリスの村は北にある山脈に寒気がぶつかるせいか結構雪が積もる
あと単純に寒いから雪かきや急な用事でもない限りわざわざ外に出ることがない
しかし人が出歩かないからこそ魔法の練習をするにはもってこいの環境でもある
それに家でじっとしてるのも退屈だ、冬は長い
「う~~、さぶっ」
家を出て西の森、俺が焼け野原にしてしまったところへ向かう
この時期は獣も冬眠をしているため森は静かだ
なので魔法の練習をしてくると言ったらディルクとアリシアは
「わかった」「夕食には戻るのよ」と、結構淡白なリアクションだった
今までなら「森は危険だ」「魔獣には油断するな」と注意されていたのに
(あきれられてるのか、俺なら危険なことはないと信頼されているのか・・・)
できれば後者であってほしい
(しっかし寒いな・・・あ、そうだ!一つ魔法を試しながら行こう)
試すのは火魔法と風魔法でできるドライヤーのような温かい風を自分の周囲に纏って防寒できないか
(ん?ん~、維持するのがちょっと難しいな・・・温風を停滞させるんじゃなくて自分の周りを循環させる方が簡単かな?それとも・・・)
試行錯誤しながらゆっくり西に向かって歩く
門にたどり着くころには一応安定して使えるようになっていた
これで冬に外を出歩くのも楽になる
「さーて、まずは・・・」
今日考えているのは上級魔法を使ってみること
といっても『アイスベルク』と『トルネード』の二つ、上級でも範囲が割と狭いやつだけだ
それ以外は範囲が広すぎて村や残った森に被害が出かねない
(まずは『アイスベルク』からやってみるか)
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氷魔法はすでに使えていたのであっさり『アイスベルク』を習得できた
俺がオーガの動きを止めるために使っていた氷魔法とそんなに変わらない
単純に規模が違うので消費魔法がかなり増えるくらいだ
ただ氷を創り出すだけ
やることはシンプルだができることは広い
本来の使い方である巨大な氷塊を造りそれを目標にぶつけたり、押しつぶしたり
他には氷を創る場所を操作すれば、対象を氷漬けにすることもできる
氷塊を壁のように作れば防御もできる
非常に使い勝手が良い
上級を使ってみて思ったが魔法の初級中級上級という区別は規模の違いくらいしかないような気がする
まあ正確には違うところもあるのだが
例えば火魔法でいうと初歩の初歩である『トーチ』
これは手のひらや指の先に小さな火を熾す魔法だが
これに込める魔力を一気に増やすと中級の『フレイムバースト』に近くなる
水魔法なんかは更に顕著で
初級の『ウォーターボール』、中級の『ハイドロスネーク』、そして上級の『タイダルウェイブ』
『ウォーターボール』は水を打ち出す魔法、『ハイドロスネーク』は水の柱を鞭のように自在に操る魔法、『タイダルウェイブ』は津波のような魔法
操作の仕方は違えど、単純に水の量が増えて行っているだけとも思える
他の上級魔法もおそらく中級の上位互換のようなものだろう
それならきっとすぐ使えるようになれると思う
(そろそろなんか変化球な魔法覚えたいな)
案はいくつかある
冬は雪で滑るので剣術の稽古は休みになりがちだ
それにディルクは寒いのが苦手で外に出たがらない
なので冬は魔法の練習と家でもできる身体トレーニングがメインになってくる
(せっかくだだっ広い練習場ができたんだし、この冬は魔法の研究メインでいこうかな)
魔力強化や筋トレなら家に帰ってからもできる
なので午前中やっていた剣術の時間も魔法に使うことにしよう
「さ~て、それじゃあ次は『トルネード』だ」
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やっぱり難なく使えた
ここに来る途中試していた防寒魔法
その試行錯誤中に試していた温風を自分の周りに循環させる、それと原理は一緒
風で渦をつくる、竜巻はそれの強力なものだ
下位互換をすでに使える俺にとっては魔力量を増やし強力にするだけだった
(他の上級は無理かな・・・『グランドフィッシャー』あたりは勝手が違うかもしれないから練習しておきたいけど、村の近くに地割れをつくるわけにはいかないもんな~)
上級はどれも天変地異レベルだ
もっと何もないだだっ広いところじゃないと安心して練習できない
「今日はこのくらいでいいか」
明日からは今まで読んだ魔導書にはない魔法の研究を始めよう
そう考えながら家路についた




