表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
最後の戦い
283/300

283 届かない手


真夜中、月明かりで周囲は照らされている


俺は一人グラシエールの元へとやって来ていた




「・・・・はっはっは、とうとう自棄になったかな?」


(・・・・・・・)


「心を読む私に対し、『何も考えなければ』勝てるとでも?」


(・・・・・・・)


「ただそうして突っ立っているだけかな?」

「・・・・うるせえな、何も考えずに攻撃ってどうやるのか知らねえんだよ。ちょっと待ってろ」

「はっはっは、好きにしたまえ」


最後の作戦はグラシエールの言った通りで

『心を読まれるなら何も考えなければいい』だ


正確には

『息をするように当たり前に、グラシエールを殺せばいい』だ


人は普段から『息をしよう』と考えながら呼吸をしているのではない

無意識下でも生きるために息をする


それと同じように

息をするのと同じくらい『グラシエールを殺す』という行為を自然な物にすればいい


そうすれば考えを読まれても意味がない

グラシエールからすれば『思考』という行為をしない虫や魚を相手にしているようなものだろう


そんな作戦なんて到底呼べない事をやろうとしていた





出来るだけ頭を使わないようにグラシエールに攻撃をする

だが当然魔法障壁に阻まれ攻撃が当たることは無い


それでもただやみくもに

俺はグラシエールへの攻撃を止めなかった


(違うな・・・)


(何も考えずにレジストってどうやるんだ?)


(だから考えるなって)


(うぜえ!)


(あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)


(りんご・・ごりら・・らじお・・おくら・・あ、また“ら”だ)


(・・・あ!そういやあのゲーム返してもらってなくねえか?)


(2、3、5、7、11、13、17、19・・・)


(・・・・・何やってんだろう)



____

__

_




言うは易し行うは難し


当然何も考えずに攻撃なんてそうそうできる物ではない


だがそれも幾千幾万と数をこなして

体に染み込ませていけば絶対に不可能なわけではない、と思う


何も考えずに、もしくは余計な事を考えながら俺はグラシエールを攻撃し続けた


機械的に決まったタイミングでLoadして

そしてボーっとしたままグラシエールの元へ向かい

何も考えずに攻撃を続ける




『何も考えずに殺す』


そんな無茶苦茶な事を実行できるようになる頃

俺の精神は無事ではないだろう


『道を歩いていた時に気付かずに蟻を踏みつぶしていた』

なんてことは人間なら誰しもが経験していることだろう

それを『気付いたらグラシエールを殺していた』にしようというのだ


人を殺すことに何の躊躇いも無く、何も感じないような人間になってしまう


それはシリアルキラーやサイコパスなんかとも訳が違う


俺はそんな戦い方をしようとしている




だから仮にこの作戦が成功してしまったとしても

きっと俺は、その頃には頭がぶっ壊れてしまっているだろう


世界を守る為に、家族を守る為にグラシエールを倒したのに

その守るべき者に拒絶されては生きていく意味が無い

もっともその頃にはショックを感じるまともな精神なんてとっくに失ってしまっていることだろうが




____

__

_




何日?何ヵ月?何年?


今どのくらい経ったのかもわからない


ぼーっとしているうちにSaveの自動更新である30日が過ぎたら大変なので

『明るくなったらLoadする』という事だけは忘れずにやってきた

それも今では朝日を見ると反射的に行えるようになっている




「ほう、なかなかどうして」


(・・・・・・)


無表情のままグラシエールを攻撃する俺が居る


「ここまで“何も考えない”という行為を一貫できるものなのだな」


(・・・・・・)


最初はどうしても『考える』という行程が割り込んでいたレジストも

手が魔法障壁に触れると同時にレジストできるようになった


何万回という数こなしてくると流石に体が覚えてくる

考えるよりも先に体が動く




今俺とグラシエールの間には2メートルばかり距離が空いている


無意識に魔法障壁のレジストができるようになった頃から

グラシエールは俺が攻撃の為に手や足を出すと、その攻撃のみを防ぐように、局所的に小さな魔法障壁を張るようになった

それをレジストして次の攻撃を繰り出す頃にはまた新しい魔法障壁が張られている


俺はグラシエールに近づくことさえもできないでいた


____

__

_



「正直驚いたよ。何か一つの事でもやり続けるとそれは奥義にも成りえる物なのだな」


(・・・・・・)


グラシエールの言うように近づくこともできなかった俺が

ある時を境に少しずつ少しずつ距離を埋め始めていた


俺の攻撃とレジストの速度がグラシエールの防御の速度を上回り始めていた


「だが、それでも綻びはある」


(・・・・・・)


とうとうグラシエールに手が届く距離まで迫ったというのにグラシエールは椅子に座ったまま動こうともしない

初めて手が届きそうになり鼓動が速くなるのを感じる


「ふふふっ」


(・・・・落ち着け)


きっとまだ届かない

だから今焦ったって無駄だ


(っ!?)


俺の攻撃は当たらない

そう思って何も考えないようにしていた


なのに俺の振るった拳には魔法障壁に当たる感触が伝わって来ず

そのまま振り下ろされた拳の動きと連動するようにグラシエールの頭部は激しく揺れた


(・・・・あ?)


「ふふふっ、どうした?何も考えないのではなかったのかな?」


唐突に目の前で起きたことが信じられず攻撃の手が止んでしまう

だが何が起こったのかはすぐにわかった


「はあ・・・本当うぜえ」


俺の攻撃が当たったように見えたが俺の拳には何の感触も無かった

魔法障壁に当たった感触も、グラシエールの頬を殴った感触も、何も

俺の攻撃に合わせてグラシエールが殴られたふりをしただけだ


「そろそろ君が退屈するだろうと思ってね」

「・・・・」


ノーモーションで繰り出した俺の蹴りは

グラシエールの座っていた椅子を粉々に砕いた


「はっはっは、あんまり怒っては作戦が台無しだぞ?」

「・・・・・・」




後ろから聞こえてくる声に対し

湧き上がってくる怒りを鎮めてから

再び心を無にして攻撃を再開した


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ