282 最後の悪足掻き
あれから幾度
少なくとも何十という数の手札が増えてから
幾度も幾度も一人でグラシエールに挑んではやり直し
それでもその身に触れる事すら叶わず
心の中で大きくなっていく絶望を見ないふりをしたまま
やがて一つの結論が自分の中で大きくなっていた
「・・・・・」
「どうしたのルシオ?ぼーっとしちゃって」
「・・・ん?なんでもない」
「考え事?」
「・・・うん、そんなとこ」
今まで考えて考えて思いついた何百という作戦は
そのどれ一つもがグラシエールに
“嫌な顔一つさせる事”すら
そんな勝利とは呼べないほんのほんの些細な目標すら達成できなかった
「・・・・・」
失敗すると当然ショックはある
でもそれにも慣れた
「アタシ達に何かできることはある?」
だが慣れたとは言ってもショックが無い訳ではない
「・・・・・」
少しずつ少しずつ
「旦那様、少しお休みになられてはどうでしょうか?」
失敗をする毎に着実に、俺の中で絶望という二文字が膨らみ
「・・・・・」
大きくなり続けている
「ルシオ様、御用があればいつでも仰ってください」
何時からだろう
「・・・・・」
家族の言葉すら聞こえにくくなっていた
「なぁ」
「何?」「何でしょう?」「はい」
グラシエールと戦い始めてからずっと頭の中に思っていた事だった
「これから先、もし俺が今みたいに・・・」
「うん」「はい」「はい」
まともに戦っていてはグラシエールには勝てない
まともに戦わなかったとしてもグラシエールには勝てない
「皆の事を無視したとしても・・・さ」
「・・・うん」「・・・・」「はい」
小賢しい考えを持ったところで、それらは全てグラシエールに伝わってしまう
「俺の事を愛し続けてくれるかな?」
「「「・・・・・」」」
ならば“考えなければいい”
マヤ、シシル、サラ
三人の表情は同じで
『何を言っているのかわからない』
といった表情だ
それも当然だろう
いきなり『これから無視するけど愛してくれる?』なんて意味不明な事言われたら
俺だって一瞬思考停止して、考えてもやっぱり分からないから『何言ってんだお前?』とか言っちゃうだろう
「まあそうなるだろうな」
予想通りの三人の顔に小さな笑いが零れた
グラシエールと戦い始めてからずっと
俺の予想は外れたことがない
その大半は『どうせ駄目』というネガティブな予想ばかりだが
良い意味でも悪い意味でも、予想を裏切られることはほぼ無い
だからきっと
今俺が考えている作戦を実行すれば
また俺の予想通りになるのだろう
分からないのは結果だけ
まあこれも『どうせ』といった結果になるのだろうが
でもそうなれば今度の今度こそ手詰まりだ
でももしグラシエールを倒せた時
この最後の手段でグラシエールを
いや、最後の手段は勝手に俺の寿命を使うグラシエールに対するただの嫌がらせ『自殺』なので
これは最後の一歩手前の手段だ
「言い方をシンプルにしよう」
この作戦を実行してしまったらきっとノワールの時のように
「何があっても、俺を愛してくれますか?」
「「「はい」」」
俺はまた壊れてしまうだろうから
「ありがとう」




