25 デート
「次は・・・包丁か、だったらあの店がいいかしら」
マヤはこの街で育ったからか地理にもお店にも詳しかった
早朝のマヤの来訪で買い物を始める時間が早まったのもあるが、この調子だと午前中には買い物が全て終わりそうだ
俺たちだけだと店を探しながらの買い物になるのでどうしても時間がかかる
なんにせよ時間を短縮できるのはありがたい
時は金なりっていうし、それだけ午後に自由時間が増える
「ありがとう。マヤのおかげで買い物がスムーズに終わりそうだよ」
「うふふっ、どういたしましてっ」
炭鉱での恩返しができたからかマヤも上機嫌のようだ
「ところで・・・この辺はさっきより人も減ったしそろそろ手を離してくれても・・・」
「だ、だめよ!ルシオが迷子になったらどうするの?ルシオはこの街に初めて来たんでしょ?いくら強くても迷子になったら大変でしょ?」
宿を出るときからずっとマヤと手を繋いでいる
ずっとだ、お店で買い物している間も、マヤがディルクに次の買い物を聞いているときもずっと
いいかげん疲れてきた
なにより恥ずかしい、すぐ後ろで三人が俺たちのことを微笑ましく見ている
このやりとりもすでに四回目だ
宿を出てすぐ一回目、一個目の買い物を済ませてから二回目、そこから少し時間をおいて三回目
すべて「迷子になったら大変!」という理由で断られた
人通りが減ったので四回目に挑戦したが、やはり同じ理由で駄目だった
(もういいや、あきらめよう・・・)
あとちょっとで買い物も終わる
そうなったら解放してくれるだろう
買い物の途中で気になるお店を見つけた、もし時間ができたらそこに行ってみたい
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買い物が終わり昼食を済ませる
「これで全部かな、ありがとうマヤちゃん。本当に助かったよ」
「どういたしまして」
「お父さんこの後はどうするの?買い物も終わったし特にやることないんでしょ?」
「そうだな、予定もないし好きにしていいぞ」
「やった!」
「じゃあマヤちゃん、引き続きルシオに街を案内してやってくれるかな?」
「えっ、ちょっ」
「はい!喜んで!行こっ、ルシオ!」
(はぁ~~~~)
こうして自由のない自由時間が始まった
「おっ?マヤちゃんデートかい?」
「ち、違うわよっ!この子に街を案内してあげてるだけ!」
マヤは街の人によく声を掛けられる
このやり取りもすでに七回目だ
その度顔を赤くして否定している
(だったらせめて手を離せばいいのに)
まあこの年頃は異性と一緒にいることをからかわれるのが恥ずかしかったりする、俺も小さい頃はそうだった
漫画とかでもよく見る、小学生の男子が「お前女と遊んでんのかよ」「ち、ちがうよ」みたいなのだ
マヤは善意でやってくれているんだし、ここは俺も我慢することにしよう
しかしずっと握っているからかいいかげん手が痛い、マヤは平気なんだろうか?
「あそこの広場でちょっと休憩しない?歩き回って疲れちゃった」
「そうね」
二人で広場にあった椅子に座る
それでもマヤは手を離そうとしない
「さすがに座ってる間は迷子にならないよ?」
「えっ?あ~・・・そうね・・・」
そういってようやく手を離す
マヤは少し残念そうだ
(ん?あ~・・・もしかしてそっち?)
マヤはまだまだ子供なので使命感からかと思っていたが・・・
一人で考えながら繋いでいた手を少しプラプラ振っていると
「あっ!ごめん、痛かった?ルシオ」
「大丈夫、でもさすがにずっと手を繋いでたから。マヤは平気?」
「え?全然平気」
「そうなんだ、凄いね」
「なにが?」
「なんでもない。そんなことよりマヤって人気者だね」
「そう?そうかしら?」
「何度も声かけられてたじゃん」
「あ、あれはからかわれただけよ」
「あの人達みんな治癒魔法で怪我を治してあげたことがあるの?」
「さあ?どうだったかしら・・・覚えてないわ」
「そういえばマヤはいつから治癒魔法使えたの?」
「ん~~・・・覚えてない、気づいたら使えてたし」
「え~!?天才だ・・・」
「そ、そんなことないわよ!アタシからすればなんでもできるルシオの方が天才だと思うけど」
「僕は努力してできるようになっただけだもん。治癒魔法を使えるようになるまでほんとに苦労したんだから」
治癒魔法は他の魔法とは勝手が違う
人間の体の仕組み、医学の知識があまりないので使えるようになるまで本当に苦労した
「マヤは凄いね、自分の力をちゃんと人の為に使ってて。この街の人もそんなマヤのことが大好きなんだろうね」
俺にも自分だけの力、オプションがある
しかしちゃんと人の為に使えているかと聞かれるとちょっと自信がない
そのせいで以前も失敗して大変な目にあった
「僕もマヤのこと見習わないと」
「えっ?そんなっ、アタシこそルシオのこと見習わないと。年下なのにアタシより全然強いし治癒魔法も使えちゃうし・・・そうだ!アタシに魔法教えてよ!」
「それはいいけど。ん~、でも明後日には帰るしな・・・」
「あ・・・そうね・・・」
「あ!そうだっ、一個マヤにピッタリの練習方法があるよ」
「えっ、なになに?」
魔力強化の方法をマヤに教えることにした
マヤの魔力総量が増えれば更に多くの人を助けることができるかもしれない
幸いマヤは飲み込みが早いのかすぐやり方を理解してくれた
「これを毎日続けていれば魔力が増えていくと思うよ、僕も毎日やってるし」
「わかった!アタシも毎日やる!ありがとうルシオ」
「どういたしまして。それじゃ日が落ちそうだしそろそろ帰ろうか」
今度は俺の方からマヤの手を握る
「っ!? え、ええ。そうね」
マヤは一瞬ビックリしていたがすぐに今日一番の笑顔になった
やっぱりマヤは俺に好意を持ってくれているのかもしれない、確信はないが
前世ではさも好意があるようにアピールされ、いざ告白してみたら振られるなんていう性悪な女もいた
まあマヤはまだ10歳の子供だし、そもそもそんなことをする子ではないけど
(恋愛って正直苦手なんだよな~)
興味がないわけではない、しかし女性に対してどう接していいのかわからない
そのため面倒くさいという結論が出て、前世で死ぬまでの最後の数年間は恋人はいなかった
というか今の俺はまだ子供だ、恋愛したところで・・・
色々考えていたらあっという間に宿についた
「それじゃね、マヤ」
「ええ、また明日ね。ルシオ」
「うん、また明日」
どうやら明日も来るらしい
でもちょっと気になる店がある、明日は最終日だからどうしても行っておきたい
(さて、どうしよっかな・・・別にマヤと一緒に行ってもいいんだけど・・・)
明日のことを考えながら部屋に戻った




