22 炭鉱の街
ウェルクシュタットはかなり大きい街みたいだ
王都が近くにあり、さらに鍛冶が盛んなので王都から武器や防具の発注が頻繁にあるらしい
その為王都ほどではないが街もかなり発展しているとディルクに聞いた
「まずは持ってきた薪と燃料を売りに行くぞ」
「はーい」
荷馬車の中には売るために用意していた薪やら燃料がある
それを売ってから買い物をするみたいだ
「売るところは決まってるの?」
「ああ、毎年同じところで売ってるぞ。買い物もそこでするんだ、もうすこしで着くからな」
御者をやっているディルクの隣に座って会話しながら街を観察する
しかしディルクが言っていた程街に活気が無い気がした
「いつもこんな感じなの?」
「いや・・・」
「何かあったのかな?」
「そうだな、いつもより人も少ないし・・・」
街は静かで人通りも少ない
もう昼だというのに開店準備の状態だろうか?閉まったままの店も多い
「ここなんだが・・・やってるのか?」
着いたはいいが店の中は客もいなければ店番すらいない
「ごめんくださーい!テッドさんはいますかー?」
「あ、はーい。少々お待ちください」
店の奥に向けてディルクが呼びかけると奥から声がした
ここの従業員だろうか?青年がひとりやってきた
「ようコリー久しぶり」
「あ、ディルクさん。そういえばそんな時期ですね。でもすみません、旦那様は今緊急の用事で留守にしているんです」
「緊急の用事?」
「夜中に炭鉱で崩落があったらしくて、それを聞いたマヤちゃんが炭鉱に行くって言いだして・・・旦那様も一緒に。どうやら結構大事になってるみたいなんです。ここいらの人も大勢炭鉱の方に出払ってて」
「崩落か・・・しかしマヤちゃんの正義感が強いところは相変わらずなんだな」
「ええ・・・旦那様も手を焼いている様子です。ただマヤちゃんは治癒魔法も使えるし事実助かっている人も大勢いるので旦那様も強く言えないみたいですね」
「それで怪我人の治療のために飛び出したと」
「そんなところです」
「ふむ、買い物どころじゃなくなったな。どうしようか」
「今年も薪と燃料ですか?それなら私でもできますよ」
「じゃあ頼めるか?」
「はい」
どうやら近くの炭鉱で崩落があってそれの処理のために人が大勢出払っているらしい
そのせいで街が静かだったようだ
「お父さん、僕も治癒魔法使えるし手伝ったほうがいいかな?」
「そうだな、なにかできることがあるかもしれないし・・・ダーヴィ、こっちはまかせてもいいか?」
「いいっすよ」
「それじゃあ俺たちは炭鉱に向かってみる。あ、あとそれが終わったら宿もとっといてくれ」
「了解っす」
俺・ディルク・バーナードの三人で崩落したという炭鉱に向かうことにした
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「凄い人・・・」
「ほんとだな、かなり大事みたいだ」
炭鉱の入り口付近にはかなりの人だかりができていた
入り口から炭鉱内を覗くと奥の方が瓦礫に塞がれている
近くの人たちに状況を聞いてまわっていたら、崩落の際に無事逃げ出すことができた炭鉱夫に話を聞くことができた
なんでも夜明け前、炭鉱のかなり奥のほうで掘り進めていた穴が何かの横穴と繋がったらしい
その横穴というのがどうもゴブリン達が掘っていた穴だったようで
繋がった先からゴブリンやオーガが出てきて、その炭鉱夫はなんとか逃げ出すことができたそうだ
ゴブリンはゲーム等のイメージ通り、人間の子供くらいの大きさでそれなりに知恵も働く二足歩行の生物で群れを成して行動することが多い
猿と人間の間くらいの生き物だろうか
ディルク曰く、一匹だけなら強敵ではないが一度に何匹も相手にすると苦労するそうだ
そしてオーガというのがゴブリンの上位種みたいな存在らしく
2メートルを超える巨体で、且つ獰猛な性格
ゴブリンとは比べるまでもなく、一匹だけでもかなり苦戦するらしい
炭鉱内は広く、奥へ行けば行くほど入り組んでいるそうだ
炭鉱はかなり深くまで掘り進めているため、所々に作業員が休憩できるような少し開けた場所があるらしい
そこで寝泊りする炭鉱夫も少なくないそうで、ゴブリンが出現した直後にオーガ達が暴れたせいなのか崩落があり、中に残っていた何名かが取り残されてしまった
そしてそれだけでは終わらず
ゴブリン出現のすぐ後、討伐の為に編成された部隊が炭鉱内に入ったはいいが、討伐に手こずり怪我人が多くでたらしい
そして先ほど話にでたマヤという女の子が怪我人の治療のため炭鉱内に強行していったという
(正義感が強いっていうか馬鹿なんじゃ・・・)
さらに討伐隊の一組がやられたのか入り口の近くまでオーガがやってきたようだ
そして入り口付近で戦闘になりオーガが暴れたせいかまた落盤が起こった
そのオーガ自身は落盤に巻き込まれて死んだようだが落盤の影響で瓦礫を除去するまで完全に炭鉱内は孤立することになってしまった
そして現在、瓦礫の除去作業が始まったばかりのようだ
「まいったな、こりゃ本当に買い物どころじゃなくなったぞ」
「中の人は大丈夫かな?お父さん・・・」
「・・・無事を祈るしかないか」
(Loadして急げば間に合うか?)
ウェルクシュタットに到着する半日近くも前に事故があったようだしLoadしても間に合わないだろうか?
天啓があったと説明して、ローリスを出た直後から急げば間に合うかもしれない
しかし間に合ったとして、いきなり俺のような見ず知らずの子供が『崩落がある』と説明しても誰も信じないだろう
とにかく今は被害の状況を確認することが先決か
かといって炭鉱の中に入れないのではやることが無いのだが
(ただ待つってのも落ち着かないな、なにかできることは・・・)
そう考えウロウロしているとき入り口付近で風が吹いたのを感じた
(炭鉱の中に向かって流れている?)
よく見てみると瓦礫の上の方に子供が一人通れそうな隙間を見つけた
(父さんが賛成するとは思えないけど・・・)
しかし中に取り残された人たちは一刻を争う状況かもしれない
「お父さん、あそこ見て」
「ん?どうした?」
「あそこに隙間があるでしょ?」
「ああ、たしかに。しかし小さいな・・・お前、何考えてるんだ?」
「僕ならあそこ通れると思う」
「駄目だ!お前ひとりで何ができるって言うんだ!」
「村を救った」
「う・・・いや、だけどな・・・」
「無茶なこと言ってるのは僕もわかってる、でも中に今ならまだ助かる人がいるかもしれないんだよ」
「・・・・俺にとっては、中にいる大勢の人よりルシオ一人の方が大切なんだよ・・・」
「・・・・・」
ディルクの気持ちもよくわかる
それでも・・・
「大丈夫、無茶はしないから。自分のことを一番に考える。それにお父さんには見せたでしょ?危なくなったら土魔法で塞いじゃえば大丈夫だから」
「・・・・」
「それにマヤちゃんって子、まだ子供なんでしょ?人を助けるために中に入ったのに、ほっとけないよ」
「ふっ・・・お前も十分子供だろうが・・・」
「お父さん」
「・・・・・・ふぅ~~、絶対に無理はするなよ。瓦礫をのけたら俺たちもすぐに追いかけるから」
「うん!」
「おい!あんたたち何する気だ?」
「オーガやゴブリンは火に弱い、でも炭鉱内では火魔法はあまり使うな。なるべく見つからないようにするんだぞ」
「わかった」
「おい!聞いてるのか、ちょっと何やってんだ!子供一人中に入ったって意味ないだろ」
「気を付けるんだぞ!瓦礫をのけてすぐに追いかけるから!」
「わかってる!」
(炭鉱内で火を使うなってのは一酸化炭素中毒になるからだっけ?でも弱点の火を使えないならどうやって倒そう)
風を感じて穴に気づいたくらいなので空気は通っているのだろう
おそらくゴブリンが開けたという穴の向こうへと
ならば火魔法を使っても問題ないかもしれないが、まぁ用心するに越したことはない
そんなことを考えながら穴を通る
隙間は子供の俺でもギリギリ通れるくらい狭かった
瓦礫の向こう側はちらほらランタンが置かれているだけでかなり暗い
目に魔力を込めて視力を強化する
そしてなるべく音をたてないように慎重に奥へと進んでいった




