18 一件落着
「ああ、よかった・・・」
「・・・・・」
家に帰るとアリシアに抱きしめられた
いつもなら安心できるのに今は居心地が悪い
「アリシア、ルシオを頼む。俺はちょっと仕事ができた」
「え?どうしたの?」
「俺も状況を把握しきれてないんだ、戻ったら説明する。その間ルシオを休ませてやってくれ」
「ええ・・・わかったわ」
ディルクが西に向かって走っていった
「ルシオ大丈夫?顔色が悪いけど」
「・・・・・」
「熱はないみたいだけど・・・ベッドで休む?」
アリシアが心配してくれる
(ちゃんと説明しないとな・・・)
山賊が森に潜んでいたこと
グレッグが山賊の仲間だったこと
森を焼いたこと
人を殺したこと
俺が説明している間アリシアは一言も喋らなかった
ただずっと手を握ってくれていた
「・・・・・」
「お母さん?」
「えっとつまりルシオは村を救ったってことでいいのかしら?」
「・・・どうなんだろう・・・僕もよくわかんない」
「ふふっ、わかんないっておかしな子。悪い山賊達をやっつけたんでしょ?」
「うん・・・」
「ありがとうルシオ」
(今の説明だけで信じてくれるのか?)
アリシアはそれ以上何も聞いてこなかった
疲れた、本当に疲れた
できればSaveして朝を迎えたいがそうもいかない
(村の人たちにも説明しないといけないな・・・でもなんて話せば・・・)
アリシアとディルクは俺のことを不思議な子だと思いながらも今まで通り愛してくれるだろう
だが村人たちはそうはいかないかもしれない
なんせいきなり森に火を放つような子だ
「悪魔だ!」とか「危険だから村から追い出せ!」とか言われるかもしれない
俺は別にそれでもいい
このオプション機能があればこの世界でもきっと生きていける
だが家族は駄目だ
もしそうなったらまたやり直さなければいけなくなる
けどそうなったらどうすればいい?
まだ安心はできない
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しばらくしてディルクが帰ってきた
エドワードや他の自警団、ユダ婆やウォーレン等村人も数名家にやってきた
ディルクが苦笑いしながら俺の頭をなでる
「グレッグが全部喋ったよ、よくやったなルシオ!」
きっと俺が言っていたことが本当だったことに対してどう反応していいのかディルク自身悩んでいるんだろう
そしてエドワードが説明してくれる
「ルシオの言う通りグレッグは山賊の仲間だった、元々この村を襲撃するために潜入していたんだ。森で怪我をしたのも嘘だし冒険者というのも嘘だった。そして森にあった死体は全部で27人、グレッグも入れると28人というかなりの数になる。全員が武器を持っていたから賊で間違いないだろう。それに全員が狼のアクセサリーを身につけていた、これは王都に行ったときに手配書で見たことがあるんだが『黒狼』という盗賊団の証らしい。王都で指名手配されるほどの盗賊団だ。死体がつけていたものは熱で少し溶けていたがグレッグも同じものを隠し持っていたから間違いないだろう」
山賊はどうやら大物だったらしい
そりゃひとりひとりが馬鹿みたいに強いわけだ
「グレッグは?どうしたの?」
俺は気になって質問する
「自警団が3人がかりで見張っているよ。手足も縛ってあるし尋問も終わって猿轡もしてあるから心配ないさ。ああ、バーナードがルシオに感謝していたよ、グレッグに薬を盛られて眠っていたらしい。グレッグの見張りがあるから代わりに礼を言っといてくれって頼まれた」
「そう・・・」
バーナードが無事で嬉しい気持ちはあるのだけど
今は疲労と心労で素直に喜ぶだけの元気が無い
「さて・・・本当なら村の救世主に感謝して宴会でも開きたいところなんだが、そもそもどうしてルシオはこのことがわかったんだ?」
「それは・・・」
エドワードが当然のことを質問してくる
(なんて説明したらいいんだよ・・・SaveとLoad機能を使って何度もやり直しましたって?)
そんなの言えるわけがない
「ディルクとアリシアは何か知っているのか?」
二人とも首を横に振る
「みんなに言えないことなのか?」
「いや・・・その・・・」
長い沈黙が続く
「そうか・・・」
エドワードがあきらめようとしたとき
「まさかルシオや、天啓を授かったのではないのかい?」
ずっと黙っていたユダ婆が口を開いた
「天啓?」
「村を救えと神の声が聞こえたんじゃないのかい?」
(えっと・・・違うけどそういうことにしようかな)
ゆっくり頷く
「そうなのか?」
「えっと、僕もよくわからないんだけど・・・突然山賊が襲ってくることがわかって、グレッグのこととか山賊がどこに隠れているかとか頭に浮かんで・・・あとは無我夢中で・・・」
「それで食事中いきなり飛び出したの?」
「うん」
方針が決まると嘘がスラスラでてきた
詐欺師の才能があるかもしれない
「なんと・・・ルシオは賢い子じゃと思っておったがまさか神子じゃったとは・・・ありがたやありがたや」
「そうだったのか・・・」
(神子?なんだか大げさなことになってないか?大丈夫かな?)
「ありがとうルシオ、あなたがこの村を救ったのよ」
「・・・でも、たくさん人を殺した・・・」
どうしようもなかったとはいえやはりそこがひっかかる
前世でも、犯罪や虐待などのニュースを見るとなぜそうも簡単に人を殺せるのか
自分にとっては非現実的すぎて理解はできても共感はできなかった
「そうね・・・でも村人全員がルシオに救われた、それも忘れないで?」
「そうだぞルシオ」「ありがとう」「ルシオがいなかったら俺たちが死んでたかもしれないんだ」「ルシオは悪者をやっつけたんだよ」
皆が口々にそう言う
この場に居るほとんどの人間が命の危機だったという実感すら湧かないだろうに
謎が解けてスッキリしたのか、素直に無事を喜んでいるのか
はたまた俺を励まそうとしてくれているのか
(もういいのかな?終わっても・・・)
人を殺した事実は消えない
たとえLoadしてやり直したとしても
だったら向き合うしかないんだ
そう思うと村を救えた安堵からかまた涙が溢れてきた
長い、本当に長かった夜がやっと終わる
そして突然襲ってきた睡魔に抗うことができずアリシアにもたれかかるように眠りについた
結局アリシアはずっと手を握ってくれていた




