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Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
学園編
104/300

104 参番隊隊長マホン

「確かめたいって・・・具体的にどうすればいいんでしょうか?」

「儂と少しばかり遊んでもらえぬか?」


参番隊隊長マホンが一歩前に出る


(遊ぶって・・・つまりそういうことだよな・・・)


要は実際に戦ってみて俺の実力を見せろということだろう


『話が違うじゃないか』という視線を隣に立つクラウスに向ける


「む、すまない。おかしいな?昨日はノワールのナイフを見せただけでマホン殿は納得してくれたのに」

「クラウスさんもこうなること知らなかったんですか?」

「信じてもらえないかもしれないけどね。きっといつもの気まぐれだろう」

「気まぐれって・・・」

「メリアム様は多いんだそういうの」(ボソッ)


(本当かどうか怪しいとこだけど、まぁそれならクラウスを責めても仕方ないか・・・)


「クラウスさん、あのマホンって人・・・」

「うん、強いよ。マホン殿が隻腕隻眼でなければ参番隊の隊長をやっているのは私だろうきっと」


(つまり実力はクラウス並みということか・・・まぁクラウスの本気を見たことないけど)


「武器は腰に着けている物を使ってよいぞ。儂もこれを使うからの」


マホンは腰につけていた細い剣を抜いた

まるでレイピアのように細いが、しっかり刃もあるれっきとした剣だ

レプリカではないだろう


おそらく寸止めしてくれると思うが、正直『木剣でいいじゃん』と思ってしまう


「準備は良いかな?小僧」


もし仮に俺の実力が認められなかった場合どうなるのだろうか?

ノワールを殺したということは俺の虚言だと思われ

セルドロの共犯としてサラが重罪を科せられるなんてことになったりしないだろうか


(やるしかないか)


_______

Saveしますか?

►はい/いいえ

_______


別にこれはノワールの時のように命の奪い合いではない

それなりに善戦すれば大丈夫だろう

そう思うが念のためSaveしておいた

ノワールの件からSaveが小刻みになっていた


「はい」

「ではどこからでもかかってくるがいい」


かかってこいと言われても俺の戦い方は、まず相手の動きを見ることから始める

なのでしばらく睨み合いが続いた


「メリアム様の貴重な時間を無駄にするでない。来ないのなら儂から行くぞ」


俺がなかなか動かないことに腹を立てたのかマホンの方から動いた

一瞬で俺の目の前まで距離を詰める


(速い!・・・でもノワールほどじゃない)


ノワールの速さに目と体が慣れていたこともあり

初見でもマホンの攻撃をなんとか防ぐことができた


キンッ、キンッと剣がぶつかる音だけが部屋に響く


「ほう・・・思ったよりやるのぅ。ではもっと上げていこうかの」

「くっ・・・」


マホンの動きはさらに速くなる

しかしまだノワールと比べると遅い


マホンの攻撃を防ぎながら、魔法で反撃してみた


「おっ?なんじゃ小僧、剣士かと思ったら魔法もこなすのか」


俺が放った『ロックピラー』をあっさり躱しながらマホンも反撃してくる


「まだまだいけそうじゃの小僧。メリアム様の前じゃ、儂も少し張り切ってみようかの」

「っ!?」


一気にマホンの速度が上がった

ノワールほどではないと思うが

ノワールの速さに匹敵するかもしれないと思うほどの速さだ


「ほれほれ、そんなものか?この程度ではノワールを殺すことなぞ無理じゃろうが」


反撃する暇もないほどマホンの攻撃は苛烈だった


(片手で、しかもこんな細い剣使ってて、なんでこんなに一撃が重いんだよ・・・)


マホンの攻撃を短剣で受けた時

弾かれ、剣を持つ右手が大きく外に開いてしまった


その隙をマホンは見逃さず

俺の顔目掛け突きを繰り出してきた


これはあくまで俺の実力を測るための試合だ

マホンが本気で俺の顔を貫こうというわけではないだろう

後々考えると突きの速度は他の斬撃より明らかに遅かった

俺が避けれなければ寸止めして終わりだっただろう、きっと


しかしその瞬間ノワールと戦っていた時のような感覚にスイッチが入ってしまった


あろうことかマホンの突きに対して正面から突進する

そしてマホンの突きを左掌で受けながら顔から反らす

その結果マホンの剣は俺の左掌を貫通して左肩に刺さった

しかしそれで一瞬マホンの剣を封じることができる

その隙に右手に持つ短剣でマホンの首目掛け斬りかかった


「戯け!!!!」


しかしマホンは持っていた剣の柄頭で俺の斬撃を防ぎ

そして前蹴りで俺の鳩尾を貫いた

強烈な蹴りをくらい、掌と肩に刺さっていた剣も抜け

そのまま壁まで吹っ飛ばされる


「がはっ、うぇ・・・」


鳩尾を蹴られたことと背中を激しく打ち付けた衝撃で呼吸ができない

胃がねじ切れそうだと痛みを訴えてくる


「こんのっ、戯けが!!!」

「「兄さん!」」


マホンは激昂し

マルクとアリスは俺に駆け寄ってくる


(何をやってるんだ俺は!)


これは殺し合いじゃない

マホンも寸止めする気だったのだろう

それを俺が自ら突っ込んできた

しかも避けるでもなくそのまま自ら剣の犠牲になりに


マホンが怒るのも無理はない


「兄さん!大丈夫!?」

「血が出てる!すぐに治すから!」

「待って・・・アリス。ごほっ・・・大丈夫・・・大丈夫だから」

「大丈夫じゃない!」

「自分でやるから・・・二人は下がってて」


アリスが俺に治癒魔法を使おうとしてくれた

しかしそれを止めて立ち上がる

マルクもアリスもボロボロの俺を見て泣きそうになっている

というかすでに泣いている


「すみませんでした」


左手と左肩から大量の血を流しながら

未だ抜けない鳩尾のダメージも我慢して

何より先にマホンに向け謝罪した


「もう一度お願いします」

「・・・・・」


マホンは鬼の形相で俺を激しく睨みつけている


「マホン、彼の望みを聞いてやってくれないか?私ももう少し確かめてみたい」

「・・・・メリアム様がそうおっしゃるのならば」

「ありがとうございます」



俺はノワールとの戦いで変わった

良くも悪くも変わってしまったと思う


左掌は貫通して穴が開き、左肩も貫通していないにしても深くまで刃は届いていた

滴り落ちる血液がその傷の深さを物語っている

鳩尾も相変わらず胃がねじ切れてしまったのではと思うほどズキズキと痛みを訴えてくる


しかし意識はハッキリしていて、こうやって立っている

以前の自分なら、例えば赤竜と戦った頃の自分なら

痛みでのたうち回っているか、もしくはうずくまっているだろう


ノワールに何度も何度も斬られ、刺され、抉られ

痛みに慣れてしまった

それゆえにさっきのような無謀な戦い方を突発的に選んでしまったのだ


しかしそれはノワール相手では仕方のないことだと思う

明らかにノワールより弱い俺がノワールを相手にするには

身を犠牲にして一矢報いることでしかまともにノワールに攻撃することができなかったからだ

もっともそれすらノワールは完封して見せたのだが


これを強くなったと考えるべきか

それとも人として壊れてしまったと思うべきか


オプションがあるからこそできる戦い方だ

しかしこんな戦い方を続けていては命がいくつあっても足りない

Continueには回数制限がある

いずれ終わりが来てしまう



一人反省しながら傷を治す

痛みを我慢できるから治癒魔法が自分にかけやすくなった

今までなら痛みで集中力が続かず自分を治癒するのは難しかった

これは良かったところだろう



「「大丈夫?兄さん」」

「うん。二人とも心配かけてごめん。ありがとう。クラウスさんのところでもう少しだけ見てて」

「「わかった・・・」」


二人にも心配をかけてしまった



「お待たせしました」

「当たり前のように治癒魔法も使えるんだね、なかなか優秀だ」

「いくら優秀でもあのような命知らず、すぐにくたばってしまいますぞ。メリアム様」

「さっきとは違うようだけど?」

「・・・・・小僧、今度はお主からかかってきなさい」

「はい」



俺の持てる全力を

この人はノワールと同じで俺より格上だ

そしてこれは試合だ、胸を借りよう


二、三度深呼吸をしてマホンに突進する


ノワールの速さに目が慣れても

攻撃の速度が上がるわけではない

俺の攻撃はマホンにことごとく防がれる


「ふむ・・・」


マホンは一体俺のことをどう思ったのだろうか、気になる

だがまだこれが俺の全てではない


空いている左手で魔法を織り交ぜ攻撃の幅を広げる

少しだけマホンとの距離を開け左手で炎を出す


「小細工は効かぬは!!・・・っ!?」


次の瞬間マホンの背後で首筋に短剣を突き付ける俺の姿があった





「ほう・・・」

「・・・・・」


メリアムが声を漏らし

アルスパーダが目を細くして俺を見ていた



「ふぅ・・・」

「小僧・・・一体何を・・・」

「転移魔法か・・・」


アルスパーダが初めて口を開く

一発で見破られてしまったようだ

さすが騎士団最強


「そうです。これでノワールの不意を突き、致命傷を与えました。その後もこの技を使いなんとかノワールに勝つことができたんです」


さっき俺がやったことは

炎で目くらましをしながらマホンの背後に転移してみせた

マホンは炎を使い奇襲するところまでは読んでいたのかもしれない

しかし背後に回り込まれたとは気付いていなかったようだ

炎をかき消したら俺の姿が消えていたように見えただろう


「確かにこれならマホンと同じように、初めてなら防げないだろうね」

「むむ・・・」

「アル、クラウス。君たちはどうだ?彼の奇襲防げたか?」

「もう通じませぬ」

「私は自信ありませんね~」

「アルも初見なら防ぐ自信はないと」

「・・・・・」


アルスパーダは「“もう”通じない」と言った

転移魔法というタネがわかったから防ぐ自身があるのだろう

しかしそれは裏を返せば「初見ならわからない」ということでもある


クラウスは飄々としているが、こいつの本当の実力を俺は知らない

自信ないと言いつつもあっさり防いでしまいそうな恐ろしさもある



「どうだい?マホン。彼がノワールを殺したという話、信じることができるか?」

「・・・・・・致し方ないでしょう」

「うむ。ルシオ、ご苦労だった。試すような真似をしてすまない」

「いえ、それは構いません」


ノワールが凄腕の殺し屋だということは有名なのかもしれない

そのノワールをまだ子供の俺なんかが殺したとなれば、素直に信じる方がどうかと思う


「マホンさん、さっきはすみませんでした」

「もうよい」

「それと、叱ってくれてありがとうございました。俺、ノワールと戦ってからなんか変になってしまって・・・ノワール相手に普通の戦い方しても勝てなかったので、あんなことを・・・」

「・・・・・・儂の顔の傷、左目とこの左腕。どちらもノワールにやられたものじゃ」

「え・・・」

「もう十年になるかの・・・いつか儂自らノワールに引導を渡すつもりだったのじゃが。お主に先を越されてしまったようじゃの」

「あ、えと・・・」

「ほっほっ、お主が気にすることではない。そうじゃの・・・あ奴を相手にまともに戦っても勝ち目はないのぅ」

「・・・・はい」

「じゃがお主はまだ若い、幼いと言ってもいいくらいじゃ。命を粗末にするもんではないぞ?」

「はい」

「よく戦った、よく生きた。よう頑張ったのルシオ」


マホンはそう言って俺の頭にポンと手を乗せた

その時のマホンの表情は孫を見るおじいちゃんのように

ただただ暖かく、優しかった


「・・・・・はい」


俺がノワールと戦ったのはマルクとアリスを助けるためだ

だから何十回、何百回とやり直す羽目になっても、なんとか諦めず最後まで戦えた


だから別に誰かに褒めてもらいたかったわけじゃない

誰かに賞賛してほしかったわけじゃない


でも俺と同じ、ノワールに痛い目に合わされたマホン

同じ痛みを、同じ辛さを共感できるこの人に

『よく頑張った』と言われた時

涙が止まらなかった


「ほっほっ、今は思う存分泣くといい。味わった痛みを、恐怖を、全部洗い流すとよいぞ」

「ぐすっ・・・うぅ・・・」




相当溜まっていたんだろう

皆見ているからと止めようと思っても、止めどなく溢れてくる

泣き止むまでにかなり時間がかかってしまった


しかしもう気が済むまで泣いた

もう大丈夫だ


「すみません・・・もう大丈夫です」

「うむ」

「さて、ルシオ。君が殺してくれたノワール。実は私の命を狙っていたかもしれないんだ」

「そうなんですか?」


メリアムはこの国の第一王子だ

第一ということは第二、第三の王子というように、他に王位継承権のある者もいるだろう

そういう人物から命を狙われる可能性があってもおかしくない

もしかしたらそういう連中がセルドロと繋がりがあるのかもしれない

もしくは単純にメリアムが、セルドロかその他の貴族辺りに恨まれているのか


「つまりルシオは私の命の恩人でもあるんだ」

「それは大袈裟だと思いますが・・・」

「そんなことないさ。そこで君に褒賞を与えようと思う。何か望むものはあるかい?」

「えっと・・・特に・・・あ!セルドロの司教殺害の件で、セルドロ側にサラという女性がいます。ですがその人はセルドロに操られていただけなんです。その人を無罪にしてください」

「ん?あぁその件か・・・それは確か、クラウスが既に片付けていたと思うが?」

「はい。今は牢屋に入っていますが、あくまで重要参考人という立場です。今日にも解放できます」

「だそうだ」

「ありがとうございます!」

「つまりこれは褒賞ではない。さぁ何か望むものを言ってくれ。私は王子だ、できる限りのものを用意しよう」

「えっと・・・サラが無事なら特に・・・他に欲しいものも・・・無いです」

「・・・・・・・はぁ・・・わかった、ではこちらで勝手に用意しよう」

「え!?」

「明日にでも使いの者を送るよ」

「は、はぁ・・・」

「では話は以上だ。また会おうルシオ」

「は、はい!それでは」


なんか色々あったが、何かくれるようだ

王子が用意してくれるものなんか予想がつかない


「あ、クラウスさん。サラに会いたいんだけどどこにいるんですか?」

「ああ、それなら兵に案内させよう」


クラウスは手を叩き外にいた兵士を呼びこんだ

そして事情を説明して、俺達をサラのところまで案内するよう指示してくれた

クラウスはメリアム達と話があるのかこの場に残るようだ


「それでは失礼しました」

「「しました」」


挨拶をして部屋をでる

そして兵士についていった


これでやっとサラを自由にしてあげられる


___________



「いいねぇ彼、騎士団に欲しいなぁ」

「でしょう!?そうでしょう?メリアム様もそう思いますよね?」

「こりゃクラウス!メリアム様になんという口の聞き方をしとるんじゃ!」

「構わないさマホン、クラウスくらいの方が私も楽なんだ」

「むむむ・・・クラウスに比べたらルシオの方がまだ見込みがあるわい」

「はいはい・・・一度メリアム様からも勧誘してみてくれませんか?私は既に何度も振られているので・・・」

「おや?そうなのかい?」

「なんでも世界中を見て回りたいという目的があるようで」

「ほう素晴らしい。見聞を広めることは良いことだ。私も仕事以外で外に出てみたいものだな」

「それはご遠慮ください。どこで誰に狙われるかわかったもんじゃない・・・」

「ははは、しかしそうか・・・なら数年後が楽しみだね」

「ルシオなら世界中でいろんなことを学び、さらに成長して帰ってくることでしょうな」

「そういえばマホン殿が小僧呼ばわりしないなんて珍しい。すっかりルシオ君を認めたようですね?」

「・・・・一本取られておいて認めんわけにもいかんじゃろうが」

「アル、君から見て彼はどう映った?」

「まだまだですが・・・クラウスより見込みがあるという点はマホンと同意見です」

「ちょっと~!」

「ほっほっ、そうじゃろう」

「はっはっは・・・・・さて、彼に何を贈ろうかな?」


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