103 呼び出し
朝目が覚めると隣にマヤが居る
それだけで得も言われぬ幸せな気持ちになる
しかしいつまでも浸っていてはいけない
まだやっておかなければいけないことが残っている
「マヤ、起きて」
「んぅ・・・・おはよう、ルシオ」
「おはよう。支度して一回ローリスに行こう。やらなきゃいけないことがあるんだ」
「ん・・・わかった」
マヤは裸のまま寝ていたので、起き上がると布団がずり落ち上半身が露わになる
昨晩何度もやったのにそれだけでムラっときてしまう
「はい、服」
「ありがとう」
マヤは裸だったのを忘れていたのか少し恥ずかしそうに手で胸を隠しながら照れている
そんな仕草がまた可愛くて余計ムラムラしてしまうのだが
(我慢我慢・・・)
今日はサラの無実を証明するために色々やるつもりだ
朝から盛っている場合ではない
準備を済ましてマヤと一緒にローリスへと転移する
自分の部屋からリビングへ行くと家族みんな揃っていた
「「兄さん!」」
「ただいま」
俺の姿を確認するとマルクとアリスが駆け寄ってきた
「大丈夫だった?」
「悪い人やっつけた?」
「うん、悪い人は牢屋に入ることになるよ。それで二人に昨日のこと詳しく聞きたいから一緒についてきてほしいんだけど」
「「わかった」」
マルクとアリスは安心したのかすっかり元気そうだが
アリシアとディルクが心配そうにこちらを見ている
「ルシオ、マルクとアリスから聞いたけど本当なの?王都の司教様が殺されたって・・・」
「うん。でも殺した相手は捕まえたし、他に被害者も出てないから。司教様のことは残念だけど」
「教会の偉い人が殺されたりしたら大騒ぎになってるんじゃないのか?」
「まだ司教様が殺されたことは公にしてないみたいなんだ。だから父さんと母さんも秘密にしておいて、マルクとアリスもな。あとマヤも」
皆それぞれ頷く
「あとどうしても助けたい人がいるんだ。だから二人に昨日のことを証言してもらわなきゃいけないから、またこれから王都に戻るよ」
「助けたい人?他に被害者はいないってさっき言ってなかったか?」
「その人は一応加害者側だから。でも傀儡術ってので無理矢理やりたくもない殺しをさせられてたんだ。その人は悪くない」
「そうか・・・」
「ひどい話ね・・・助けられるの?ルシオ」
「多分・・・正直不安はあるけど、絶対悪い結果にはしないよ母さん」
「ルシオがそう言うなら大丈夫ね!」
(前から思ってたけどなんでマヤが自信満々なんだ?)
昔からマヤは俺のことを過大評価している節がある
信頼されているのは嬉しいが過剰な期待は少しプレッシャーにもなってしまう
マヤのことが好きだからこそ失望させたくない
「まぁそういうわけだからマヤはウェルクシュタットに帰ってて、終わったら会いに行くよ」
「むぅ・・・アタシにできることは・・・ないわよね?」
「今のところ」
「むぅ~・・・歯がゆいわね」
「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ」
「気を付けてね」
「わかってる。それじゃ・・・」
「失礼」
「「「「「「っ!?」」」」」」
いきなり二階から声をかけられた
誰も居ないはずだと思っていたので皆が一斉にビクッとなった
「あぁすまない、驚かせてしまって」
「クラウスさん!?」
「おはよう、ルシオ君。やはりあれは転移魔法陣だったんだね。そちらがルシオ君の御家族かな?お邪魔しています。私は王都騎士団弐番隊隊長のクラウスと申します」
「あぁ、これはどうもご丁寧に・・・ルシオの父です」
「母です」
「・・・は!つ、妻です!」
「おや?ルシオ君は結婚していたのかい?」
「いいえ。婚約者です」
「なるほど」
「弟です!」
「妹です」
「うん、知っているよ」
突然の来訪に皆状況を掴めないままのようだ
「ってクラウスさん、なんでそっちから?まさか寮の俺の部屋から来たんですか?」
「そうなんだ、ルシオ君に急ぎの用事があってね。学園の寮を尋ねたら部屋にいないし、でも案内してくれた寮母さんは昨日の夜帰ってきたと言うから、許可をもらって部屋に入ってみたら転移魔法陣があって、もしやと思ってね。驚かせてしまってすまない」
「まぁ別に構いませんけど・・・急ぎの用事というのは?」
「うん、私と一緒に城まで来てくれないか?」
「城?」
「メリアム第一王子が君に会いたがっている」
「・・・はい?」
「まぁとにかくついてきてくれ」
(王子?そんな人がなんで俺を?)
司教が殺されたことが俺の予想以上に重大な事件だったということだろうか
お城の王族が出張ってくるほどの
「あ、あの~・・・サラの無実を証明するためにもマルクとアリスを連れていっても構いませんか?セルドロが司教様を殺害した現場を見たのはこの二人なんで」
「う~ん・・・そうだね、いいんじゃないかな?」
「なんかふわっとしてますね。本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。メリアム様はそれくらいのことで機嫌を損ねるような方じゃないから」
(ほんとかよ・・・念のためSaveしておこ・・・)
「サラは今どこに?」
「城の牢屋に入っているよ」
「重罪を押し付けられるようなことはありませんよね?」
「それを判断するために君が呼ばれたんだ」
「・・・わかりました」
_______
Saveしますか?
►はい/いいえ
_______
「行きましょう。マルク、アリス、おいで」
「クラウスさん!家の子たちは大丈夫なんですよね?」
「もちろんです。少し話を聞くだけですよ。日が暮れるまでにはお返しします」
「・・・よろしくお願いします」
「はい」
いきなり王子なんて出てきたものだからアリシアとディルクとマヤが不安そうにしている
「クラウスさんがああ言うなら大丈夫。行ってきます」
「「行ってきます」」
クラウスと共にマルクとアリスを連れ、二階の俺の部屋から寮の部屋へと転移する
男子寮は女子禁制だが急ぎらしいのでアリスも一緒に連れていく
そして王都に来て以来
初めて城の中へと入ることになった
____
__
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「こっちだ」
クラウスに案内されるままついていく
お城に入るのなんて初めてなので兄弟3人皆キョロキョロして落ち着きがなく
傍から見ると田舎者丸出しだろう
「ここだ」
クラウスに案内された場所はかなりの広さがある何もない部屋だった
普段は使っていないのか、もしくはパーティーなどの時に使う用の部屋なのか
そんなだだっ広い部屋の中央に3人の男達が立っていた
「お待たせしました、メリアム様」
「構わない、ご苦労だったクラウス。いきなり呼びつけてすまなかった、君がルシオか?」
「はい」
真ん中に立つこの人物がクラウスの言っていたメリアム第一王子だろう
確かにオーラというか威厳がある
王ではなく王子ということもあって非常に若い、まだ十代くらいだろうか
下手したら俺と同い年くらいかもしれない
王族に対する礼儀なんてものを習ったことがないのでどう対応すればいいのかわからない
一応失礼のないように片膝をつき頭が高くないようにしてみた
後ろでマルクとアリスが慌てて真似をしている
「あぁ構わないよ、楽にしていい」
「は、はい」
「後ろの可愛い二人もね」
「メリアム様、こちらの二人はルシオ君の弟と妹です。司教が殺害された件の第一発見者でもあります」
「なるほど、それで一緒に来たのか・・・まぁいい。さて、君を呼んだ理由はわかるか?」
「いくつかは思うところがありますが・・・」
「そうか・・・君を呼んだ一番の理由はノワールのことだ」
「ノワールですか?」
てっきりセルドロが司教を殺害したことについて事情聴取のようなことをされるものだと思っていた
なのでノワールが一番の理由だと言われ少し驚いた
「うん、君がノワールを殺したというのは本当か?」
「・・・・・はい」
(なんだ?まずかったのか?でもノワール相手に殺さず勝つなんて器用な真似俺にはできないぞ)
『実はノワールは王子が雇う二重スパイでした』なんて言われたら
背中を嫌な汗が流れた
「信じられませんな・・・」
俺が一人静かに焦っているとメリアム王子の隣に立つ初老の男が呟いた
隻腕で、さらに顔に大きな傷がある隻眼の男
見るからに数多の修羅場を潜り抜けてきたであろう風貌だ
「ノワールを殺せるものなどこの世にどれほどいましょうや。ましてやそこの小僧ごときが殺せるはずもありませぬ」
「それを確かめるために呼んだんだ、あまり挑発しないであげてくれマホン」
『マホン』というのがこの男の名前のようだ
サラがプラータと呼ばれていたように通り名の可能性もあるが
「ルシオ君。彼は参番隊の隊長マホンだ」
隣でクラウスが説明してくれる
「因みに反対側のムスッとしてるのが壱番隊隊長のアルスパーダだ」
メリアムの隣に立つもう一人の男
背は2メートル近くあるだろうか
腕を組みこちらをジッと見ている
組まれた前腕を見ただけで怪力の持ち主だということがわかる
これで強化魔法まで使ったら一体どれほどの力を発揮するのかと身の程知らずな知的好奇心が湧いてきてしまう
(って壱番隊と参番隊の隊長!?)
つまりこの場には第一王子というこの国で王の次に偉いかもしれない人物と
壱から参までの騎士隊の隊長、つまり騎士団のなかのトップ3が集合していることになる
クラウス以外は初めて会うので実感が湧きにくいが
もの凄く豪華な面子ということだけは分かる
「まぁ今言った通りだ。君が本当にノワールを殺したのか、私たちはそれを確かめたいんだよ」
(面倒なことになってきた気がする・・・)




