102 本能
(疲れた・・・)
教会から学園の寮までトボトボ歩く
外は完全に真っ暗で人通りも全くない
教会を出てすぐSaveしておいた
クラウスに任せておけば大丈夫だとは思うが
サラが理不尽に重い罰を宣告される可能性もある
もしそうなってしまったらやり直してサラを逃がすなりなんなりしなければいけない
しかしノワールを倒した後からやり直すと、今度はセルドロに逃げられる可能性も出てくる
(クラウスに任せる前にSaveしておけばよかったかな?)
あの時はどうすればサラを人並でも幸せにしてあげられるかを考えていたのでそこまで頭が回らなかった
もうサラのことで失敗するわけにはいかない
(まあ上手くいかなかったら牢屋を襲撃してでもサラを逃がすか・・・)
そんな物騒なことを考えながらのんびり歩いて、ようやく寮に到着した
「ルシオ君!」
「アニーさん?どうしたんですか?こんな遅くまで」
「それはこっちの台詞よ!こんな時間まで何やってたの!?」
「えっと・・・色々ありまして・・・」
(何かアニーに怒られるようなことしたっけ?ってか今日のこととかなんて説明すればいいんだ?)
寮へ戻ると寮母のアニーが入り口で仁王立ちしていた
今までも帰るのが遅くなることは何度もあった
しかしこうやって入り口で帰ってくるのを待っていたことなんて今まで一度も無かったと思うが
「昼頃からずっと探してたんだから!」
「そんなに?何かあったんですか?」
夕方一度戻ってきたときは入り口まで行く前にカミリアと会ってすぐ引き返したからアニーと顔を会わさなかったようだ
「何かあったんですか?じゃありません!いきなり窓を壊して飛び出していったって他の生徒に聞いたわよ!」
「あ!」
(完全に忘れてた!)
マルクとアリスをノワールから助けるとき、時間短縮のために窓から飛び出したんだった
「下に人が居なかったから怪我人も出なくて済んだけど、一体何をやってるの!?」
「ごめんなさい・・・」
「何があったの?理由も無くルシオ君がこんなことするとは思ってないわ」
「その・・・えっと・・・」
「・・・・」
アリシアに怒られているような感覚だ
怒らせたくない人を怒らせてしまった
困らせたくない人に迷惑をかけてしまった
「あの・・・実はある事件に巻き込まれてしまって・・・一応一段落ついたんですけど、まだ全部解決したわけじゃなくて・・・なんて説明すればいいか」
「事件って・・・まさか教会で何かあったって話と関係あるの?」
「・・・はい」
「・・・・・私には話せないことなの?」
「そういうわけじゃないんですけど・・・」
(司教が殺されたってこととかまだ話しちゃいけないよな?)
「全部解決したらちゃんと話します。なんで窓を壊したのかとか、帰りが遅くなった訳とか」
「・・・・ふぅ、わかった。じゃあ待ってるわ」
「すみません」
「いいのよ。とりあえずルシオ君が無事に帰ってきてくれたから」
そういって頭を撫でてくれた
本当にアリシアとアニーは雰囲気が似ている
「ずいぶん背が伸びたわね」
「二次性徴の途中ですから。もうすぐアニーさんにも追いつきますよ」
「ふふ、そしたらこうやって頭撫でてあげられなくなるわね」
「その時はしゃがみますよ?」
「男の子がいつまでも恥ずかしくないのか?って笑われるわよ?」
「アニーさんに撫でられるの嫌いじゃないんで」
「あら嬉しい」
まあ実際は社交辞令のようなものだ
わざわざしゃがんでまで頭を撫でられるのはさすがに俺も恥ずかしい
「じゃあもう遅いから今日は休みなさい。窓は修理しておいたから」
「え!?ありがとうございます」
「いいのよ、まだ夜は寒いんだから窓がないと辛いでしょ?」
「助かります」
「あ!そうだ、ルシオ君の部屋にある魔法陣。あれは何?ちゃんと消せるんでしょうね?」
「消せます消せます!あれは転移魔法陣ですよ、あれがあれば故郷とかに一瞬で帰れるんです」
「へ~、話で聞いたことがあるけどあれが・・・上に乗っちゃったけど何も起こらなかったわよ?」
「魔力を籠めないと作動しないんで、アニーさんも使いたければいつでも用意しますよ?」
「ありがと。でも寮から離れる予定は当分ないわね~」
「そうですか」
いつもお世話になっているアニーになら喜んで転移魔法陣を用意するのだが
寮母という立場上、寮から離れることはほとんどできないのだろう
「それじゃお休み、ルシオ君」
「おやすみなさい」
(はぁ~・・・窓壊したことなんか完全に忘れてた)
アニーに迷惑をかけてしまった
自分の部屋まで歩くだけなのに、さらに足取りが重くなってしまう
(っ!?誰かいる)
自分の部屋に着くと中に誰かの気配を感じた
体は疲れていてもノワールとの戦闘でまだ神経は研ぎ澄まされていた
まさか刺客ということはないだろう
ノワールは殺したし、もう一人の黒ずくめはサラだった
ならばローリスに避難させたマルクかアリスが心配して戻ってきたのだろうか?
しかし二人には俺が会いに行くまでローリスに居ろと言ったはずだ
(二人が俺の言いつけを破るわけ・・・いや、あるかもしれないけど・・・)
なんにせよ俺に気配を悟られるくらいなので、ノワールのような俺を始末するために来た人間ではないだろう
しかし用心するにこしたことはない
ゆっくり、息を殺して扉を開け、中の様子を見る
「あ、やっと帰ってきた」
「・・・・マヤ?」
「お帰りルシオ。マルクとアリスに聞いたわ、大変だったんでしょ?」
中に居たのはマヤだった
男子寮ということもありマヤは声を潜めてくれている
「なんでここにいるの?」
「試験の結果を聞こうと思って会いに来ようとしたら、途中ローリスであの子たちに会って話を聞いたの。それでどうしてもルシオに会いたくなって。本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。大体は解決したから」
そう言ってもマヤは信じていないのか俺の体の様子をジロジロ見ている
そして怪我がないか前から後ろからとあちこち触ってきた
「本当に?ルシオってば無茶しててもそういう大事なこと話してくれないじゃない」
「本当に何ともないってば」
「もう・・・心配したんだから」
マヤは俺に怪我がないことを確認して安心したのか抱きついてきた
第二次性徴に入り俺の身長が伸びたことで真正面にマヤの顔がある
「あんまり危ないことしないで・・・」
「うん、ごめん・・・ていうか、その・・・あんまりくっつかないで・・・」
普段なら嬉しいが今はまずい
「なんでよ!?いいでしょこれくらい、本当に心配したんだからね!?っていうか二人に聞いたけど、何よ殺し屋って!?なんでルシオがそんな奴を相手にしなきゃならないわけ!?」
「ちょっ、力入れすぎ・・・それに声も大きい」
「あ、ごめん・・・」
マヤは大したことになっていなくて安心したのか段々ヒートアップしてきたみたいだ
「ごめん」と言いながらも声を小さくしただけで依然強く抱きしめられたまま離してくれない
抱きしめてくる力も強くなり、ほとんど鯖折りしているような状態だ
と言ってもマヤの力ではそこまで苦しくもなく
寧ろここ数年で豊満に育った胸を強く押し付けられるだけで
俺にとっては非常に嬉しい体勢だ
だがそれが良くない
「とにかく一旦離れてマヤ」
「嫌よ。ルシオは嫌なの?」
「嫌じゃないけど、ちょっと困る・・・」
「何が・・・んっ?」
マヤが自分に当たる硬いものに気付いたようだ
(俺は悪くない・・・しょうがないんだ・・・)
マヤはここ数年で幼さが抜けどんどん綺麗になっていっている
胸や腰回りも、出るとこは出て、引き締まるところは引き締まって
非常に女性らしい体つきになった
しかしそれだけならまだ我慢できる
小さな頃から手を繋いだりとマヤとのスキンシップはあった
二人の気持を確かめあってからはキスもしたし、ハグしたり腕を組んだりすることもあった
だから胸を押し付けられるくらいならなんとか平常心でいられる、なんとかだけど・・・
しかし今はまずい
ノワールとの死闘で何度も傷つき、時には殺され
生存本能が働いたんだろう
マヤと会ってから馬鹿みたいにムラムラしている
「・・・・」
「マヤ・・・ごめん」
暗がりでもマヤの顔が赤くなっていくのがわかる
テッドと約束したように
俺とマヤが結婚するのは、俺が学園を卒業してからだ
なのでそういう行為も卒業するまでは我慢すると自分の中で決めていた
マヤは顔を赤くしながらも全然力を緩めることはなかった
寧ろ少し力が強まったくらいだ
身長がほぼ同じなのでマヤの股間あたりにグリグリ当たっている
「なんで謝るの?これってアタシで興奮してくれてるってことよね?凄く嬉しい!」
「あ、そうなの?」
「だ、だってルシオったら全然そういう雰囲気にならないんだもの!何度もアピールしてたのに」
ボディタッチなどのスキンシップが増えたのはマヤなりのアピールだったのだろうか?
単純に両想いということがわかり今まで我慢していたことを我慢しなくなっただけだと思っていた
(あれ?じゃあ我慢しなくてもいい?・・・いやいや今まで我慢してきたのは何のためだ)
学園を卒業するまでにまだ一年以上ある
それなのにもしマヤが妊娠なんてしようものならテッドに顔向けできない
「我慢してたんだよ?・・・今の俺じゃまだ駄目だと思って・・・俺だってもっとマヤとイチャイチャいたいけどさ・・・」
そこまで言うとマヤが力を抜いた
そして俺の腰に回していた手を今度は首に回してきた
「アタシ達結婚するんだから我慢しなくていいと思うけど・・・でもルシオがアタシのこと大切にしてくれてるってのはわかるわ。ありがと」
「わかってくれたのにどうしてさっきより近いの?」
体は密着したままだが腕を回す位置を腰から首に変えたことでさっきよりも顔が近い
「えへへっ、だってアタシもう我慢できないもの。お腹がキュ~ってなっちゃった」
(あ、俺ももう無理・・・)
マヤの言ってることはただのセックスのお誘いだ
ただそれを本人はわかっているのかわかっていないのか
マヤは無邪気な笑顔で言ってくる
そのギャップが堪らなく興奮した
「きゃっ」
抱きついてくるマヤを持ち上げベッドまで運ぶ
「俺ももう我慢できない、本当にいいの?」
「うん、しよ?」
「だからなんでそんなに可愛いんだよ、もう!」
「え?え?」
多少声が出てもいいように部屋を土魔法で覆い壁を分厚くした
「でもなるべく声は我慢してね。バレたら寮を追い出されるかも」
「が、がんばる・・・」
マヤは両手を前でグッと握りながら言う
(あぁ~いちいち可愛い・・・)
「あ!いいこと思いついたわ。声が出ないようにルシオが塞いでて」
「・・・・わかった」
「ふふっ」
マヤの望むまま、唇を重ね
その夜は何度も求め合った




