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反省会

 鏡界の崩壊まで時間はまだ残っているとの事だったがこれ以上残る意味はないと早々に帰還するとモモが決めたので誰も反対意見を出さなかった。


 その時になってようやく戦闘修了が動かせないと諦めがついたミミは銀腕と巨腕を解除して自身の右腕に戻して手の開け閉めと曲げ伸ばしをすると息を吐く。


「大丈夫?」

「いえ、制御に気を張ってたのがなくなって気が緩んだだけです」

「そう? ならいいけど」


 目ざとくミミの変化を見つけたモモの確認にさらりと返したので問題がなさそうだと判断して全員に視線を向ける。


「最初に来た百貨店までとりあえず戻りましょう? 隊列は最初と同じでいい?」

「オッケーです」

「右に同じく」

「はい、分かりました」


 この場所で戻ると人目に付きすぎるのでモモがそう告げて確認をすると全員が了承を示したので隊列を組んでミミの先導で歩き始めたが、早々にモモが足を速めてミミの右腕を掴んだ。

 

「さっきはスルーしたけれど、右腕に違和感とかは本当に無いのよね?」

「心配無用ですよモモさん(姉さん)、あれがぶっつけ本番じゃなくて何度もコトリと一緒に調整してそういうリスクは潰してますから」

「だとしても、あまり感心はしないわよ――本来はローリスク・ハイリターンの『戦神の銀腕(アガートラム)』をミミはリスクもリターンも上乗せせざるをえないんだから私より繊細な運用を求められるのにあんな無理筋の改造をするなんて」


 そう話しながら歩いている間にモモはミミの腕について調べ終わったらしく掴んでいた腕を離すと安堵のため息をついた。


「とりあえずミミの腕に戻ったから良いものの、まだその右腕を完全に御せてはいないんだから――初めて使った時に暴走して痛い目を見たでしょ? そうなったら抑えられるのは私だけなのよ?」

「それは、確かにそうなんですけど……」


 そう言ってモモは窘めるがミミはあまり受け入れ難そうな反応なので今度は普通にため息をついた。


「私への対策で切り札の拡張は確かに有効だし伏せたかったのも分かるけど、やっぱり命を粗末に扱うのはいただけないわよ……こら、私は関係ありません、みたいな顔をしているコトリもよ?」

「う……」


 話題の矛先が自分にも向いてコトリはうめき声を漏らす。


「私への対策を考えるのは推奨するからどんどんやりなさい、ただしリスクを対応可能な範囲に収める事」

『――はい……』


 モモの指導にぐうの音も出ない2人は了承の言葉を返すしかなかった。


 そんな中で話についていけないレンは疑問だらけだった。リスクとリターンの上乗せだの暴走だのと強い意味を持つワードが何度も出てきた事もあるが、『その右腕を完全に御せてはいない』という言葉が一番疑問だった。


 会話の流れからミミの右腕が何か特殊な事情を抱えていると察する事は可能だったが突っ込んで聞いて良いのかは分からないのである。


 少し悶々としながらレンは後をついていくしかないのだった。


 そして程なく百貨店にたどり着き鏡界に突入した時と同じ踊り場につくとモモは1人だけ上の階に歩いていく。


「着替えてくるからちょっと待ってて――覗かない事」


 ついてこようとする妹達にそういうと上の階に消え……。


「痛っ!」


 そう言ってコトリが手をヒラヒラさせながら顔をしかめており、その直ぐ後に輝一の姿をしたモモが呆れた顔をして降りて来た。


「覗くな、って言っただろうに――これは空間操作魔法以上に悪用されるとシャレにならないから誰にも教える気はないよ」


 口調がモモのものから輝一のものへときっちり切り替えて忠告を聞かなかったコトリに改めて釘を刺す。


「覗いてません……ただ解析しようとしただけです」

「そういう屁理屈が()に通じるかっての――これ、魔法能力にかなりの制限が入るし事前準備も聖樹の槍(ミストルティン)並みに面倒で正直目くらましして(閃光弾放って)逃げた方が絶対楽だぞ」


 往生際の悪いコトリにそう引導を渡すと全員に変身解除を促して現実へと帰還した。


 そのままの足でレストランフロアの喫茶店に向かうと飲み物を適当に選んで窓際のボックス席に向かった。


「――うん、ここは何処からも映ってないし前後にも客がいないから大きな声を出さなければ気づかれないよ」


 輝一(モモ)は首を少し振って周囲を見渡してからテーブルを指で軽く叩くとそう断言して席に着いた。


「嘘つきですね、今結構面倒な探知をさらっと使いましたよね?」

「必要な道具は悠希と美森にも渡しているだろ? 2人だって変身せずに出来るだろうに俺が出来ないとでも?」


 悠希(コトリ)の指摘にもモモは制限有りでもこの位出来ると嘘つき呼ばわりをさらりと受け流し全員が席に着いた。


「さて、美森と華怜さんを姉妹として組ませるつもりだがどう感じた?」


 モモは早速本題に入り第三者として見ていた悠希に話を振る。


「いいんじゃないですかね、華怜さんは真面目そうだし年下でも先輩なら先輩だって態度に出てましたから美森との関係で変なことにならないんじゃないでしょうか? むしろ問題は美森の方かと思います」

「私の方?」


 悠希からの華怜の評価は結構好感触であったが逆に問題があると言われた美森はカフェオレのストローから口を離し疑問を投げかける。


「あまり言いたくはないけれど、美森と華怜さんはタイプが似ているけど技量に差が有りすぎる――美森は北関東のリーダーとして南東北にヘルプで行ったりするけど、その時周囲に居るのは基本1人前以上でしょ?」

「まあ、確かに」


 美森と華怜の間には大きな技量差が有る事も『悪戯』等のヘルプで遠征した時には最低1人前以上でないと招集がかからない事も事実であるために美森は短く頷く。


「私も下2人を預かってから分かったんだけど、入ったばかりの子に合わせるなんて真似は結構難しいのよ――実際、美森は華怜さんへの指示を出し損ねたでしょ?」

「それは……そう、だけど」


 失敗した事は事実であるので美森は強くは反論できない。


「今回はそもそも特殊だったのは分かる、いつもは後ろから見えてる私が指示だししているからその癖が出ても不思議では無いしね? ただ、気を付けて欲しいのよ」

「……何をよ?」


 このダメ出しは美森も思っていたしモモから指摘もあったのでぐうの音が出ずに不満を押し殺して問いかけると大事な事だからか一呼吸置いて悠希は口を開いた。


「――私の経験だけど今後、どうしてこんな事も出来ないのか、とか思っても絶対に欠片も表にだしたらダメ、すぐに相手に伝わって萎縮させるだけよ……私達だってあの人から絶対にそう思われてた筈なのにそんな事は少しも感じなかったでしょ? せめてそこは受け継いで後輩を育てましょう?」

「それは……うん、気を付ける」


 悠希にそう告げられて思い当る事があった為にそこに居る自分と同じく過去を思い返しているのか遠い目をしているあの人(モモ)の方を見てから気持ちを新たにして頷いた。


 そう言われて美森が思い返せばモモは今の自分と同じくらいの経験年数で今の自分より年下なのに自分を育ててくれたのだ、やってやれない事はない筈だという気持ちにもなった。


 一方、モモはというと『なんで私は苦労したのにこんなに易々と出来る様になるんだ……才能って不公平だ』と昔は思っていたが早々に諦めがついて受け入れたつもりなのでそんな事を思わなかっただけ、という姉妹間の喜劇的すれ違いに気づき遠い目をしていた。


 そんな事をモモが思っていると知ったら、悠希と美森は2人して『いいえ、全然易々となんかじゃなかったですけど!? むしろ今でも振り放されないよう必死にしがみついているだけだと思ってますけど!?』と狼狽する事になっただろう。


 実際、ゼロから試行錯誤の上に生み出さなければならなかったモモとモモの指導の下に後を追えばいい姉妹達では難易度の桁が違うレベルの差が有るだが当時のモモは余裕が無かったので気づいていなかったまま諦めがついた――そのせいで未だに認識が更新されていなかったりする。


 この姉妹間の麗しき友情劇が一転して喜劇へと紙一重でならずに済んでいるのはモモが遠い目をしているおかげであるとは誰にとって幸か不幸かは不明だが誰も気づいていなかった。

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