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『アガートラム』

大変遅くなってしまい申し訳ありません。

「――通して足止め継続!」

「――!」


 コトリは即座に指示を出したのでレンは抜かしてしまったゴーレム(アステリオス)へと意識を割きそうだったのを堪えて目の前の相手に集中する。


 レンからすれば実力は上とはいえ後衛型の年下の女の子を敵に接近させるというのは心苦しいものであった――そしてそう思うだろうなとコトリは読んでいたので指示が間に合ったのではあるが。


 実を言えば初対面で臨時のチームを組んだとしても1人前程度の後衛魔法少女ならばレンが足止めしている間にもう片方を落とす事は簡単ではあったのだが、多分勘違いをしているんだろうなと思いコトリはあえて支援を助言のみとしたのである。


 ミミが前もってレンの情報をモモに求めていた様にコトリもミミから協力する事前情報として同じ情報(魔法少女としての能力評価は前日までモモが判断中だったので初見)を横流しされて受け取っていた。


 その中にはレンの実家で伝えている武術についても載っていて魔法少女になる前にゴブリン相手に自衛をしていた事も載っていた――そんな一般的には強者の範疇だった彼女にはそれ故の見落としがあると。


 レンは『悪戯』でゴブリン相手に生き残ったがそれはゴブリンが魔法少女に比べてかなり弱く、また数を頼みに襲われる直前に一網打尽に行動不能に出来たという幸運があったに過ぎない。


 そして武術は銃の発展と長い平和により競技色が強くなり、多対1を想定した練習は行われなくなっている。故にコトリからみてもレンと実力差はさほどないはずのゴーレム(アステリオス)を相手に2対1といえど攻めあぐねて回避に徹しているのである。


 このようにレンのような実力者でも自分と同格以上の相手を多数同時に相手取る、といった経験は普通は積みようがないのである。


 しかし、魔法少女は違う。


 助走込みで殴りかかってくるゴーレム(アステリオス)の拳がコトリの生み出した障壁にぶつかり弾かれる。


 そもそも最初は魔法少女といえど一般人を軽く逸脱出来る程に強くなどないために基本は自分より強い相手と戦い続ける事になる――それが例え接近戦が苦手な魔法少女であっても乱戦に巻き込まれて生き抜けない様では1年を生き抜き1人前と呼ばれる存在にはなれないのである。


 ゴーレム(アステリオス)が拳を何度か打ち付けるがコトリの障壁は揺るがない――その膠着状態を崩したのはレンが相手をしていた槌持ちのゴーレムである。


 レンとの競り合い状態から突き飛ばして距離を空けると槌を片手に持って大きく振りかぶった――これを自身への攻撃の前兆とレンは判断して防御よりに思考が寄ってしまった。


 武器を持って対峙している相手が自身を優位にしている武器を手放すなど考えづらいのは確かだが、事前に武器を投擲するという行動を見せられていたのにレンはその可能性を見落としてしまったのである。


「――前!」


 しかし、そんな奇襲はコトリ(エース級)には通じない。ゴーレム(アステリオス)から槌が放たれたのとほぼ同時に指示を出し近接戦闘中でありながら振り向く(隙を生む)かもしれないレンをアシストすると障壁を張った。


 その直後に障壁と槌が衝突し障壁は破られずに槌が弾かれたが、その槌を空中で無手のゴーレム(アステリオス)が掴み叩きつけると今度の一撃はコトリの障壁を破り、槌を両手持ちに構えて右足を前にだした。


 そんな左から右に叩きますよ、という動作をされてはコトリも条件反射でゴーレム(アステリオス)の胸部と右肩に触れないすれすれの位置で障壁を張った。


 すると行動の起点を妨げられてゴーレム(アステリオス)は動きが止まってしまい、その隙をコトリは見逃せない。


 無防備に目の前にある頭に指を向けて炎弾を叩き込む、それで終わりである。


 そしてレンはというとコトリの指示が間に合い剣を無手となり大きな隙を晒したゴーレム(アステリオス)の首めがけて突き入れる。


 しかしゴーレム(アステリオス)の槌を投げた右腕が素早く動いてサーベルを下から押し上げてゴーレムの左頬辺りを滑り跳ね上げられる――しかし、ゴーレムにとっても余裕のない動作だったようで右腕は喉の高さ付近で静止できずに上へと流れる。


 レンはそのゴーレム(アステリオス)の防御行動は間に合うか否かを含めなければ読めていて間に合った場合に備えていた――間に合った、と判断したと同時に左足と右足を前に出して体勢を変える事で右腕を再度突きを放てる構えに整えて突きを放った。


 2度目の突きは距離を詰めるという工程が無い分ゴーレム(アステリオス)が右腕を再度守りに戻すより前に喉を貫き中身が空洞だったので貫通し――ゴーレムは動きを止めてレンへと倒れて来た。


 後ろに下がり回避しつつレンが振り向くと丁度コトリも倒した所で……。


「――前!!」

()()()は命取り」


 コトリの焦った表情と口調で警告が届き、同時に先ほどレンが倒したゴーレム(アステリオス)側から聞こえる筈の無い声が届いた。


 慌ててレンが前を向くと半身で腰を落として右腕を体の後ろに回したモモが居た。レンとモモとの間を隔てる様にコトリは障壁を張り、モモの明確な攻撃の構えにレンは慌ててサーベルを寝せて切っ先側に手を当てて防御の構えをとるも――少しの間待っていたモモの一撃は障壁を破り、レンの防御の最も堅い芯を打ち抜いてなおレンの状態をのけぞらせてたたらを踏ませる威力があった。


「――刃は立てる! 1人前以下が相手なら! 簡単に傷つく程、私は弱くない!」


 そうレンへの指導が行われる間にモモから拳打が放たれ、先の咄嗟の防御とは違い体勢も防御に適したものに整え、一発一発毎にコトリが障壁を張り直しているものの不利に働く筈の身長という体格差を覆した威力を持つモモの拳が防御ごと貫こうとし、4発目で覚悟を決めて刃を立てての防御へと切り替えたレンにモモは自身の言葉を証明するようにそして更に威力を込めた拳で防御の上から殴ってみせ――威力を逃すため仰け反ってたたらを踏むレンの目には振りぬいて静止した全く無傷に見えるモモの拳が見えていた。


 無論、モモといえど普通に殴れば拳はただではすまない――局所に魔力を集中、圧縮し体を保護する障壁のようにしているのである。


 実は魔法少女であれば――それこそレンでも――無意識に行っている魔力操作であるのだが無意識に行う程度では痛みに前もって備えて耐えるといった気休め程度でしかなく、意識的に訓練しなければこんな芸当は出来ない。


 また、訓練したとしてもあくまで魔力はエネルギーであって純粋な魔力だけでは質量を防ぐのは不得手であり、モモの様に刃物の上から殴って無傷といった域に達するには相応(ベテラン級)の魔力を制御して圧縮する必要があり――そんな事をするよりは普通に防具などの装備を魔法で強化してしまった方が効率的である。


 そんな苦労に対して割に合わない技術だが、熱や風といった非質量の事象に対しては相性が悪くはなく障壁などの使い切りの魔法と違って魔力を必要以上に消費する訳ではいというメリットも有るには有る。


 ただ、自身を起点に行う技術なので突破されれば深手を負うため最後のあがきとして使うべき、無いよりはあった方が良いといった程度の技法であり――この技術を頼りにするよりはやはり普通に障壁を張ったり身体強化を強めて回避した方が確実安全である。


 そしてモモを通してしまったミミはというと増援を含めたコトリ達を相手にしていた時より大分動きの良いゴーレム(アステリオス)達に取り囲まれて絶え間ない攻撃を受けていた。


 ミミに向かった12体の内の1体は破壊しているようだが、それでもミミへ攻撃するゴーレム(アステリオス)は5体、そして残りの6体の内に半分は包囲を強引に突破してレン達へ救援に行こうとしても阻めるよう布陣し、残りは攻撃中のゴーレムが撃破されても入れ替われるように散っていた。


「――ああもう! 『戦神の銀腕(アガートラム)』」


 上手い事足止めをされて未だに抜け出せないミミは苛立ちを隠さずに切り札を切る。


 ミミの右腕が銀色に輝くと西洋の籠手のような防具が右腕に装着され、光が収まると露出していた右腕の肌が銀色で金属質の光沢を持つものへと変わっていた。


「――邪魔だぁ!」


 ミミの叫びと共にレン達との間に居たゴーレム(アステリオス)達の足元が崩れたと思えば両脇の道路の舗装が虎ばさみのようにめくれ上がって挟み込んで拘束したのである。


 包囲が崩れた穴をミミは突破すると身体強化を限界まで上げて背後からモモへと殴りかかるが、大規模な魔法を使っておいてモモに気づかれない筈がなくモモはミミの方へと振り向いて手のひらを向けた。


「――切るのが遅い!」


 モモの障壁がミミの銀の拳を防いだもののあっという間にひび割れたため壊れる前に飛び退き、障壁を壊したミミがすぐさま進路を変えて後を追う。

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