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プロローグ-5-

 やってきて入り口の前に横づけした警察車両から降りてきた警察官達は全員ヘルメットに防弾チョッキをして透明な盾まで用意して機敏に動いている……近くで凶悪事件でも起こっていてそれと場所を間違えたのではないかという物々しさに巴と華怜はポカンとしてしまうが、髪の色をいつの間にか桃色に戻していたモモが入り口前で手を振ると彼らは彼女の前に集合する。


 モモは警察官達に求められるまま手早く相手の人数と状況、そして華怜達は気づいていなかったが実は2カ所あった階段の位置を伝えると彼らは短く作戦を確認して2班に分かれると突入していった。


 そして盾が無い以外は先ほどの警察官達と同じ装備をしている体格のいい男性警察官と細身の女性警察官が折り畳み椅子を持って3人の傍へやってきて3人を建物の一室に誘導して調書を取り始めた。


 3人が調書を取られている最中、青年達が抵抗して叫んでいるのか声が少女達の耳にも届いて華怜が不安がる仕草を見せたため、モモがその場を離れて少しすると声が途絶えた。


「もう大丈夫、全員連れていかれた」


 戻ってきたモモが手をパンパンと叩きながらそう告げると、苦笑いした男性警官がモモに近づき耳打ちするとモモは肩を竦めて華怜と巴の方をみた。


「そんな事言われたってよくわかんないよ、多分あの人達は悪夢でもみたんじゃない?」


 悪戯っぽく笑ってモモが答えると警察官達は首を傾げるが、何を言っているか理解できる巴と華怜は早速効果が表れていると2人で顔を見合わせて笑ってしまった。


 調書を取り終えて男性警察官は鑑識と一緒に帰るとの事で3人と女性警察官は覆面パトカーへと向かった。


 モモが華怜を運転席の後ろに巴が助手席の後ろに座って毛布をかぶるように指示をすると自分は堂々と助手席に座る。流石に目立つからモモにも後ろに座って欲しいと女性警察官にお願いされるが、モモは服を一瞬で警察官の制服に変えて髪も黒く変えてみせると少し自慢げである。


 モモには譲る気がないと理解した女性警察官は諦めてエンジンをかけて車を発進させた。


 まだ現場で鑑識が仕事中のために警察官が立って現場を立ち入り禁止にしている為かまだ野次馬はそれなりに居た。ただ、マスコミの様に車の前に飛び出して移動を妨げてまで撮影したりしようとはしなかったのでそれほど苦も無く3人を乗せた車はその場を後にした。


 巴と華怜は全寮制の学生寮住まいと調書で分かっていたのでその最短経路をとるために高速道路を目指して進んでいく。


 女性警察官はおしゃべり好きの人だったのか3人と女子トークや学生時代の出来事や職場の人間関係等を面白おかしく話して会話の輪を広げていった。


「もう少し先か、そろそろ時間なのね……」


 高速のETCを通過して高速道路に合流した後にモモがポツリと窓の外を眺めながら呟いたその瞬間までは。


 その一言は不思議と全員の耳に入り、女性警察官は横目でモモの様子を確認し後部座席の2人は訝し気な表情でモモをみる。


 モモはゆっくりと助手席の背もたれを後ろに倒してゆき、背もたれが巴の膝に当たる少し前に止めると少し傾斜のついた背もたれを這って巴へと近づいていく。


「お疲れさま、もう帰るだけだからゆっくり休んで?」


 近づいてくるモモに巴が驚いて視線がを交わるとモモがそう口にした。


「あ、れ……?」

「……まさかこんな軽いので落ちるなんて、よっぽど気を張っていたのね」


 すると巴の肩から力が抜けて、唐突な変化に巴は戸惑いのまま口が動くが強烈な睡魔が巴の意識を連れ去ってしまう。


 モモも予想以上に効いてしまった事に驚いてしまうが、優し気に微笑んで背もたれを起こそうとする。


「待ってください、モモさん! 巴姉に一体何を!」

「疲れていたからリラックスさせてあげようと思っただけ、効きすぎて眠っちゃったけど。あなたを守ろうと年上の意地で頑張っていたみたい――いいお姉さんね」


 焦ったような華怜の問いにモモはそう答えると背もたれを上げ、視線を外に向けた。


「もう少ししたら止めてもらえます?」

「え? いや、ここは高速ですよ?」

「知ってます、でも緊急時の連絡用に電話置いてあるところが定期的にあって車を止められるでしょ? 次の電話の所辺りでお願いします」

「いや、流石にサービスエリアで止まりませんか? 入ったばかりですから十数キロ位先になりますけどありますよ?」

「言う通りにしてくれないなら窓から勝手に途中下車しますね」


 無茶言うなとばかりに女性警察官はやんわりと拒否するが、モモが強硬手段を口にしたので諦めて左側に車線変更して少し先にあった電話の設置された空間に車を止める。


「ありがとうございます――2人には後で教えるって約束したのに1人を寝落ちさせてゴメンね? あなたには教えるよ」


 モモは女性警察官に無茶を聞いてくれた事を感謝してシートベルトを外しながら華怜に話しかけた……別れの気配と少し嫌な予感が混じる中、華怜はモモに視線を向ける。


「あなたにかけた3つ目の2人にかけた魔法は記憶の封印、眠った時に記憶にカギをかけて今回の事を思い出せなくなってもらうもの――ゴメンね」

「うそ、ですよね……?」

「本当はあなたもお姉さんのように今眠ってもらいたいけど、今のあなたには干渉すると負担があるかもだから自分で眠ってもらいたいの」


 モモは自分に視線が向いている事を気づきながら振り返らずに約束を果たすべく口を開き、モモの縋るような問いに淡々と答えた。


「い、嫌――嫌です! 巴姉! 起きて……!」

「無駄よ、心が欲した眠りに働きかけたから心がある程度休まるまでそう簡単には起きない――私達は会わなかった、それがお互いのためよ」


 モモの言葉に華怜は叫んで巴を起こそうと体を揺するが、モモはその無意味な行為を止めさせるため淡々と感情を見せない声で自分の判断を伝える。


「なんでですか! 忘れたくなんてない、モモさんも! あの男の子も……! お願いですモモさん! 私達から大事な思い出を奪わないで!」

「……彼女達は事件を通報して、緊張と恐怖で不安定になっているから送ったとしてください」


 華怜はモモに詰め寄ろうとするが勢いが強すぎてシートベルトに固定されてしまい涙ながらに訴えるが、モモは取り合わず女性警察官にそう伝えて助手席のドアを開けた。


「モモさん……!」

「不思議な夢でも見たと思って忘れちゃいなよ、平和が一番なんだからさ……2度と会わないで済むよう祈ってる――さよなら、2人とも」


 モモが外に出てドアを閉める前にモモは華怜の声に少しだけ無理をして笑顔と明るい声を作って答えるとドアを勢いよく閉めた。


 車内では華怜がまだモモに伝えようと声を出し続けていたが、モモは高速道路の防音壁を軽く飛び越えてその場を後にした。


 その後車内では高速道路に戻ってしばらく走り、学園に最も近いインターチェンジ直前で巴が目を覚ますまで会話が無かった。


 巴は覆面パトカーに乗っている事に気づくと流石に驚くが、女性警察官にモモが口にした設定を教えられて華怜も否定しなかったので何故か泣いている華怜を相手にする方が巴にとって優先順位が高いのでそれ以上気にする事は無かった。


 学園の入り口から車を乗り入れて女性警察官は先生に事情の説明をしておくからもう帰っていいと告げられて2人は帰路についた。


「ねえ、巴姉……最後にモモさんに会えたのはいつ?」

「ん? 何度も話したじゃないか、3年前のデモニア災害で助けられたのが最初で最後だぞ? ――おいおい、いったいどうしたんだ?」


 その帰り道に華怜はポツリと問いかけると、意図が分からなかった巴は()()()()()()()()に答え、華怜が急に抱き着いてきた事に困惑した。


 初等部の寮の入り口で華怜は巴と別れると、誰にも会うことなく廊下を進んで自室に到着した。モモの魔法が巴の記憶を封印した以上、自分も遠からず記憶が封じられる事を華怜は否定できなかった。


 華怜が自室の勉強机に友達への誕生日プレゼントを置くと軽く眠気を感じて欠伸がこぼれ、華怜はゾッとした。


 時刻はまだ6時になってもいない――華怜はモモにかけられた2つ目の魔法が効果を発揮しだしたと直感したのである。しかし、巴のようにあっという間に眠りに落ちる事はなく、長くは無いが猶予はあると感じて何かできないかと考え――机の引き出しから一冊の日記帳を取り出す。


 眠気が強くなってきたのを感じながら椅子に座ってペン立てからペンを取ると今日のページに猛然と書き始めた。華怜は必死に書き続けたがしばらくするとペンを握ったまま机に突っ伏して眠ってしまう。


 1ページ目は小さい綺麗な文字でびっしり埋まった。

 2ページ目の中ほどから字が少しずつ歪み始めたが全部埋まった。

 3ページ目は次の日の分だったが気にせず、眠気が文字を大分崩しており誤字脱字も多くて読み返すのは困難なものだったが何とか書き終えた。

 4ページ目はノートの罫線にそって書く事すら出来ず、斜めにひらがなで『わすれない』『きっと』とギリギリ読み解ける崩れ具合の文字のみが書かれていた。


 それが、華怜が魔法少女モモに抗って残そうとした全記録となった。

次回、現代まで時間が進みます。

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