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華怜の違和感-3-

更新が遅くなり申し訳ありません。

 それからしばらくは2人に会話がなくペンがたてる音のみ部屋に響き、清書が終わったのか少し大きめの音をたててペンを置いた。


「あんまりじろじろとみないで……字が下手なのは自覚があるから」

「えっと、そこまで卑下する程ではないかと……」


 書き上げた診断書を華怜に渡すとモモは少し恥ずかしげだった。

 その言葉に華怜はつい文字を目で確認してしまうが、確かに綺麗ではないが別に汚いわけでもない普通の字である……モモの周りに綺麗な字の人が多く、相対的に下手だと思っているだけかもしれない。


 ……ただ、綺麗な字を書くように躾られるこの学園の要求水準だと『頑張りましょう』ではあるので華怜は話題を変える事にした。


「私が他の魔法少女と成り立ちが違うというのがよくわからないのですけど……」

「ああ、その事? 単純に魔法少女になる前に魔力を使った経験があるか無いかの違いよ」

「それだけ、ですか……?」


 もう少し突飛な内容かと思って訊ねた華怜は拍子抜けした。


「そう、たったそれだけなのにここまで影響があるとは思ってもみなかったけど」

「そうなんですか?」


 しかし、モモとしてはその僅かな差が起こした予想外の影響に若干の興味深さを隠しきれていなかった。


「レンちゃんは比較対象が私しかいないからわからないだろうけど、魔力量だけなら1年目で比肩する子は見たことがない……2年目でも上位は無理だけど平均には余裕で届くわね」

「そんなに、ですか……でもどうしてなんでしょう?」


 モモの評価から華怜は自分が思った以上に異常だった事に驚き、戸惑いのまま問いかけた。


「そもそもだけど私達人間には質、量を問わなければ魔力を生成する機能は備わっているのーー普通は眠っているだけで」

「そんな機能が本当に……?」


 モモはその問いに興がのってきたのか知識を開陳する。


「魔力は殆どの場合、契約してから使えるようになるから魔法少女でもまず気づかない事なんだけど、そもそも人間の体には飢餓状態では脂肪を使ったり、野菜が取れない環境では生肉を食べて血液からビタミンを摂取したりとか環境次第では使われない機能は結構あるーーその中に魔力を生成する機能もあるってだけよ」


 実例をあげてモモにそこまで言われたら華怜は否定は出来る根拠がない。


「ちなみにレンちゃんと初めて会った時、素質持ちの子だけどあの当時魔法少女になったら魔力の量は中の下から中の中程度だと思ったわ」

「そういう事って簡単にわかるもの何ですか?」


 現在とは全然違うモモの評価に華怜は話の途切れたタイミングで問を挟む。


「注意して視れば何となく、手で直接触って確認出来れば大体は……ただ、他の子に説明してもよくわからないって言われる直感めいた何かだからそういうものって思って」


 どうやらモモは謎の観察眼を持っているらしい……と華怜は思ったが、よく思い返すとモモは素質持ちの子達にはリボンを与えているという内容を口にしていたので当然の技能だった。


「それで、あの時本来は眠っているべき機能を目覚めさせちゃった訳だから意図的には使えないよう記憶を封じて魔力の生成と貯蓄を阻害するリボンを渡していたのに……むしろそのせいで成長期も手伝って魔力の生成機能を拡張していったのかも」

「記憶を封じられていたのに勝手に拡張なんてされるものなのでしょうか?」


 その華怜のもっともな問いにモモは肩をすくめた。


「私が干渉出来るのは俗に言うエピソード記憶の呼び起こす事への妨害であって、流石に生理的機能を弄ったら後々どんな影響に波及するか分からないから怖くて考えた事もないわ……そして魔力を生成する機能は使い道はないけど起きてしまったから4年もの時間で強化されていったんじゃない?」

「……その説の通りなら、制御能力も一緒に強化してくれていたら過剰適応なんてならなかったのかもしれないのですが……」


 モモの推測に華怜はため息を吐くとモモはその内容に少し思う所があったが飲み込んだ。


「……制御能力は鍛えれば何とでもなるのだし、非才の身からしたら贅沢な悩みだからぼやく相手には気をつけなさい」

「モモさん?」


 しかし、モモの空気が僅かに変化した事を華怜は感じとれたのでモモの名を呼んだ。

 モモは少し深く呼吸をして気を落ち着かせると華怜の呼び掛けに応えずに窓まで歩き窓を開けて振り返った。


「行き先は学園側に伝えても良いけど、書類とかには残さない様にお願いしなさい。先方は昔私が助けた事を恩に感じてカウンセリングを学んで手伝ってくれている善意の協力者で、デモニアに襲われた被害者達が何人も通っているから出来るだけ私関係で注目を集める事は避けたいの」


 モモの言葉は業務連絡に近く、一方的に告げて返事を待たずに窓から飛び降りて去っていった。


 翌日、華怜はモモの診断書を持って始業前に職員室の扉の前に立っていた。


 華怜としてはモモの診断書が有ったとしても外泊の許可を学園側が出すとは到底思えず、どう許可をもぎ取ろうかと悩みながらノックをして入室した。


 職員室を見渡して担任の教師が席にいる事を確認して席へと向かった。


「あら、華怜さんおはようございます、何か御用ですか」


 穏やかな性格が滲み出ている笑みで初老の女教師は華怜に問いかけた。


「おはようございます、先生……あの、単刀直入に申し上げますと外泊許可を頂きたいのですが」


 華怜は挨拶を返すと小声で望みを伝えて開かないと文章が読めない様に折り畳んだ診断書を手渡した。


「華怜さん、この学園だと許可はそう簡単に……そうねえ、ちょっと場所を変えて話をしましょうか」


 学園の生徒は世間知らずな箱入り娘も多く、特にお預かりしている寮生の私的な外泊許可はまず下りないと等回しに伝えようとした担任教師は手渡された診断書の文面に軽く目を通すと職員室内にある少し隔離された机と椅子が4脚ある面談スペースへ移動するよう華怜にお願いした。


 担任教師は華怜に椅子に着くよう進めて自分は向かい合う椅子に座ると今度はじっくりと診断書を読んでから顔を上げ、診断書を華怜が読みやすいよう向きを変えて机に置いた。


「華怜さん、貴女はこれの中身を確認しましたか?」

「はい、なのでお願いに来ました」


 担任教師が華怜の目を見て問いかけてきたので華怜は目を逸らさず返答し、担任教師は体を前に伸ばしてとある一点を指差した。


「では、ここに書かれている事は事実?」

「はい、彼女は昨日私の部屋に現れて私の目の前でそれを書き上げていきました」


 担任教師が指差した先は記述者の名前ーーそこに魔法少女モモの名がある事だった。


 その答えに担任教師は難しい顔をしながら天井を仰ぐ。


「……信じられませんか」

「いいえ、華怜さんがこんな嘘を吐く人ではない事は分かっているつもりです」


 突飛すぎて信じられないだろうな、と華怜は思いながら問いかけると担任教師は顔を華怜に向けると首を横に振りながら華怜の予想を否定した。


「華怜さん、こんな当たり前の事にも気づかずに放置してしまってごめんなさいね」


 そして担任教師は自身のいたらなさを華怜に謝罪したのである。


 華怜が提出した診断書はモモが今まで見てきた被害者達の経過をまとめ、もしも華怜がケアを受けていない場合の推測と念を押されているがひどく現実味のある内容であるーーそして担任教師は完全に信じてその内容を気に病んでしまい、華怜は良心の呵責に苛まれたが許可が取り消されるのは避けたいので口を閉ざした。


 そして担任教師は華怜に一言断ってから席をたつと申請書とペンを持って戻ってきた。


「本当はこれ以外にも華怜さんに色々な書類を書いてもらわないといけませんが、状況が状況なので私が関係者に根回しして特例を認めさせます」

「えっと、お手数をおかけします……」


 華怜は恐縮しながら申請書とペンを受け取り記入欄を埋めていき……とある欄で止まる。


「あの、外泊先は可能な限り伏せて欲しいとお願いされていたのですが……」

「……申請書には実家でも良いけれど、流石に場所を教えてもらえないと何かあったときに学園が対応出来ないわ」


 華怜がモモの意向を伝えると申請書に虚偽記載をすることは認めて貰えたが流石に外泊先の完全黙秘は認めてもらえなかったーーただし記録には残さないなら伝えて良い、とモモは許可を出していたので華怜はモモに渡されたメモを担任教師に手渡す。


「加賀、ボクシングジム……?」


 メモに書かれた名前と今回の件に全く関係性が結び付かなかったためか担任教師は首を傾げていた。


「そこの施設の代表はモモさんが過去に助けた人で恩返しの為に協力者になってくれているらしいです。ただ、この話が広がったらモモさんと先方、そして私と同じ被害者の人達に迷惑がかかる、と口止めをお願いされていたんです」


 華怜はそう答えて釘を刺すと、後の処理はやってもらえるとの事だったので華怜はお任せして職員室を退室した。

本当は今回の更新で華怜はミミと会える予定だったのですが……。

次回こそ、華怜はミミに会います。

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