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華怜の違和感-2-

更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

生活環境が変わって執筆時間が取れなかったのです。

 華怜がコクリと頷くのを確認してから更に先に進める。


「変身してない状態で自転車に乗ろうとしてもギアが一番重い状態だから自転車は使えないのが普通、だけど過剰適応中だと乗った場所が下り坂になっていて自転車は通常より走りやすい状態だから乗れてしまう事がある――魔力の制御能力が高ければブレーキを握って止めることが出来るんだけど、それも出来ずっていう状況が魔力の過剰適応についてのざっくりとした説明かな」

「ええっと……ちなみに車を運転出来ていたらどう説明するつもりだったんですか」


 モモが苦心して説明するものの、華怜は必死に理解しようとしているがモモも何か説明が上手くいっていないと感じているので華怜の求めに応じて別の例えをする事にした。


「ガソリンを魔力に例えてエンジンがかかっている状態のAT車でアクセルを踏まなくても走るクリープ現象とかマニュアル車でクラッチを半クラッチにせず直接Lowギアに繋げるとエンストするとか絡めて……ちょっと何を言っているのか分かりませんって顔しなくても、事前知識なしで分かれって方が無理なのは分かるから大丈夫よ」


 本質的には外部動力で動く車の方が近いんだけど、とモモは呟きながら前より分からないという表情を隠せていない華怜にこれ以上の良い説明が思いつかず説明を打ち切る――そもそも今は対策の方が重要なのである。


 そのため華怜に与えていたリボンの機能を拡張しようと思いモモは華怜のリボンを確認するとそこには悪戯の時に急場しのぎで与えたリボンしか無く、部屋の中を調べ直したがやはり無い。


「……あの時急いでいたから任せたけど、あの子からレンちゃんのリボンを回収しなかったのね? それは今のレンちゃんには過剰装備だから返して頂戴」

「あ、はい、その、あの子はリボンの事を少し覚えていたみたいで返してとは言えなくて……」


 モモが若干目を細めながら返却を要求したので華怜は少し狼狽え気味に弁明した。


 華怜の様子が申し訳なさでいっぱいだったのでモモはリスクのある代物でもないからいいか、とそれ以上は問わずにポケットにリボンを突っ込むと空間操作魔法で生み出した空間に手を突っ込んで何かを探すように手を動かし――何かが相当詰まっている巾着袋を取り出して中身をのぞき込む。


「これで十分かな――えっと、これとこれとこれ、いやこっちと……」


 中身を確認すると今度は中を見ずに手を突っ込んで感覚のみで巾着袋の中の物を選別し終えてから手を引き抜き、手首のスナップを効かせて手を振り下ろすとその軌跡にそって黒地に白い縁取りがなされている2人にとって見慣れたリボンが現れた。


「対症療法的な処置だけど、これで日常生活に支障は無くなるはずだから寝るとき以外はなるべく身につけなさい」

「あ、ありがとうございます――ちなみに、その中身って何か教えていただいても?」


 モモが差し出したリボンを華怜は受け取るとモモは巾着袋を仕舞おうとしたので華怜は咄嗟にその中身について訊ねていた。


「ん? ただの魔石だよ?」


 華怜は特に隠すことでも無いので華怜に巾着袋の口を広げて中を見せた。


 更にモモは手に取って見たら? とばかりに袋を近づけたので華怜はおずおずと袋の中に手を入れて1つ取り出してみる。


 華怜が悪戯で戦利品としてもらった魔石はガラスを砕いた破片のように尖っていたのだが、それはビー玉のように球形で薄く青みがかった透明な色をしていた。


「これも魔石、なんですか……」

「どちらかといえばこれ()一般的には魔石で、前に渡したのは欠片って感じかな? 使い方は一緒だけど、効果が段違いだから欠片サイズ1つで過剰適応を起こしている間は絶対に使ったらだめよ」


 魔石越しに照明を見上げながら華怜は呟くとモモは一応釘を刺し、華怜は危険物を扱うかのように慎重に魔石を巾着袋の中に戻した。


 今度こそモモは巾着袋を空間操作魔法で仕舞うと今度は手のひらサイズのメモ用紙とペンを引っ張り出して書き込むと千切って華怜に渡した。


「とりあえず話は明日にでもつけるからゴールデンウィーク中はそこに行って合宿しなさい」


 そのメモには合宿先の名前と電話番号、そして最寄り駅からの最短経路が書かれていた。


「え、でも私、部活とかあるんですけど……」


 しかし、華怜は運動部である以上部活の練習の予定がある。


「いや、その状態で練習して意味あるの? 相手を怪我させるだけだと思うけど?」


 今の華怜は全力を出せば怪我をさせかねず手を抜けば練習の意味が無いだろう、そうモモに指摘されて華怜は言葉に詰まる。


「……まあ、色々言われるんだろうから私も少し手を貸してあげる――とりあえず、文句言う人が黙らざるを得ない根拠を用意してあげれば良いんでしょ?」


 簡単簡単、と言いながらモモはコピー用紙を袋ごと取り出して2枚抜き出すと華怜の机を借りて文面は書き慣れているかの様に迷い無くすらすら書き始める。


 あっという間にモモは1枚書き終えると、次の1枚は丁寧な字を心がけてゆっくりと清書していく。


「うわぁ……」

「とりあえずそれに書いてある通りに口裏は合わせなさい、無理ならいきなり私が現れて押しつけていったって事にしてもいいから」


 診断書、と書かれたモモの下書きを華怜が読んでいくとその内容に思わず声が漏れた。


「組織人は事なかれ主義で責任なんか負いたくないからここまで書かれたら首を縦に振る筈よ」


 内容を要約するとデモニアに襲われた事がトラウマになり華怜が精神疾患に陥っている事にされていた。

 そしてモモがアフターケアで手厚いフォローをしていた為本人に自覚はない事、しかし改善の兆しが見られずやむなく別の専門家によるアプローチを行うため華怜へゴールデンウィーク期間の外泊許可を求めるという内容と、認められない場合はモモ側のケアは中止する事とその後の全責任を却下した者が負う事を書面で残して華怜とモモに一通ずつ発行する事を求めていた。


「見てきたかの様に随分リアルですね……」

「実際、20人を超えてから数えるのをやめたけど私はそんな人たちを見てきたからね。結構な人数の所属宛てへの診断書を書いて持たせてあげたし――医者じゃ無いから法的証拠能力こそ無いけど、私の名前が売れているお陰か提出先に無視された事はないよ」


 清書の手を休めず、顔を上げる事なく世間話の体でされる重い内容に華怜は少し引き気味だったが意を決して口を開く。


「モモさん、ちょいちょい重い話をいきなりするのは止めた方が良いですよ?」

「え? この程度はよくある話じゃない、レンちゃんこそいきなり何を言い出すのよ?」


 華怜の意見にモモは手を止めて華怜の顔を見ると『太陽が沈んだらまた上るのか?』というレベルの質問をされたかのようにきょとんと問い返した。


 はぐらかそうとした訳でもなくただ純粋にこの程度の話を重いとも認識していないというモモの反応につい最近まで一般人だった華怜はあまりに過酷なモモの日常を思って言葉を失い……その表情から何を読み取ったのかモモは口を開いた。


「ごめん、ちょっと誇張があったかも――多分、見ず知らずの人間にそこまで心を砕く必要があるかって意味よね? ここまでケアしているのは私くらいなもので、他の地方ではわざわざ戦闘に役立たない事に魔力を使っていられないからって助けた後は自分で何とかしてっていうのが一般的……だから無理して私の路線を継ごうとか考えなくて良いよ? それで死んだら本末転倒だしね」


 モモはそう言って華怜を気遣ったが『違います、そういう意味ではありません』と華怜はとてもではないが言えず、場の空気を壊さない様にとりあえず首を縦に振った。

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