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28話

 その後モモはガラハドへ視線で促すと先に移動している2人に追いつく為に少し速く移動し、入れ替わりでベディヴィアがモモの手放してしまった武器を回収して戻ってきた。


 モモは拳銃を受け取ると弾倉を換えてレンがらせん状の通路に消えて見えなくなるまで待つと拘束した細身のゴブリンの口を叫べない様に拘束を追加して両肘、両膝を撃ち抜いた。


「私の経験上、他より進化した上位個体が私たちの言葉を理解しないほど知性が低いとは思えないから一応言っとく。私の妹をよくも殺しかけてくれたね? お前に利用価値がある間は決して楽になんてしてやらないから楽になりたいなら全力で私の役に立て」


 モモが撃った4発の銃声はレンの耳に届いたのでレンは気にはなったが、モモの感情が振り切れて逆に感情を一切感じさせない声で放たれたヤクザも真っ青な内容の脅しはレンの耳に届かなかったのでレンはガラハドに運ばれるまま大人しく移動していた。


「あの方が心配ですか?」


 唐突に放たれたガラハドの問いにレンはバイザー越しにガラハドと目が合った。


「我々ラウンズは全員あの方から貴女方で例えれば1人前の武器持ち近接型に勝るとも劣らないと評価を受けております。そしてあの方が消耗を癒した状態で前衛を得て戦うのですから普段よりある意味安全かと」


「……普段ってもっと危険なんですか?」


 ガラハドの急な問いかけに驚き瞬時に返せなかったレンの反応を図星だったからと判断したガラハドは自分たちのスペックを明かしてレンの不安解消を試みるが、普段はどうやっているのか想像もつかない高度な魔法で召喚した彼らラウンズを呼び寄せても更に危険と受け取って明かされて逆効果だった。


「我々ラウンズは性能と魔力の消費が釣り合っていない非効率極まりない代物だ。我々を喚ぶ位なら主の他の魔法を使った方がより省力的かつ効率的に敵を滅せるだろう」


 レンの疑問に誤解があると感じたアグラウェインがレン達の前を歩きながら振り返らず答えを口にした。アグラウェインのお節介に珍しいこともあるもんだとばかりに隣を歩いていたケイが肘で彼の脇腹を突いたがそれは完全に無視した。


「えっと、その、お名前やラウンズという言葉からもしやと思っていたのですが、貴方達はアーサー王の……?」

「よく知ってるな嬢ちゃん。だが残念ながら俺達はその伝承を下地にした大将の魔法で作られた『大将が持つ円卓の騎士のイメージ』にそれぞれ役割を与えられた架空の存在だ。もしも本人達と話せるなら互いに全く別人としか思えないだろうよ」


 アグラウェインが自らを非効率的と評した事で少し居心地の悪さを感じたレンは話題を逸らすと今度は前を歩いていたケイが首を横に向けてあっけらかんと自分達は偽物だと口にした。


「それとアグラウェインはああ言ったが俺達の人と遜色ない判断能力があるという点にコストを度外視してもいいと大将が判断していなければ使われていないだろうさ。そもそも俺達は――」

「ケイ!」

「応よ!」


 アグラウェインが自分達を否定的に評価をしたのでケイは肯定的に評価してバランスを取ろうと言葉を続けていたが、戦闘の気配を察知したアグラウェインがケイに合図しながら足を速めるとケイは会話の途中でもすぐさま切り上げて後に続いた。


「急いで下さい!」

「何故ですか?」

「この先で何かがあったんですよね!? この先にはあの子が居る筈なんです!」


 急に速度を上げた2人に不穏な気配を察したレンはガラハドに自分の危惧を伝えて急いでもらうよう頼んだ。


「しかし、あなたが行っても……」

「立っているだけなら何とかしてみせます! そうすればガラハドさんは動けます! お願いです、あの子を助けて下さい!」


 護衛の立場から難色を示すガラハドにレンが必死に懇願するとガラハドが折れて速度を上げた。


「私に下された命令は貴女を護衛する事なのでもしもの時は主命を優先します。その事はご理解下さい」


 レンは感謝の言葉を口にしてしばらくすると2人はその場にたどり着いた。


 ゴブリンの群れの中に壁を背にして1人の騎士が戦っていたが、もう1人は見当たらない。


 ある程度距離を置いて目の前の群れからすぐに襲われる事のない位置にレンを下ろし、自分で立っていられる事を確認するとガラハドは走りだした。


 その足音に包囲の外側にいたゴブリンは気づいて迎撃の為に構えるが彼我の力量に圧倒的差がありガラハドは真っ向から蹴散らして群れに突っ込んだ。


「アグラウェインは何処へ!」

「奥だ! 俺達が襲いかかったら何体か逃げやがって追撃に行った! 護りながらでは殆ど減らせなかったから削ってくれ!」


 情報の共有をする間にもガラハドは剣を振るいゴブリンの命を刈り取っていると敵は浮き足立ち奥へと逃げ始めた。


 ゴブリン達からすれば固い守りに護られた人間を攻撃していたと思ったらいきなり騎士が2人現れて襲いかかってきたのである。片方は慌てて逃げた臆病者を追って去ったが進路に立ちふさがるゴブリンはきっちり殺していき、もう1人は真っ直ぐ人間の元へゴブリンを殺しながらたどりついたと思えばそこで動かなくなった。


 厄介な人間の守りを破れなかった鬱憤と仲間を殺された復讐をわざわざ包囲されにきた間抜けな騎士に叩きつけてやろうと息巻くとさらにもう1人騎士が追加されたのである。


 それも仲間達が大勢いる筈の方向から、という事実にもしかしたら仲間達はもう殺された後かもしれないと不安になったゴブリン達は仲間がやってきて挟み撃ちにしてやる、なんて考えるよりも逃げた賢明な奴らに倣って逃げた方がいいと行動に移したのである。


 そのゴブリン達を2人の騎士は追撃しなかった。


 ケイは一般人の護衛が役割であり、ガラハドはレンがわがままを言っただけで彼女の護衛をこれ以上逸脱するつもりはない。そもそも、ゴブリンが逃げた先には2人と違い敵の逃走防止を命じられた行動に枷のない騎士が待ち構えているのだ。


 2人の騎士からしたらコイントスでコインが立つ事に命を1点賭けしたに等しい敵の末路など考えるまでもない。


 レンは決着がついた事を確認すると壁に手をつきながら歩き始め、ガラハドが駆け寄って抱き上げようとしたが体の機能回復を確認するためと何とか固辞して歩みを進め、ゴブリンの群れがいた辺りを過ぎる頃には足場の悪さにふらつき気味だが壁に手をつかず歩ける程度にはなっていた。


 ガラハドからしてみれば折角敵を排除したのに転んで怪我でもされたら護衛失格だとハラハラしながらレンの側に付き添い、ゴブリンの群れから少し奥に行った所で2人の騎士と片方の騎士の片手を握った少女と合流した。


「制圧は完了した。付近一帯は我らの勢力圏と言えるだろう」


 遅れてきたガラハドとレンに向けてアグラウェインはそう告げると踵を返して奥へと歩いて行く。


 ケイは手を繋いだ少女に声をかけると後に続き、その後ろをレンとガラハドも続く。先頭を歩くアグラウェインは何も言わなかったがレンと少女の歩みに合わせて歩調は緩やかで到着までまだ時間があると判断したケイが口を開いた。


「しっかしあの数の敵を無力化してたんだな嬢ちゃん。今からそれなら随分と将来有望じゃないか?」

「い、いえ、ぶっつけ本番で何よりモモさんのリボンがなければ自滅していました」


 ケイの賞賛にレンはモモに既に叱られた事もあり評価はかなり低かった。


 レンが悪戯に突入直後、意識なく奥に引きずられるように攫われる少女を見つけて何とか奪還に成功したものの群れに囲まれて壁沿いに追い詰められて絶体絶命であった。


 ゴブリンに一斉に襲いかかられた時に咄嗟にレンは少女を胸元に抱き寄せて少女の耳を塞ぎ、背中で庇うと同時に一か八かで唯一活路のある習得を目指していた魔法を発動したのだ。


 その魔法は音を出すだけという音を使う魔法の基礎の基礎、という魔法だった。


 その説明だけでは地味すぎる魔法だが、裏技的用法として魔力を込めれば込めるほど音量が増して音響手榴弾じみた制圧性能を発揮する事が可能な上、術式が簡素で展開が早いため咄嗟に使えるMMM氏推薦の新人向け魔法であった。


 ただしその用法はあくまで緊急時の裏技で自分が産み出した音から身を護る障壁込みの魔法も別に存在している。ちなみにモモは更に上位互換の閃光も追加した制圧魔法を先ほどレンの前で使って見せていた。


 緊急事態のためレンが自滅覚悟し一瞬で込められる魔力をありったけ込めた最大出力の音からレンを護ったのはモモのリボンであった。


 周囲を取り囲まれ絶体絶命とレンが認識した瞬間を起動トリガーとして用意された汎用の防護魔法が起動し偶然その音を遮ったのである。


「それの何がいけない?」


 レンの卑屈ともとれる発言に先頭を歩いていたアグラウェインが立ち止まり振り返って問いを口にした。

実は射ち込まれた毒が強くてレンは死にかけていました(モモはキツイですが死にはしません)。

そのためモモは魔力消費が重い切り札を複数使う位にはキレています。

レンは昔手本となる状況を見ていたとはいえ、練習中の魔法に命をかける胆力と機転を証明しました。

次回はレンの通過儀礼、です。

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