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18話

 レンに全く違和感を抱かせなかった幻はモモからするとわざと手抜きで用意したという代物でしかなかったのである。


「どうしてそんな事を……」

「あなたが何を考えているのか全く解らなかったのだから警戒するのは当然でしょ?」

「けい、かい……?」


 レンが起こった現実を理解すると何故そうしたのかという疑問を口にし、それに対するモモの答えは容赦のないものだった。


「当然でしょ? あなたは命の危険から冷静に判断する余裕もなく、生き残る為に選択の余地がなかった私達と違ってじっくり考える事が出来た筈――それなのに安全な生活を捨て、こっちの世界を選んだ異常者なのよ? 初対面で信用できるとでも?」

「ち、違います! そんなつもりは……!」

「ええ、話してみてそれは違うのは分かった。あなたはただしっかりと考えなかっただけ――私に助けられたというのなら、こっちの世界の危険さはその目で見ていた筈よね?」


 そこまで淡々と突き放すように確認したモモは一度そこで区切り、少しだけレンを思いやった口調に変えて自身の思いを口にする事にした。


「私に恩を返したいと思ってくれたその気持ちは嬉しいのだけど、実際に体験した今なら実感したでしょう? 魔法少女になったからって大した危険ではなくなるわけではないの――私は、私の為になんて理由でこんな命がけの世界に来て欲しくはなかったんだよ?」


 その一言が、レンの心に止めを刺し、レンの膝から力が抜けて座り込んでしまった。


 レンの中で暴れまわる感情は後悔と自責の念だった。


 モモを支える事が出来るようになりたいとレンは魔法少女になる事を決めたが、モモからしたら助けた命が自分から進んで命の危険がある場所に戻ってきてしまった様に見えている。


 それも、自分の身を案じてという純粋な善意からである――その優しさに罪は無く、しかしその行動は決して嬉しいものではない。


 レンはモモの為にと思っていたが、モモからみたらどう思われるかという事まで考えが及んでいなかった――残念ながらただの独りよがりと言ってしまっても過言ではない。


 俯いて肩を震わせるレンに思っていた事が伝わったと判断しモモは身を翻してその場を去ろうと数歩歩いた――その時だった。


「今は、私は弱いです! でもいつか強くなって、モモさんを助けたいという思いを嘘にしたくはないんです!」


 涙声ではあったが、モモの思いを理解してなお譲れなかったレンの結論だった。


 我がままだとしても構わない、同じ立場にならなければ仲良くなることも出来ないのだから――華怜としてもう一度会ってお礼を言いたい、恩を返したいという気持ちを裏切る事がレンにはどうしても出来なかった。


 レンの魂の叫びにモモは足を止めてレンの背中を数秒見つめてからため息を吐いた。


「……あぁもぅ、わかった、私の負けよ」


 その言葉にレンは体を震わせると恐る恐るという様子で背後のモモに顔を向けた。


「あんなに壁を作って対応したのに正面突破してきたのはあなたが――いいえ、レンちゃんが初めてよ」

「モモ、さん……?」


 苦笑いしながら初めてレンの名前を呼んだモモの態度の軟化に驚きながらレンはモモの名前を口にしていた。


「そこまで思われているのにこっちは邪険にして、最後には泣かせたのに諦めないなんていじらしい事を言われたら罪悪感で心が痛いのよ――精神攻撃なんて卑怯よ」


 そう告げるモモの顔は苦い表情に代わり、最後は拗ねたような口調でレンを非難した。


「私の指示には必ず従う事を約束出来るなら、レンちゃんが魔法少女として本当に向いていないのか、しばらくは保留にして見定めてあげる」

「――は、はい! 約束、します! しばらくの間、よろしくお願いします!」


 レンはモモの言葉を聞いて立ち上がり、仮面を一度外して目元を乱暴に拭うと再び顔に付け直して多少しゃくりあげながらそう返答した。


 自分に向けられるレンの非常に嬉しそうな笑顔にモモもニコリと笑った。


「それじゃあ早速だけど、今日はもう帰りなさい」

「――え?」

「流石に連戦なんて馬鹿な真似は考えてないでしょうね?」


 唐突な帰宅命令にレンは思わず声を上げてしまったが、早速指示を無視する気かとモモに真顔で補足されると勢いよく首を横に振る。


「それと幸い明日は休日だから、電車に乗って何処かのネットカフェを探しなさい」

「ネットカフェ、ですか?」

「そして個室とインターネット環境を確保したら『まほネット』という情報交換サイトにアクセスしなさい」

「わ、分かりました――ですが、どうしてそのサイトに?」


 モモの指示が何を意味するか解らなかったレンは疑問を口にし、モモは何でもない事のように驚くべき答えを口にした。


「そのサイトは主に魔法少女やデモニアについて一般向けにまとめているサイトだけど、特定の手順を踏むと魔法少女の関係者が運営する裏サイトにアクセスできる様になっているの――あと、そのサイトにアクセスするまでは戦闘禁止ね」


 モモはレンに裏サイトに繋がる特定の手順と注意を伝えると忙しいと言っていたのは本当だったらしく、一方的にさよならを告げて今度こそその場を後にした。


 レンはもう少しモモと話をしたかったので後を追おうとしたが、鏡界でレンを抱えて移動した速度の更に倍以上で移動された為、どうやっても追いつけない事が分かり諦めてモモの指示通り今日はおとなしく帰る事にした。


 モモとレンが屋上で対話をした次の日、華怜は私服を着てスマホの地図アプリを使いながらネットカフェに向かっていた。


 スマホの地図アプリに従って華怜が辿りついたネットカフェで入会手続きを終えると早速最短時間のコースを選択して金額を支払った。


 華怜はドリンクバーをスルーして女性専用の個室を確保すると起動状態のパソコンからインターネットに接続してまほネットを検索する。


 名前が独特だったので簡単に見つかりアクセスをすると青地に魔法陣が浮かび上がる背景の画面が現れ3つのボタンが浮き上がってきた。


 1つは画面上部の中央に小さめの大きさで、利用規約と書かれている。


 残る2つは両方とも両開きのドアという大きなアイコンが画面の左右に現れ、そのドアにかけられた掛札に内容が書かれていた。


 右の扉はゲスト入り口、左の扉は魔法少女入り口と書かれている。


 モモにその2つの扉はただの罠だから選ばないで、と言われていたので華怜は利用規約をクリックする。


 利用規約もありきたりだから無視していいよ、とモモに言われていたが華怜は真面目に目を通し……たしかに特に変わった内容は無かった、と確認して最後までスクロールさせた。


 そこにはリンクが3つ用意されていて1つは戻る、と書かれた前のページに戻るもの。


 残り2つはそれぞれゲスト入り口と魔法少女入り口と書かれている。


 モモに指示された通り、次は魔法少女入り口と書かれた方を選択すると最初の青地に魔法陣が浮かび上がるという画像が現れた。


 画面の上部に文字が表示できるスペースが現れ『20秒以内にあなたが魔法少女である事を証明してください』と表示される……が、これも演出だけで何も起こらないから勝手にサイトに移動するまで待って、とモモに教えられていたのでじっと待ち続けた。


 20秒経つと『証明に失敗しました、ゲスト入り口よりご案内します』と表示されてまほネットに移動した。


 そこにはポップなタッチで描かれた町があり、カーソルを建物に移動させると魔法少女の画像を置いておく『写真館』や、過去に魔法少女達に助けられた人が感謝の書き込みをする『郵便局』など気になるものは多かったが華怜はそれを飲みこんでモモに指示された一軒家を探してカーソルを移動させると『管理人のお家』と表示されたのでそこをクリックする。


 ログハウス調の室内の画像が表示され、左側に現れる幾つかのメニューから再び利用規約を選択する。


 文頭の注意書きに『サイト入り口の文章と同じものです、既読の方はプラウザバックで構いません』と記載されていたが、真面目な華怜は内容を再度読み……本当に同じ内容だった事を確認してからページの最後までスクロールさせて、そのリンクを発見した。


 そこにはサイト入り口にあった物と同じリンクが用意されていて、今度も魔法少女入り口の上にカーソルを移動して一度深呼吸する。


 このリンクをクリックすると、今度は本当に魔法少女か試されるとモモに教えられていたからである。


 その時に華怜は自分のスマホでアクセスしてはいけないのかと尋ねたのだが、モモによると『一度も()()を体験していないと驚いてスマホは壊してしまうかもしれないから壊さない様に対応するしかないネットカフェとかの他人の物でアクセスさせる』との事だった。


 あまりに不穏な内容に華怜は詳細を訊ねたが『命に危険が無い事は保証できるけど何が起こるかはその時になって初めて分かる仕様だから教えられない』との事だった。


 覚悟を決めてクリックすると、前回と同様に魔法陣の画像に切り替わり画面の上部に文字が表示できるスペースが現れ『20秒以内にあなたが魔法少女である事を証明してください』と表示され――魔法陣が光った。

魔法少女が相手の場合モモはキツイ言動が多いですが、甘さと優しさは別物だと学んだだけです。

そして本人の言った通りレンの精神攻撃を痛いと感じたので『そういえば精神攻撃は除くなんて決めていなかった』と言わなければ分からない事でも公平に裁定する位は約束を守る誠実さと善良さはあります。

次回は華怜がまほネット(裏)にアクセスします。

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