表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/62

11話

 魔法少女になる方法など無いのだと、望んでも無駄なのだと華怜が口にした瞬間に彼女の頭の中に声が響いた。


 低く響くその男の声に華怜は驚いて飛び起きようとした。なぜならそこは女子寮で男の声など聞こえるはずがないのだから。


 しかし、華怜の体は動かない。その事に華怜は驚くがすぐに違うと理解する。


 瞼が驚いた拍子に動いてしまったらしく視界が徐々に閉ざされることから華怜は時間がゆっくり流れているのかと推測する。


『理解が早いな、肝が据わっているとみてよいのか。これは待った甲斐も有ったというものだ』


 再び響く声に華怜は体が動かない代わりに軽快に働く思考を回す。華怜の中で状況の把握と問題と仮定と推論が短時間に次々と出てくる事を確認した何者かは中々の逸材だと喜び華怜の推論に答えを与える。


『意思の疎通は問題ない、其方の思考を読み取り応えよう――聞きたい事はなんだ』


 華怜は目下最大の問題を解決する方法に恐怖を抱いたが、真っ先に聞きたいことを思考した――貴方はいったい『何』だ、と。


『私は「降りたモノ」の1つ、世界を侵す「外のモノ」に対抗する「防人」の力を与える存在だ』


 裏で対策を模索している事が把握されている事を承知で思考を止めない華怜に『降りたモノ』を自称する存在はますます頼もしく思い回答すると華怜は立て続けに出てきた固有名詞3つについて詳細を求めた。


『我々「降りたモノ」はこの世界を統べた勢力だ、もっとも「外のモノ」らの勢力に敗れて落ち延びた故に過去の存在だと言っても過言ではない』


 その回答に華怜はムッとして支配された覚えなど無いと思考するが『降りたモノ』は苦笑の気配をわざわざ伝えて返答をする。


『例えば其方ら人類の文明はこの星の地表をほぼ埋め尽くしたといえよう、だがこの星は其方らの文明など気にして動いてはおるまい? 其方ら人類はこの星の支配者然としているが、実際はこの星に生殺与奪を握られている以上この星の支配下にあるがそれを意識したことはあるか? 其方らの視野が我々の存在を捉えていなかっただけの事だ』


 その例えに一理あると華怜は同意を示したので『降りたモノ』は続きを伝えた。


『さて「外のモノ」に敗れた我々だが、素直にこの世界の支配権を明け渡したりはしていない――出来うる限りの妨害をしたため今も我々の統べていた状態と殆ど同じである』


 殆ど、という言葉に含みがあるように華怜は感じたが質問はせずに先を促す。


『これから「外のモノ」と「防人」について説明するのだが……先日私が其方を見出した際に其方は「外のモノ」の尖兵に襲われ「防人」に救われているのだが身に覚えは?』


 その問いかけに華怜は自分を襲ったデモニアと助けてくれた魔法少女モモを思い浮かべ『降りたモノ』は我が意を得たり、と肯定した。


『フム、其方らは「外のモノ」を「デモニア」と「防人」を「魔法少女」とそれぞれ呼称しているのだな――今後は私も可能な範囲で合わせよう』


 華怜は『降りたモノ』が肯定をした事柄と自身をどんな存在だと述べた事が繋がり驚愕した。


 ――『降りたモノ』は『防人』の力を与える、という事は……。


『その理解であっている――デモニアらがこの世界を支配するために試行錯誤した結果、この世界に尖兵が送り込まれてきている。デモニアからこの世界を守るために魔法少女になってはもらえまいか?』


 その回答に華怜は喜びの感情が爆発したが、理性が警告を発した――タイミングが良すぎる慎重になれ、と。


『今まで其方に干渉出来なかったのは其方を護る魔法の所為だ。散々試して弾かれ続けたと思えば急に効果が消えてこちらも困惑している』


 警戒したことを質問だと解釈したらしく『降りたモノ』はそう弁明した。


 相手が嘘をついているかどうか華怜にはわからないので矢継ぎ早に質問して矛盾を感じるかどうかで判断する事にした。


 ――魔法少女になった場合の私のメリットとデメリットは?


『命を懸けさせる対価として私に出来る範囲で願い事を1つ叶えよう。死者の蘇生等幾つか叶えられない願いはあるが出来ない事の方が少ないだろう――そして、叶えた願いの規模によって戦い続ける期間が決まる』


 ――願いの規模とは?


『自身や他者の傷を癒す等は自然治癒で直るため、その時間を早めるだけで済み規模としては小さい――逆に過去の出来事を変える、無かった事にするというものは時を遡るほど影響する範囲が広がり規模は非常に大規模になるだろうな』


 ――何故、宇宙は広いのにこの星にデモニアが現れたの?


『それは逆に考える必要がある。宇宙が広いからこの星へ集中する様に我らが細工したのだ――防衛を考えれば戦力は集中した方が良いに決まっているからな』


 ――何故、この星が選ばれたの?


『単一種族、或いは交配可能な亜種で1つの星を勢力下に置き、我らを理解しうる文明と呼べる水準を持つ知性体となるとこの星が最大規模だったからだ』


 ――貴方達『降りたモノ』はどうして魔法少女なんて回りくどい事を?


『世界の防衛機構は強力だが大雑把で対応した結果世界そのものを傷つけても大事の前の小事と捉える――しかし傷つくとは世界が弱る事を意味し、防衛機構自体に頼りきればいずれ対応されてしまうだろう。それならば防衛機構の一端を現地の知性体に運用させ防衛した方がリスクは少ないという判断だ』


 ――過去にデモニアに負けていたとしても『降りたモノ』の方が魔法少女より強いのでは?


『当然我ら『降りたモノ』の方が魔法少女たちに比べれば振るえる事象は大きいがデモニアの狙いはこの世界を支配下に置く事で、そのために支配権を隠した我々を探している――わざわざ出向いて奴らの有利になる展開にする必要はない』


 自分たちでやった方が良いのでは、という華怜の遠回しな問いにそう返答してきた。


 ――何故、デモニアは『降りたモノ』を破ったのに『降りたモノ』より弱い魔法少女たちはデモニアに抗えているの?


『我らのような存在がこの世界を壊せないよう防衛機構が振るえる力に制限を設けているからだ――そう制定されている為、何でもありの世界の外側からこの世界を壊しても構わない程の力を振るうか防衛機構のルールに従い世界を壊せないよう制限を受け入れて行動するかの二択の中で後者をデモニアが選んでいるからだ』


 そろそろ聞くことが減ってきたため核心の問いを華怜はぶつける事にした。


 ――貴方は何の為にそんな事をするの?


『何? 其方今までの事を全く理解していないのか?』


 少し呆れたような反応を返してきた『降りたモノ』に華怜は重ねて問いをぶつける。


 ――そちらの事情は確認した範囲で理解はしました。『降りたモノ』全体の理屈ではなくあなた個人に何の利点がありこの作戦に手を貸しているのですか?


 その質問は予想外だったのかその『降りたモノ』は押し黙った。質問を追加することなく華怜はじっと返答を待つと『降りたモノ』は答えを口にした。


『単なる私怨だ、気に食わないからと言い換えても良い』


 とるに足らない事柄だと伝えようとしたのだろうが華怜にはそうは思えず黙って待つと渋々といった体で『降りたモノ』は続きを伝えてきた。


『私が最も信頼した同胞を倒すだけでは飽き足らず、奴が残した存在した証を好き放題にされて失われる事がどうしても容認出来なかっただけだ』


 確かに私怨だと華怜は思った……そして嘘はないのだろうとも。


 ――支配権を奪われるとどうなるの?


『我らが魔法少女として戦わせる対価に其方らの願いを叶える事が出来るのは支配権をまだ有しているからといえる。ここまで落ちぶれた我らにもその程度は容易である事を思えば――それこそ、支配権を得たモノの思うままであろうな』


 ――魔法少女になるか考える時間はもらえますか?


『本来なら与えられるべきだが其方にはここで決めてもらう――いつ魔法が効果を取り戻しこちらから干渉出来なくなるか解らないからな』


 ――仮に断ったらどうなります?


『これまで話した内容全ての記憶を失ってもらうだけだ』


 ――そういえば魔法少女たちが秘密主義的なのは他人に話すと記憶を失うからですか?


『秘密主義的なのかは不明だが記憶を失うのは確かだ――正確には無関係な他者に正体や事情が知られた場合には魔法少女の契約破棄と魔力の喪失、魔法少女でいた期間の記憶の喪失と魔法少女としての拘束期間未満であれば願いはその達成割合によって部分的に叶うか全く叶わないというペナルティが課せられる』


 ――重い! そこまで重い罰則なら誰だって姿を隠すよ!


 体が自由なら思わず叫んでいただろうという程に華怜は驚いた。


『隠し事を守る最も確実な方法は隠しているという事自体を知られない事だ――口封じを選択しないだけ我々は人類に対し配慮をしている』


 そういう事じゃないと思いながら華怜は推測した。


 最も世間の注目を集めているモモから連鎖して他の魔法少女までペナルティを受けない様に立ち回るには、そもそも他の誰とも仲良くなどならなければ良いと判断してしまったのではなかろうか、と。


 モモは孤立しているという訳ではなく、孤独を選択する事が誰にも迷惑をかけないですむという事だったという単純な理屈を――受け入れたくないと華怜は思った。


 ――願い事は、ある! 私を魔法少女にして!

次回、魔法少女が誕生します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ