Ic13266世界 クイズキングダム 【経験】
チーム【BOKU☆METU】は、チーム【ヌエリャンオパツェリ】との対決を経て決勝戦への切符を手に入れた。
エージェントAa015、エージェントIh014、エージェントIh030。
彼らは皆、贔屓目抜きで心から頼もしい仲間だ。
エージェントコードこそAa004と一番若いのは僕だが、この世界での立ち回りや活躍を見れば、もはや四人が皆対等と言っても過言ではないかもしれない。
研修生である二名も、ここまで来ればもうエージェントとして一人立ちできる頃合いだろう。
「次の対戦相手は【王子と愉快な仲間たち】、か。
流石と言うべきか、決勝戦にまで残って来たな。
準決勝で負けてくれていれば、俺たちの選択肢にとんずらこいて猶予期間いっぱいまで逃げ切るって素敵な案があったんだが。」
「もう決まったことぼやいてもしょうがねえだろ、師匠。
かっこわりいぞ。」
「そうですよ。
ここまで来たらあと一回勝てばいいだけです!
みんなで力を合わせて頑張りましょう!」
「あー。若者は熱意に満ちていていいねえー。」
選手控え室、大型モニターでの観戦。
決勝戦の相手はチーム【王子と愉快な仲間たち】に決まった。
現国王の実子である王子が率いるこのチーム、何を隠そう残りの三人のメンバーは全員転移者なのだ。
これはそもそも今回、僕たちエージェントが合同で任務にあたることになった理由でもある。
複数人の転移案件とは全体的に見て珍しいことではあるが、過去に実例が一定数存在する。
例えば教育機関の一集団を巻き込む中規模転移や、国家所属の軍隊丸ごと巻き込む大規模転移など、それらは基本的にエージェント一個人の手に余る任務となることが多い。
ゆえに複数人の転移案件には複数人のエージェントが派遣されるのが基本だ。
「しっかし流石に強えなアイツら……なんだっけ、トーキュー大学?のクイズ研究会の学生?だったっけ?」
「そうだよ。
A世界の東究大学・クイズ研究会の学生、だってさ。」
「三人が三人そろってひょろっとしたメガネ。
真っ向から殺るなら簡単なんだけどなあ。」
「まあ、選手の動向は常に監視されてるから仕方ないよね。」
僕は投げやりな質問をぶつけてくる悪友に返事をしながらも、モニターを見続ける。
先ほど決勝進出を決めた選手のインタビューで三人の顔が映されていたが、正直なところ、あまり脅威を感じていない自分がいた。
戦闘力だとか、知力だとか。
その力の種類を問わず、自分を殺し得る相手は、見てピンとくるものがある。
これは経験則によるただの直感だが、投げやりな態度を見る限りエージェントAa015も同じ考えだろう。
おそらく僕たちはこの世界で死ぬことはない。
決勝もなんとか切り抜けられることだろう。
――と、結果の見えている、この世界でのこの先を語ることは重要ではない。
僕たちはクイズで敵を打ち負かす。
結果、転生者は漏れなく死を迎え、僕たちは大手を振って意識の海へと帰還する。
ただそれだけの話だ。
この世界で重要だったことは二つ。
一つは委員会にエージェントAa004・エージェントAa015・エージェントIh014・エージェントIh030の四名の相性が良いと判断されたこと。
そしてもう一つは、エージェントIh014が晴れて十を数える世界を乗り越えたということだ。
これにより、ステージは次の段階へと進んでいく
僕は近々訪れるアイとの別れを寂しく思いながらも、彼女の明るい未来を願う。
彼女を待つ未来がどれほど過酷なものか、この時はまだ知る由もなく。