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Ic13266世界 クイズキングダム 【劣等】

 

 オレ、サティことエージェントIh030には悩みがある。



「お、オレ、エージェントIh030!サティって呼んでくれ!

 オレも今、そこのエージェントAa015のもとで研修中の身なんだ!

 よ、よろしくな!」


「こいつ、友だちが欲しいんだとよ。

 なあエージェントIh014、いや、アイちゃん。

 こいつと友だちになってやってくれねえか。」


「ちょ、師匠!?言うなよ、馬鹿!!」


「ふ、ふふふふふ。

 サティ。こちらこそ、よろしくね。」



 こんなやりとりを経て、念願のエージェント仲間が出来たことは大いに喜ぶべきことだ。

 アイことエージェントIh014は、普段は真面目で優等生といった雰囲気を漂わせつつもユーモアがあって、一緒に居て退屈しない相手だった。

 しかも、同じ研修生とは思えない位に優秀だった。



「今回の大規模転移者たちの動向がつかめました。

 どうやら3人の転移者は既にクイズ大会へのエントリーを済ませているみたいです。」


「えっ!?もう調べてきたのか!?」



 そう、情けないことに悩みと言うのは、優秀すぎる仲間を目の当たりにして劣等感を抱いているということだ。

 もともとオレは自分にエージェントとしての実力が足りていないことを自覚している。

 それは腕っぷしや度胸とかの話じゃなくて、知力だとか判断力だとか、そういったいろいろなものが、だ。


 それを思い知る機会は本戦出場を決めるまでのクイズにも多々あって、おそらくチームの中でオレが一番正解に貢献していなかった。



「――さあ、解答時間まで残り3分。

 これは各チームとも頭を悩ませているようです。」



 そして劣等感は思考を鈍らせる。

 この負ければ死という本戦にまで及んで。

 自覚があるのに拭えないのが厄介なことだ。

 まただ、またオレは師匠の足を引っ張って――





「なあ、さっちゃんよぉ。」





 その時、隣の師匠の優しい声が、ふと耳に入ってきた。



「ラクに行こうぜ、ラクに。

 難しく考えすぎなくていいさ、おまえはおまえでいいんだ。」



 まるでオレの考えていることが分かっているかのように。

 それでいて今オレが求めている言葉を、いつも師匠はくれる。


 ――そうだ。

 オレは、師匠やみんなの足を引っ張りたくないから頑張るんじゃない。

 師匠やみんなの期待に応えたくて頑張るんだ。


 同じなようで、同じじゃない。

 たったの一言だったけれど、その一言がオレの思考を加速させてくれた。



「……0だ!

 答えは0!!」


「えっ!?サティ、なんで0になるの……?」


「まあまあアイちゃん。

 時間も無いし、コイツのことを信じてやってくれや。

 だぁいじょうぶ、間違いなく正解だから。

 ……多分。」



 最後の一言が無ければ最高にかっこいいが、そんなところも師匠らしかった。



「そこまで!!

 ……それでは、各チームの回答を見る前に、このクイズの解説をしていきましょう。」



 制限時間を告げるアナウンスが、そのまま観客へ向けての解説を始める。

 本当に合っているか、不安と緊張に襲われるけれど、きっと、きっと大丈夫だ。



「この問題は、一、二、三のそれぞれをまずは独立して考えることが肝心です。

 例えば一。

 誤魔化しナシさ 当然財産最後反省会

 これをひらがなにすると、

 →ごまかしなしさとうぜんざいさんさいごはんせいかい

 さらに意味のある言葉に変換すると、

 →ごま 菓子 梨 砂糖 ぜんざい 山菜 ごはん 正解

『正解』以外は全部食べられるものとなるわけですね。」


「なるほど。では、残りの二つも同様に?」


「その通りです。

 才気常に進化 異界からイオン 兎は去る

 これをひらがなにすると、

 →さいきつねにしんかいかいからいおんうさぎはさる

 さらに変換して、

 →サイ キツネ ニシン 貝 蚊 イカ ライオン 兎 は サル

『かいかいか』の部分は蚊と貝とイカの組み合わせなら他のパターンもできるんですが、答えは変わりません。

『は」以外はみんな生き物の名前になります。」


「流石にもう、私も三はわかりましたよ。

 位置に銃 ロクな泣く珊瑚いない

 ひらがなにして、

 →いちにじゅうろくななくさんごいない

 変換するので、

 →一 二 十 六 七 九 三 五 いない

『いない』以外は数字になるんですね。」


「その通りです。

 ここまで来ればもう簡単。

 除け者で徒党を組む、つまり先ほどの三つの文字を合わせると、

『正解はいない』となる。

 この問題では兎の数を答えよと言われているわけですから、いない、つまり。」



 この時点でオレはもう、思わずガッツポーズをしてしまった。



「『0』と答えることで正解となるわけです。」



 たった一問を解いただけ。

 けれどその瞬間、オレは勢いよくアイに抱き着かれ、師匠に頭を撫でられた。

 もう、劣等感はここに捨てて行こう。そう思えた。


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