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~Iのメモ~ その二(※用語集)

【世界線同調】

「自分の意識・器を依り代に、異なる世界線の理を適用させる」という、先生の、エージェントAa004の必殺技。これを使うからには必ず殺すという、本当の意味での文字通りの必殺技なのだそう。

 ただしこの世界線同調には、使えるのは一つの世界で一度きりだとか、反動で来る満身創痍の状態は意識の海へ帰還するまで治らないだとか、条件がある。先生はこの技を使うたびに後述する【寿命】を削っている自覚があるそうで、極力使用を控えているらしい。

 また条件の内で、特に重要なのが該当世界と縁のある世界の理ではないと自身の意識・器を依り代に適用させることができないことだそうだ。この縁というものは世界線番号が近いなどという単純なものではなく非常に感覚的な物らしく、なんとなく「今いる世界には、この世界の理が適用できる」と感じ取れるものを選ぶのだとか。

 ちなみに先生が言う通り、おそらくこの技は他の誰にも真似はできない。だからこそこの項目も「~らしい」、「~そうだ」、「~だとか」という語尾が大いに多用されている。こればっかりは仕方がない。


【異世界召喚】

 実は先生が使った【世界線同調】と【異世界召喚】は別物であるらしい。異世界召喚とはあくまでもYm80129世界という世界の召喚士と呼ばれる者たちの技術であって、世界線同調とセットで使える物ではない。つまり、

 一、世界線同調でYm80129世界と同調し、異世界召喚を可能とする。

 二、世界線同調でEn37033世界と同調し、対敵性侵略体兵器星屑が存在できる土台・理を作る。

 三、異世界召喚で星屑を召喚する。

というプロセスが当時はあったそうだ。

 ……合ってるよね?この解釈。うーん、やっぱり難しい。


【寿命】

 この寿命というものはどうやら身体だけでなく意識にも設定されているようで、器さえ滅びなければ不老不死にさえ思えるエージェントにもいつかは必ず終わりが来るようだ。

 恐ろしいのは、おそらく先生の寿命がほとんど残されていないだろうということ。だって、ただでさえ初期エージェントとして長い期間を意識として過ごしているのに、寿命を削る技まで使用しているのだから。

 このことに気づいてしまった私は、幸だろうか、不幸だろうか。


【意識の休養】

 意識の海への帰還時、意識が著しく消耗していると休養と称して一時的に任務を凍結されることがある。上述の通り、寿命は回復することなど無いはずだけれど、それでも念のためということなのだろうか。

 もっとも、以前のメモでも触れたが意識の海では時間間隔がない。だから少なくとも私は、あまり長く休んでいたという気分にもならなかった。


【世界線の壁】

 世界線における壁と言われるものが二つあり、それはJの世界とSの世界であるとされる。Zz99999世界に近づけば近づくほどトンデモナイ世界となっていくのが世界番号だが、AからIまでの世界での任務とJ以降の世界での任務は勝手が異なる。

 ゆえにJの世界での任務を単独で達成することが、私たち研修生が研修を終えるための一つの条件となる。

 また同様にJからRまでの世界での任務とS以降の世界では任務達成の難易度が段違いであるとされ、こちらの任務は実績あるベテランのエージェントにしかまわされない。

 ただしS以降の世界に転生する転生者は他の世界に比べて少なく、また仮に転生したとしてもその世界になじむことはほぼないため、任務がまわってくることは滅多にないらしい。

 ただ、これに関しては伝聞の伝聞なわけで、仮に違ったとしてもまだまだ新人でぺーぺーの私には確かめるすべがないんだよなあ。



【再派遣】

 以前に派遣されたことのある世界に再び派遣されること。ただし、こういったケースは滅多にない。そもそも同じ世界で何度も何度も転移・転生が起こること自体が珍しいことと、私たちの任務の性質上その世界には必ず禍根が残るということが大きな理由だ。

 それでも再派遣が行われる可能性があるのは、エージェントと世界の相性が抜群に良い時。少なくとも今のところは、私が再派遣される可能性のある世界は無いだろう。





 ……研修生のキミに頼むのもヘンな話だけど、彼のことを支えてやってあげてくれ。

 意識の海でそう言われた私は、今回の世界では何の役にも立っていなかった。

 実力的に役に立つことも、精神的に助けになることも、おそらくほとんどできていない。

 ロウリーと呼ばれた男の最期の言葉とその表情を、きっと先生はこの先も忘れられずに抱えていくのだろう。


 私は、いったいどうすれば、先生のお力になれるのだろうか。


 くそ。自虐的なメモになってしまった。

 せめて、自分の気持ちくらいは切り替えなければ。


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