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Aa00005世界 ジェペェン 「真面目な話。」

 

 家に二人、オレと師匠。

 人の命を狙うことも、人に命を狙われることも無い生活というのは良いもので。

 とにかくオレたちは気が抜けきっていた。



「……。」


「……。」


「あぁー、さっちゃん、ジュース取ってぇ。」


「ぁいよー。

 ……ところで師匠、オレたちこんなんでいいの?」


「こんなんとは。」


「いや、オレたち本当になんもしてねえけど、いいの?」



 山から帰ってなんと二週間と少し。

 その間この世界に溢れるたくさんの娯楽に見事にハマってしまっていた。



「よっしゃさっちゃん、一狩り行こうぜ!!」


「足引っ張んなよ師匠!」



 ファンタジー世界で狩人になってモンスターを狩るという、普段生身の身体でやってることじゃねえか!という内容のゲームに熱中したり。



「おい師匠早くしてくれよ、次の巻待ってるんだけど。」


「ちょっ、待って、話しかけないで。ホント今いいとこだから。」



 この世界の漫画を買ってきては二人で回し読みをしたり。

 とにかく本当にグダグダと過ごしてきてしまった。

 こう堕落した日々が続くと流石に焦りも出てくる。

 いくら転生者が不在だとはいえ、何かやるべきことがあるのではないか。

 こう、武術の練習に励むだとか、戦術の指南書的な物を読むだとか。



「だぁからそんなもん必要ねえっての。

 おまえみたいな真面目なヤツこそ、何も考えなくていい休養期間が必要なんだよ。」


「で、でも、流石に意識の海に戻ったら怒られねえかな?」


「ん?何を?」


「だから、こんな生活をしてたこと。」



 オレの言葉に師匠は少し眉をしかめると、なるほどと言って手を叩く。



「おまえ知らねえか。

 そりゃあそうだわな、俺も教えた覚えはねえし。」


「え、何が?」


「いや、エージェントが現地で何してるかなんて、当事者たちしか知らねえよ。」


「……そうなの?」



 転生反応光を観測するだの、該当世界の情報を事前に取得するだの、わけのわからない技術が使われているのだ。

 てっきりオレたちの行動は委員会に筒抜けだと思っていたのだけれど、師匠は違うという。



「エージェントを派遣したら、その動向なんて委員会は把握できてねえよ。

 やつらが興味があるのは転生者が死んだかどうかだけだし、転生反応光が消えたかどうかさえ観測できていれば向こうにとってはそれで問題ないんだろ。」



 いい機会だ、伝えとくかぁ。

 そう言って師匠は続ける。



「そもそも意識の海で俺たちに話しかけてくるアイツら、いったい誰なんだと思う?」


「え?」



 意識の海で話しかけてくる人物。

 考えたことも無かった。

 ……考えたことも無かった?

 自分が喋っている相手が誰なのかということを?

 今、考えれば考えるほど深みにはまっていくようで、ゾッとする。



「だ、誰なんだよ?」


「さあ、わからん。

 知る術はないし、余計な詮索をして万が一にも消されちゃあたまらんしな。」



 言葉が出ないオレを、しっかりと師匠は見据える。



「前に言っただろ?本来エージェントは思考がロックされてるって。

 まず間違いなく、エージェントはみんな意識の海での対話相手に関して疑問を抱かないようにロックされてることだろう。」



 ちょっと真面目な話になるが、知りたいことにはわかる範囲で答えてやるよ。

 そう言う師匠の表情はいたって真面目で。



「ただし、もうちょいこのぐだぐだ生活を満喫してからな!」


「……おい!」


 けれどすぐにいつもの表情に戻った。




 エージェントIh030

 エージェントAa015

 残り滞在猶予期間【10日】。

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