Ds12166世界 役職の箱庭 【覚悟】
私、アイは、エージェントIh014は。
ただ震えていることしかできない自分が心底憎かった。
「うおおおおっ……!」
傷つき、倒れ、それでもなお立ち上がり、命を賭して戦う先生を、少しでも助けたい。
けれどそんな思いとは裏腹に、私にできることはここで立ち尽くす以外に本当に何もない。
敵との距離は十分にある。
いかに強大な相手とはいえ一瞬で詰められる距離ではなく、また敵にとって間近で殺気を放つ先生を無視してこちらに来るにはリスクの高すぎる距離だ。
加えて相手にとって、私の能力は未知数。
ただ立っていることこそが、最大の助けになる。
頭では、分かっている。
「っ……!」
それでも自分の不甲斐なさに、嗚咽する声が漏れそうになる。
必死で飲み込んで、せめて違う言葉を口にした。
「先生……!!勝ってください……!!!」
――涙で視界がぼやけただけかもしれない。
ただの気のせいだったかもしれない。
けれどその時、先生のまわりだけ、空間が揺らいだように見えた――
◇
覚悟を決めた。
Ds12166世界の暗黒騎士フォーとしてではなく、転生撲滅委員会のエージェントAa004として全力を振り絞るために。
「【闇の霧】。」
周囲に黒い霧を展開。まずは視界を奪う。
「おお?今度はピンクじゃなくて黒の霧か?」
「気をつけなさい。またいつ奇襲されるかわからないわよ。」
「流石に二度同じ手を喰らうわけにはいかねえよなぁ。」
二匹は警戒を強め、その場に留まったようだ。
……好都合。
「世界線同調、開始。」
意識を集中させろ。
感覚を同期しろ。
幾多の世界線から最適解を導き出せ。
――脳が、魂が。焼き切れるかのような感覚を覚える。
――それが、どうした!!
世界の声を聴け。
魂を感じろ。
そこにあるものと思い込め。
己に不可能はないものと心得よ!
同調:Ym80129世界
同調:En37033世界
いける。
いくぞ。
いくぞ!!!!
「異世界召喚。来い――
対敵性侵略体兵器、【星屑】!!!!!」