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Ds12166世界 役職の箱庭 【神速】

「いやいやいやいや!!!!!

 いくらなんでも無理ですよ今回!!!!!!!

 死ねって言われているようなもんですって絶対!!!!!!!!!」



 人気のない、鬱蒼とした森の中。

 ギャアギャアと何かの鳴き声は聞こえるが、恐らくモンスターが生息しているのだろう。


 そんな不気味な雰囲気をぶち壊すかのよう。

 現地での開口一番、弱音と文句の混じった抗議とともに天を仰ぐIh014ことアイにはまだ元気があった。

 弱音であろうが文句であろうが、大声を出すことができるのは元気があってこそのものだ。



「まあまあ、まずはステータスとやらを確認してみようよ。

 相手が強大とはいえ、こっちだってそれに比肩する能力かもしれないし。」



 ……そうやって先生である僕、Aa004ことフォーになだめられて、ステータスを確認するまでは、だが。




 攻撃力:444444

 防御力:230091

 魔力:444444

 敏捷性:398709

 運命力:500000


 ▼


 《役職【暗黒騎士】》

 《固有スキル【闇の霧】》

 《自身の周りにあらゆる魔法効果を無力化させる霧を張ることができる。ただし効果範囲・時間は使用者の能力に左右される。》




「お、おお!流石先生、めっちゃ強そうですね!!」


「まあ僕の場合、事前に器が世界と相性が良いみたいだって言われてたからね。」



 そう言って目の前に表示された電子パネルのような画面を閉じる。

 この世界では自分の情報を攻撃力・防御力といった《ステータス》の他に、《役職》・《スキル》を加えた三項目で可視化させることができるそうだ。

 肉体に添えられた情報によると、どうもこの《役職》と《スキル》がこの世界における重要な要素だそうだが、ともかく僕の情報を開示した結果としてアイは目を輝かせた。


 そう。

 もう一度言うが、この時点では元気だったのだ。この時点では、まだ。



「じゃあ次は、私の番ですね!」



 そう言ってアイはステータスを開示した。

 そしてすぐに表情が曇る。


 攻撃力、防御力、魔力その他諸々……。

 それらの数値が先ほどの僕の数値とは文字通り桁が違う。

 具体的には、桁が5つほど違う。

 もっと具体的に言えば、例えばアイの防御力は4だった。



「よ、良かったじゃないか。僕のエージェントコードと同じだよ、ラッキーだね。」



 せめてそうやって雰囲気を明るくさせてみようかとも思ったが、逆効果にしかならなさそうだったのでそれ以上は止めた。

 そして、次に表示される、問題の《役職》と《スキル》。






 《役職【フードファイター】》

 《固有スキル【神速喰い】》

 《自身の視界に入っている食べ物に限り、何者にも干渉されず一瞬のうちに平らげ且つ消化できる。》






  正直に言おう、爆笑した。


 固まったままピクリとも動かないアイを尻目に、腹を押さえて笑った。

 そしてしばらく笑い続けたため、キッと睨まれた。

 基本的に僕には従順でそうそう文句も言わないアイなので、これはこれで打ち解けられてきた証かだなんて思いながらもフォローに回る。



「い、いやいやいや。

 笑ってしまったけれど、実はめちゃくちゃ強いスキルかもしれないじゃない?

 そ、その、【フードファイター】の、【神速喰い】、さ。」



 ふてくされるアイをなだめるように、未だに後を引く笑いをこらえて言ってみる。

 もしかしたら、隠された能力があるのかもしれないよ。

 あるいは、相手が生き物なら一瞬で倒せる最強スキルかも!?

 そんな風に、だ。



「ブオオオオオ!」


「ほ、ほら。ご丁寧に豚肉さんも向こうから出てきてくれたよ?」


「何が豚肉さんですか!どう見てもモンスターでしょう!!

 ほら、何とかしてください暗!黒!騎士!様!!

 そうじゃないとか弱い私が逆にひき肉にされますよ!?」



 うむ、あたりが強い。

 特に【暗黒騎士】の言い方とか。


 ともかく、森で出没した豚風の魔物だとか、拾った木の実だとか、色々なもので試した結果、わかったこと。


 アイが「これは食える!」と判断した食べ物に限り効果が発動。

 当然、生きたままの生物なんかは無理。肉でも生肉とかも無理。

 もっと言うならどれだけ「食える!!」と自他ともに言い聞かせたところで、無理なものは無理。虫とか。


 しかし一たび効果が発動すると、対象を視界にさえ収めていれば距離の遠近さえ無視して「食べた」という結果を残す。

 極端な話、20m先で今まさに他人が食おうとしている焼き肉を、一瞬で横取りして喰うことも可能。

 ただし、あくまで『消失』させるのではなく『消化』するので普通に腹が満ちる。

 ついでに言えばアイの食欲は特に旺盛というわけではない。というかむしろ並以下。



「これ、どうやって戦えばいいんですかね……?」


「晩飯の席でこっそりつまみ食いして、仲間割れでも引き起こさせたらどうだろうか。」


「……からかってます?」


「……うん。」



 今度は流石に頬をつねられた。

 涙目で。

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