「意識の海にて」
「やあやあ、おかえり。
流石だね、エージェントAa004。」
ただいまー。
任務の件は、今回僕は大したことはしてないんだけどね。
「またそんな謙遜を。
二人のエージェントが挑んで転生者の手掛かりすら掴めなかった任務だったんだ、大したことはしてないだなんて、前任者の面目丸つぶれだよ。
それにしてもきっちり期待に応えてくれるとは、キミに頼んだ甲斐があったってもんさ。」
いや、ホントに大したことをしてないんだ、僕は。
今回はIh014の手柄と言っても決して過言ではないくらい、彼女が活躍してくれたよ。
「ん、そうなの?」
うん、そうなの。
「そっか。次の世界は流石に荷が重いかもだなんて思っていたけれど、それなら大丈夫かな?」
お?
「次の相手は地帝竜。いわゆるドラゴンだよ。
転生したら人外でしたーっていう、例のあれだね。」
へえ、そりゃあ大物だ。
ちなみにその世界、僕やIh014の器との相性は良かったりする?
「キミの方は抜群に良いんだけど、Ih014の方はぶっちゃけわかんない。
ただしその代わりと言っちゃあなんだけど、けっこう詳しく分かってることがある。
相手の能力っていうか、実力っていうか、スキルっていうか、そういうやつ。」
ああ、なんかステータスとかスキルとかが表示されるだとか、そんな感じの世界か。
「うん、そうらしい。
どうせ現地に行ったら肉体に添えられた情報で相手のヤバさは分かるんだけど、とりあえず今のうちに簡単に伝えとくね。
地帝竜・アーシー。
自らの力を分け与えた実質的な部下として、千を超える魔物を従えている。
その一匹一匹が多少強いくらいの人間ではとてもかなわない位に強い。
当然本人、いや本竜か?まあともかく転生者自身が一番ヤバくて、具体的に言えばその世界の伝説級の武器か最上級魔法を使わないとかすり傷一つ負わない。」
おいおいおい。
下手すれば例の勇者殺し以上の案件じゃないの?これ。
「まあまあ、決定事項なんだから諦めて聞きなよ。
で、続きね。
スキル『経口摂取』とかいう、自分が食べた相手の能力を自在に使えるようになる反則じみた能力を持っているそうで。
しかも相手は身の丈10mを超えるドラゴンだそうだから、まあ食べられない相手なんてそうそういないよね。
結果的に今では一日二回限定で行ったことのある場所に移動できる『瞬間移動』だとか、自分の身体を人間だろうが物質だろうが自由に変えることのできる『変幻自在』だとか、数えきれないほどの多種多様なスキルを持っているそうだよ。」
うん、まあ、何を聞いたところでやるしかないんだけどね。
……あれ?ところでもちろんこのこと、Ih014にも伝えた?
「うん、もちろん。」
反応、面白かった?
「面白かった。」