会話劇。
Aa00000世界 日本
とある一般家庭の祖父と孫の、そして母と孫の会話。
「ワシはな。若い頃は、それはそれは多くの無茶を重ねてきたもんなんじゃ。
こことは別の、色んな世界を渡ってな。分かるか?国じゃない、世界じゃ。世界を巡ったんじゃ。
魔法が使える世界、ロボットが暮らす世界、こことは似ているようで違う世界、本当に様々じゃったよ。
そんな数多くの世界の中で、ワシはひたすらに人を殺めておったんじゃ……」
「ねえおじいちゃん、今日も詳しく聞かせてよ。
その、色んな世界の話と、なんとか委員会?ってやつの話。」
「ええともさ。
転生撲滅委員会、と言うてなあ。
異世界転移・転生を果たした者を許さず追い続けるっちゅう組織があるんじゃ。
ワシはその中でもトップエージェントと呼ばれた男だった……が。
裏切って、いや、そもそも元から騙されておった以上裏切りとは違うかもしれんが、ともかく組織から離れてしもうてなあ。
今じゃあただの呆け老人じゃわなぁ。」
「組織から離れた後は、追手が来るとかはなかったの?」
「あった、が、今にして思えばあれは情けをかけられたんじゃろう。
本来、転生者なぞ委員会からすれば例外なく排除の対象なんじゃがな。
……ん、ああ、お母さんが呼んどるぞ。行っといで。」
「はーい。
じゃあおじいちゃん、また聞かせてね。」
「ああ、いつでも聞かせてあげよう。
ワシが死ぬまでの間ならいつでも、な。」
「もう、おじいちゃんったら、最近だいぶ酷くなってきたわね。
昔って言ったって、おじいちゃんも普通の小学校、中学校、高校を出て、普通の人生を送ってきた人なのに。
ドラマか何かと区別がつかなくなってるのね。これもボケの症状だとは言われるけれど。
……それでも嫌な顔一つせずに、いつもおじいちゃんの話を聞いてくれてありがとうね。」
「お母さん、私、お礼を言われるようなことはしてないよ。
だって素直におじいちゃんの話、面白いんだもん。それに、」
「それに?」
「ううん、なんでもない!」
「……それに、私自身、転生者だもの。
なんて、お母さんやおじいちゃんには言えないけどね。」




