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三人称。



手紙を読み終えた後、エージェントAa004だった男は。

いや、もはや今ここにいる自分以外の何者でもなかった男は、静かに泣いた。

その涙の理由は何に依るものなのか、彼自身にも言語化は不可能だったが、それでも涙はしばらくの間止まることは無かった。


彼はAa00000世界という平和で平凡な世界の、日本という平和で平凡な国で、これから先のそれなりに長い人生を送ることになる。

いつの日か男からは、戦いの日々の記憶は薄れていくだろう。

世界を渡った記憶も、彼女と交わした言葉も、まるで自己の妄想、あるいは夢のようなものとして実感の伴わない思い出に変わっていくだろう。

しかしまたその中で呪いのように、自分の魂の輪廻に『次』は無いのだという事実だけは残り続けるのだろう。


そして彼の抱える呪いはもう一つ。

学校に通う人生の途中で、会社に通う人生の途中で、あるいは人生という長い旅路に疲れたどこかで、誰もが夢想するような。

平凡な自分でも、異世界転移・転生ができれば楽しく夢のある人生が送れるはずだという。

そういった妄想は、彼にはもう二度と許されない。


何故ならどれだけ記憶が薄れていこうとも、彼は確かに【転生撲滅委員会】の一員だったのだから。



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