だれかのきおく の まえのきおく
第150部分
記憶の混線-2-
第182部分
だれかのきおく
その間。
「……一つ確認なんですけれど。
僕の結末に関わらず、当然今もまだ転生撲滅委員会のエージェント達は転生者・転移者の虐殺を続けているんですよね?」
「そうでしょうね。
残念ながら私は全知全能・何でもお見通しというわけにはいきませんが、それでも確信を持って言えます。
今この瞬間にも、あなたと同じく自らの行いは世界線の乱れを正す行為だと信じたエージェント達が、自らの手を汚して殺戮を続けていることでしょう。
あなたがいくら強力だったとはいえ、あなたという駒を一つ失ったところで転生撲滅委員会はその動きを止めることも、鈍らせることもないでしょうね。」
「それなら。
それなら、僕がすべきことは転生撲滅委員会を壊滅させること。
そして、エージェント達の手をこれ以上汚させないことだ。」
……願いは、一つだけじゃなくてもいいんですか。」
「ええ。何度も繰り返しますが可能な範囲内で、ですが。」
「それなら――」
僕は数えきれない罪なき命を奪った。
その贖罪のために、第二の生を捧げることに躊躇は無い。
……などと。
格好のつく綺麗ごとを言えるほど、僕は素晴らしい人間、素晴らしい魂などでは無かった。
『転生』。
それができる。
ならば当然考える。
望むのは血みどろの、茨の道を歩む人生などではない。
もしも、万が一、もう一度人生をやり直す機会があるとするならば。
その時はもっとうまく生きようと思っていた。
もっとうまく人間関係を築き。
もっとうまく自分の身体を鍛え上げ。
もっと幅広い知識を吸収し。
そして、何より、何よりも。
もっともっと、自分を大切にして生きようと。
平穏無事で上手くいく良い人生を送りたいと、そう。
「――それなら例えば、次の自分を二人、用意することはできますか。」
「……?それは、どういう?」
仮にも天使・神の類の相手をして疑問を抱かせる。
ということは、そんな発想をした人間は今までにいなかったのだろうか。
「エージェント、そして転生撲滅委員会と戦い続けることに人生を捧げる僕。
それとは別に、平穏に、人生を満喫する僕。
そうやって意識を、魂を分けることは。
僕という人間を違う世界に複数用意することはできるでしょうか。」
「ああ、なるほどそういうことですか。」
可能ですよ。
二人までならですが。
そう言われて僕は、安心して転生した。
Za00004世界と呼ばれる世界と、Aa00000世界と呼ばれる世界へ。