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En37033世界 ヒューマンドーム 【差異】

 対敵性侵略体兵器【星屑】は、量産品である。

 全ての機体が同じ性能であり、例えば最強戦力と評されるブラックの星屑にだけ何か特別な機能が備わっているというようなことは無い。

 つまり本来、星屑の戦闘能力は機体によって差異は出ず、差異が出るとすればそれはそのまま搭乗者の能力が反映されているといっていい。

 もっとも生身の戦闘能力が高いことが、イコール星屑の戦闘能力が高いということなるわけでもないらしいのだが。


 もう一度戻るが、星屑は量産品である。

 つまり、初期の状態ではどの機体に誰が登場しているのかが分かりにくい。

 それは敵性侵略体との乱戦にもつれこんだときに、その場での判断が鈍る可能性があるということだ。


 よって、各種機体にはカラーリングが施されている。

 当然、レッドの乗る機体は赤色、ブルーの乗る機体は青色、イエローの乗る機体は黄色といった具合に。

 実は適応者の中には、この判別のために髪色を染めたメンバーもいるのだとか。



「待ち構えられていたなんて聞いたから、もっと最悪の状況を想定してた。

 けれど、どうやら偵察の一体だけだったみたい。よかったね。」



 つまり、この白のカラーリングの機体の搭乗者はホワイト。

 ホワイトこそが今まさに、星屑専用サイズの銃を用いて僕を救ってくれたのだ。



「ありがとう、本当に助かったよ。

 おかしいな、痛覚がないっていうのは聞いた覚えがないよ。

 これでも真面目に説明は聞いていたはずなんだけど。」


「そう。じゃあ、ソネムラ司令官が伝え忘れていたのかも。

 忙しすぎるのももちろんだろうけど、あの人あれでいてそそっかしいところがある。」



 敵性侵略体の亡骸から振動剣を取り戻した後、僕の灰色の機体は白色の機体へと向き直る。

 改めて見ると、白色の機体は敵性侵略体とよく似ている。

 パワードスーツとしての機能を保つため、腕や足に指としての可動域が配置されているといった差異ももちろん多いのだが、純白とは呼べないくすんだ白とでもいうべき地の色はまさにそのものだ。

 敵性侵略体の一部といったサンプルを使って作られた兵器こそが、この星屑だということを再認識させられる。


 と、ここで通信が入った。



「こちらブルー。地点Cにてイエロー、ブラウンと合流後、こちらを認識した敵性侵略体5体と交戦中。

 現状として対応できてはいるものの、可能性として敵援軍が予想されます。

 皆さん、早急な合流をお願いします。」



 地点Cは、ここからだと微妙な距離だ。

 決して遠くはないが、すぐに駆け付けられる地点でもない。



「ホワイト、急ごう。」



 それでも出来る限り早く駆け付けたい。

 やはりアイは心配だし、こちらも襲撃される可能性がある以上すぐにでも合流すべきだ。

 僕の近接戦闘にはまだ不安が残るし、ホワイトは遠距離戦を得意としている分接近戦が得意でない。


 僕らは並走する形を取る。


 向かう先は地点Cだが、このペースだとまだ約5分ほどの時間がかかる。

 当然それはホワイトも知るところで、彼女はこの5分を僕に対するレクチャーの時間にしようと考えたようだった。



「グレイ、敵性侵略体が人語を発するのは知ってた?」


「うん、それはちゃんと聞いてたよ。

 発しはするけれど、話が通じるとは決して思ってはいけないっていうのも聞いた。」


「そう。

 振動剣の取り扱いの注意点は大丈夫?」


「敵性侵略体を切り裂くことができるということは、逆に星屑を切り裂いてしまうこともできる。

 決して力を利用されないように……本当に、さっきはありがとう。」



 こんな調子で、ホワイトは僕に話題を振ってくれる。

 自己紹介の時から口数の少ない人だと思っていたが、こうやって新人である僕の面倒を見ようとしてくれるのは純粋にうれしい。



「ホワイト、僕に色々なことを教えてくれるね。

 なんだか仲間として認めてもらえたみたいで、うれしいよ。」



 適応者との関係は、友好的であるべきだ。だから素直にそう告げる。

 と、一瞬の間。



「そう。でもごめんなさい、たくさん喋るのは仲間として認めたからだなんて、きれいな理由じゃない。

 ……戦場は、家族の仇を討てる場所だから。

 こんな私でも口数が多くなってしまうくらい、感情が高まるの。」



 そう告げたホワイトは、その後口をつぐんでしまった。

 しまった、余計な発言だった。

 そう後悔するも時は既に遅かったが、その後1分も経たないうちに僕たちは地点Cへと到着した。



 そして、目の当たりにする。

 5体どころか数十体はいようかという敵性侵略体の姿を。


 しかしそのほとんどは亡骸であり、今まさに最後の一体がとどめを刺されようとしているところだった。


 ――カラーリング、黒の機体によって。

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