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En37033世界 ヒューマンドーム 【星屑】

「燃える闘魂、星屑レッド!」


「流れる知性、星屑ブルー。」


「煌めく愛嬌、星屑イエロー!!」


「溢れる愛情、星屑ピンク!」


「……尖った沈黙、星屑ホワイト。」


「……敵か味方か、星屑ブラック。」


「新入りその一、星屑ブラウーーーン!!!」


「新入りその二、星屑グレイ!」


「「「「「「「対敵性侵略体兵器【星屑】部隊、これより出撃します!!」」」」」」」



 ワアアアアーーーー!!!

 そんな歓声が巻き起こって、なんだかむず痒い、けれど決して悪くない気分になる。


 対敵性侵略体兵器【星屑】の、命名の由来。

 それは過去、人類が夜空に煌めく星屑のように多く存在し、生命の営みを行っていた頃を思い偲ぶとともに、再び人類の時代を取り戻そうという希望に満ちた意味を持つ。


 ゆえに、こんな風にヒューマンドーム内部にて大々的に広報し、活動する必要があるのだとか。

 この部隊は閉鎖空間の中で、最も強い、そして唯一の人々にとっての希望なのだから。



 ちなみに星屑ブラウンは僕ではなくアイ。

 黒髪だが、強いて言うなら色味が少し茶色がかっているから。

 先の口上からもわかる通り、まさにノリノリである。


 そしてつまるところ、僕が星屑グレイにあたる。

 髪色は完全に黒だが、既にブラックがいるのでやむを得ず、苦肉の策でグレイに。

 ちょっとだけ悲しい。


 加えて、何故星屑グレーではなく星屑グレイなのか。

 それは「……グレーより、グレイの方が貴様には似合っている。」という転移者キムラトウジことブラックの一言によるものだった。


 ……その真意はともかく、グレイの方がグレーよりも語感が良くてカッコいいことは否定できない。



「じゃあ行くよ、みんな。

 それぞれ自分の星屑に乗り込んで。」



 人々へのパフォーマンスの後、格納庫へと移動。

 レッドの支持で、それぞれの星屑へと乗り組む。

 星屑への搭乗は僕もアイも適応検査以来だが、まるで自分の体を動かしているのと同じように馴染む。



「総員、衝撃に備えなさい。

 3、2、1、射出。」



 ソネムラ司令官直々のアナウンスにより、ヒューマンドーム内の開閉式射出口から勢いよく放り出される。


 青い空、白い雲。

 すぐに閉鎖空間の外の景色が、目に映り、そして地表へと着地した。

 万が一の敵性侵略体の待ち伏せに備え、各々の星屑は別々のポイントへと射出される。



「コンニチハ。」



 そしてどうにも僕は運が悪いようで。

 着地し顔を上げると、そこには敵性侵略体。


 身の丈約3m。

 人型ではあるが目や口や鼻、指といった細部を構成するパーツは一切見当たらず、ただただ真っ白で不気味さを覚える。

 なるほど、敵性侵略体としか表現しようがない。



「ドウゾ、シンデクダサイ。」



 どこからどうやって発声しているのか。

 その不気味な生物は、こちらに向かって勢いよく拳を振りぬいた。



「あぶなっ!」



 後ろに飛びのき回避するが、思わず声が漏れる。



「こちらグレイ!射出後、待ち構えられていた敵性侵略体と交戦中!

 どなたか合流をお願いします!」



 すぐさま通信の発信機能を起動。

 応援を求めると同時に、目の前の敵に全神経を集中させる。


 この世界、生身ではなく星屑搭乗という特殊な環境下。

 僕ができることを、ただちに把握せねばならない。

 最低限、敵性侵略体との一対一で生き抜くだけの実力が。

 そしてあわよくば、一対一で最高戦力と評されるブラックに対抗しうる実力が期待される。


 しかし常に最悪の事態は予想しておくべきもの。

 応援の要請は保険だ。

 万が一にも、死ぬことだけは許されない。



「うおおおおお!!」



 自身を滾らせ、昂らせ。

 右腕に起動させた振動剣で目の前の敵を切り裂く。



「アブナイネ。」



 今度はさっきとは逆の構図だ。

 敵性侵略体の方が、後ろに飛びのき回避する。

 ただし、先ほどとは違うことがある。

 それはこちらは剣を持っているということ。


 腕の伸び切る際に、剣を握った手を開く。つまり手から剣が離れて飛んでいく。

 グズッ という音とともに、敵の腹部を剣が貫く。

 が。



「クレルノ?アリガトウ。」



 敵は痛がるそぶりも動きが鈍るそぶりも見せず、両腕で挟むように腹部の振動剣を引き抜いて見せた。

 これは、まずい。

 星屑内部で額から嫌な汗が流れたその時。



 パァン。



 乾いた音が響き、敵性侵略体が崩れ落ちた。



「……もしかして、聞いてなかったの?

 ヤツらには痛覚がない。

 けれど急所は人間と同じ。頭か左胸を破壊されれば、もろく崩れ落ちる。」



 覚えておいて、と直接声をかけてきたのは白色の星屑。

 彼女、ホワイトは自己紹介の時よりも、よっぽど饒舌だった。


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