En37033世界 ヒューマンドーム 【紹介】
なんとなく薄暗い部屋。
狭くはないが、広くもない
シンプルでいて、いかにも豪華そうな長机と椅子。
椅子の数は左右に4脚ずつと中央奥に1脚の合計9脚で、僕とアイが入室した時には既に7人が着席していた。
なんというか、まさに定番な強い奴らの幹部会、というような絵面に思わず笑いだしそうになる。
「どうぞ、お二人とも空いている席に座ってください。」
中央奥の壮年の男性に促され、僕たちは残された席に座る。
この厳格な雰囲気を醸し出す男性が対敵性侵略体における責任者、いわば司令官であるということは、星屑への適応検査の時点で聞いていたことだ。
名前はソネムラというらしい。
つまり、残る6人の内の唯一の男が転移者のキムラトウジ。
他がこの世界出身の星屑適応者というわけだ。わかりやすくていい。
「身構えなくてもいいですよ。
今回お呼びしたのは、本当にただの顔合わせのためです。
無論、皆さんの交友関係についてまで口を出す気などありませんが、このヒューマンドームに来たばかりのお二人にとって、他の適応者と関わり合うきっかけとなればという思いのものなのです。」
というわけで、と。
促され、適応者の自己紹介が始まる。
緊張感のあまりない和やかな雰囲気が流れているのは、おそらくこのソネムラ司令の態度と気配りのおかげだろう。
他のメンバーにもあらかじめ話は通っていたようで、スムーズな流れで自己紹介が進む。
「オホン、まずはアタシからだね。
私の名前はヴェルディ。こう見えて星屑の戦闘歴が一番長い!
六人分の顔と名前を一気に覚えるのは大変だろうから、私のことはレッドと呼んでくれたまえ!」
一人目。
赤髪ポニーテールの少女。
そう、女性というより少女だ。
一番星屑の戦闘歴が長いということだが、どう高く見積もっても年齢はせいぜい15歳というところだろう。
しかし、レッド?
おそらく愛称なのだろうが、名前となんの関連もなくて少し困惑する。
「はい、次は私ですね。
名前はグレイス。星屑での戦闘は正直なところ得意ではありませんが、作戦の立案能力といった知能面では役立っていると自負しています。
レッドに続いて、ブルーとお呼びください。」
二人目。
青髪の長身女性。
僕よりも身長が高く知的なメガネが似合っており、Aa世界風にいうなればバリバリ仕事のできるオフィスレディといった印象を受ける。
年齢は25歳前後といったところか。
二人目がブルー。
ああ、なるほど、髪色が愛称か。たしかにそれだと覚えやすい。
「うっす!次は自分っす!
自分、ガヴォットと言いますが、呼ぶときはイエローと呼んでください!
この六人の中では自分が一番、星屑歴の浅い若輩者っすけど、全力でがんばってるっす!
ちなみにもちろん好きな食べものはカレーっす!」
三人目。
言動は体育会系で、身長も年齢も大体僕と同じくらいだろう。
短く揃えられた金髪は、人懐っこそうな笑顔と相まって快活な印象を与えてくる。
カレーが好きな、イエロー。
ここまでくれば、愛称の意味もさすがに分かってきた。
「じゃー次はエリーの番!
エリーゼって言うからエリーって呼んでね……じゃなかった、ピンクって呼んでねー。
かわいいものが好きで、戦いなんかホントはしたくないんだけどそうも言ってられないからね。
一緒に頑張ろー!よろしくね!」
四人目。
ピンク色のポニーテール、かわいい物好き、低身長、八重歯、だいたい15歳くらい。
いかにも女の子です!という感じのまさしく女子。
ここでピンク。ただし紅一点ではないが。
間違いない。意図してか意図せずか……いやまあ十中八九、意図しているんだろうけど。
ヒーローだ、こいつら。
「現地組最後。
カノン。呼ぶならホワイトで。
よろしく。」
五人目。
白髪、口数少なし。歳は20歳ほどか。
背はアイと同じくらいだが、目が隠れそうなほどに長い髪からのぞく表情は無表情で、何を考えているかがわかりにくい。
ホワイト。
レッド、ブルー、イエロー、ピンク、ホワイト。
うん、バランスは悪くない。
そして最後に、転生者キムラトウジの番だ。
これまでの流れと髪色から推測するに、敵か味方かブラック!といったところだろう。
「……フン。
オレはあまり貴様らと慣れ合う気は無い。
だが、どうしても呼ぶことが必要な時は、ブラックと呼べ。」
「まあ、こんな感じでブラックは素直じゃないんだよー。
ちなみにもう聞いてるかもだけど、あなたたちと同じくブラックも転移者なの。
星屑の扱いがダントツで上手くって、間違いなく現時点での最強戦力なんだー。」
本人の紹介の直後に、ピンクからの補足がある。
……アイ、気持ちは分かるけど、表情には出すんじゃあない。
コイツ、クールキャラがホワイトと被ってません?みたいな怪訝な目でこっちを見るな。
「以上が、現戦力の星屑適応者6人の紹介となります。
できれば、仲良くしてやってくださいね。」
現戦力の6人……?
「あの、実質的にこの6人だけで、敵性侵略体と戦っているんですか?」
「そのとおりです。」
即答。
本当に限られた人数だけとは聞いていたけれど、6人か。
……まあ、少ない方がこちらとしても都合がいいか。
そんな感想が、真っ先に出た。