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Ma11703世界

 

 まず目につくのは巨大な塔のような建物だ。


 大きいなんてもんじゃあない、それこそ確かめられるわけはないけれど、人間を縦に百人積んだよりも大きいんじゃないのか?なんて建物が、いくつも並んでいる。

 また、その建物の一つ一つが普通のビルとは違って円や球やあるいは何かの像のような、とても機能的とは思えない構造をしている。


 そして、空中には面白いものが。

 そう、面白いモノが見える。

 空に浮かぶパイプと、その中を走るタイヤのないクルマ。

 この世界、これだけでもう面白い。


 にも、関わらず。



「うおお、このままだと魔術塾に遅れるぞ、やっべえ!」


「言われんでもわかっとるわ!おまえが遅刻するだろ!!」


「ごめんって!!」



 髪の燃えるように赤い者。澄んだ青色の眼を持つ者。

 二人の少年が、魔法書的な物を抱えながら駆け抜けていく。


 よくよく目を凝らす必要もなく、この世界に住む人々は雑多だ。

 いわゆるオーソドックスなただの人間もいれば、いわゆるかわいらしい、ピコピコと動くネコミミのある者もいるし、目元まで隠す帽子に体のシルエットを覆う黒一色のマントを羽織るようなよくよく姿のわからない者もいる。


 その誰も彼もが顔の作りも違い、それでいて皆が楽しそうだ。


 黒光りする、いかにも重そうな鎧を身につける者。

 刀とおぼしきモノを腰にぶら下げる者に、遊び人とでもいうのだろうか、道化師のような格好をする者。


 みんながみんな、人種諸々関係なしに、交流を深めているようなのだ。



 大抵の場合、世界というものはある程度似通った種類のようなものがある。

 そりゃあそうだ、魔法が使える世界ならば科学技術は発展しないし、その逆もまた然り。

 そういうような根本的な問題があるのだろう、普通は今回のような世界の在り方にはならない。

 建造物を見ただけで分かるおそろしく高度な技術と、ファンタジー世界に迷い込んだとさえ思えるような人々の調和。


 この世界は、面白そうだ。わくわくする。



「……ああー!!

 これだから世界線移動はやめらんねえー!!!」



 エージェントDd515。

 趣味は世界線移動。

 エージェントとしての仕事はもはや生きがい。

 転生者や転移者を殺すのはちょっとだけかわいそうだけど、それだけだ。



 これまでにも、既にたくさんの面白い世界を回ってきた。

 一般的な人間の寿命が24時間の世界。

 命を持たないはずの物にも意識が存在する世界。

 岩石が食物連鎖の頂点に立つ世界。

 人々が文字通り手を取り合う世界。

 植物が人間を家畜として飼う世界。

 生まれながらに一つだけ願いをかなえてもらうことのできる世界。

 魔王と勇者の存在する世界。

 天使と悪魔が争う世界。

 音楽を武器に革命を起こす世界。

 機械が延々と星を作り出す世界。

 甘いものこそすべての世界。


 他にもたくさんあって、それぞれ面白くない世界なんてものはなかった。



 でも、まだ足りない。

 まだまだ足りない。

 まだまだまだまだ足りないのだ。


 もっとたくさんの世界で楽しみたいのだ。

 もっとたくさんの世界の人と関わりたいのだ。

 もっとたくさんの冒険がしたいのだ。

 もっとたくさんのロマンスがしたいのだ。

 もっとたくさんの、もっとたくさんの、もっとたくさんの!



「さあ!今回の世界も、たくさんたくさん楽しませてくれ!!」



 人の目なんか憚らず。

 そう、叫んだ。


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