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En37033世界 ヒューマンドーム 【転移】

 この世界の人類の敵を「宇宙人」ではなく「敵性侵略体」と呼ぶのは、単純にヤツらが本当に宇宙から来たのかどうかわからないからだそうだ。


 宇宙からか、空からか、海からか、地中からか。

 それすらもわからないほどに唐突に地表に現れたヤツらが、全人類の99%を死に追いやるのにそうそう時間はかからなかった。



 そんな敵性侵略体の侵攻を逃れ、生き残った人々が行き着く先がここ、ヒューマンドーム。


 もともとは超大規模の核シェルターだかなんだかといった構想のもと作られていたものであり、町程度の広さがある。

 またその中には極めて高度な研究施設も存在し、当然のように対敵性侵略体兵器が開発された。

 敵性侵略体の一部といったサンプルを使って、である。



 そして研究の末に出来上がったのが、対敵性侵略体兵器【星屑】。


 敵性侵略体に対抗しうる、超特製のパワードスーツであり、極めて少数の限られた「女性のみが着用を可能とする」兵器である。


 ただし。



「ん……。どこだ、ここ?」



 異世界より、ヒューマンドーム内に転移した男。

 キムラ トウジ。


 彼だけは、男でありながら対敵性侵略体兵器に適応することができるという。




 ---




 以上のこの世界についての重要な情報が、僕自身の記憶として脳裏に浮かんでくる。


 あらためて、この「肉体に添える」というシステムは本当に便利だ。

 転生撲滅委員会のエージェントが任務にあたる際、事前に収集されたその世界に関する情報は、現地の肉体に記憶として添えられる。


 世界によっては情報の収集が困難な場合があり、またその情報量にも差があるために常に楽観視はできないが、今回のように情報が詳しく入っている場合は任務が比較的ラクになる。


 あくまでも比較的に、だが。



「ところでなんですけど。」


「ん?」


「転生撲滅委員会って、転生だけじゃなくて転移についても取り扱うんですね。」


「まあ、結局のところ個々の世界への歪な干渉を正すことが委員会の目的っていうことだからね。

 転移も転生も歪な干渉である以上、ほぼ同列に扱われてるようなもんだよ。」


「でも、じゃあなんで転生撲滅委員会っていうんですかね?」


「転移及び転生撲滅委員会。

 そんな案も設立当初にはあったらしいよ。」


「え、それでいいじゃないですか。

 なんでその案ボツになったんです?」


「語呂が悪いから。」


「ええー……」


「そんなもんだよ。

 それに、語呂っていうのは案外馬鹿にできないもんさ。

 ――対敵性侵略体兵器【星屑】。

 なかなか語呂がよくて、なんだか格好よかったり、強そうに思えてこない?」



 僕ことエージェントAa004と、エージェントIh014――この世界ではヨツヤ シロウとエイチ アイと名乗る――は、全長3mほどの人形のような、甲冑のような、武骨なパワードスーツを前にしていた。



「……正直なところ、かっこいいです。ワクワクします。」



 このワクワク感は男の子特有のものかと少し心配してたが、どうやらアイにも当てはまるようだ。

 言葉の通り、星屑を見上げる表情には期待の色がはっきりと見える。



「これから僕たちはこれに乗って、敵性侵略体とやらと戦うわけだ。」


「そこでどうにか隙を見つけて、キムラトウジを……ってわけですね。」


「ん。そういうことだね。」



 僕ら二人は今回、異世界からの転移者ということになっている。


 というのもキムラトウジという転移者の前例があること、そのキムラが対敵性侵略体兵器に適応していることを踏まえて、転移者と名乗ればおそらく好待遇で迎えられるだろうという目論見があった。

 またヒューマンドームという特殊な環境のため、突然閉鎖空間に現れてこの世界の住人だと言い張るのが非常に困難であることも関係している。



 結論として、これは非常にうまくいった。

 目論見通りに好待遇で迎え入れられ、あわよくばとの期待のもと、対敵性侵略体兵器の適応検査を受けた。

 その結果、僕とアイともに、星屑に対する適性があったのである。



「それじゃあアイ、そろそろ呼び出された時間みたいだし、行こうか。」


「はい、ご対面ですね。

 転移者と、他の適応者と。」



 支給された腕時計で時間を確認しながら、パワードスーツを背にする。


 ここから、この世界での僕たちの任務が本格的に始まるのだ。

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