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エージェントIh030
――それから随分と時間が流れた。
けれど今でも目を瞑れば、まるで昨日のことのように思い出すことができる。
オレの師匠の最後の雄姿と、それまでに学んだ教えの数々を。
もう己の無力を嘆くだけの、あの頃の弱い自分はいない。
オレが、オレたちこそが、次代の転生撲滅委員会を引っ張っていくエージェントなのだから。
師匠と同じにはなれないけれど、同じようにあろうとすることはできる。
今もどこかでオレの姿を見てくれているのではないかなんて、少しロマンチックなことも考える。
ただ、過去に生きることは、思い出に縋ることはしない。
それはあの人の教えに反するだろうから。
さあ、目を開けよう。
いつまでも自分の内に浸っていては、いけないから。