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「――さん、――さん。」



 声が聞こえる。

 遠くから響くような声が。



「――うさん、お――さん!」



 その声は次第に大きく、いや違う、近づくようにはっきりと聞こえるようになってくる。



「ああもう!お父さんってば!!

 もうとっくに朝だよ!!」



 もしかすると、その言葉は俺に向けられているのだろうか。

 荒げられた声に反応するように上体を起こす。


 目を覚ましたのは柔らかく温かいベッドの上。

 大人が二人、子どもなら四人は横になれそうな大きなベッドの上で、未だぼやけた頭と視界を晴らそうと目をこする。



「はあ。お父さん、やっと起きた?

 今日は遊園地に連れて行ってくれるって、約束してたじゃんか。

 オレ、もうご飯も食べたしいつでも出発できるから、お父さんの準備ができたら声かけてよ!」



 呆れたような顔でそう告げた少女は小走りで寝室から出ていった。

 この寝室は二階にあたるのだろう、とてとてとそのまま階段を下る足音が聞こえる。

 少女、そう、まだ小学生くらいの女の子だ。

 名前は、そうだ、憶えている、みちるだ。

 幸せに満ちた人生を送ってほしいという願いを込めて、俺が名づけた名前だ。



「ってぇ……。なんか頭痛ぇなあ。」



 なんだかやけに痛む頭を押さえながらも、よろよろと立ち上がり階段を降りる。

 未だに思考には靄がかかったような違和感があるが、寝起きの気だるさが取れるころにはきっと思考回路もはっきりすることだろう。



「あなた、おはよう。

 珍しく遅かったわね。」



 一階に降りると、三人で暮らすにはほど良い大きさのリビングが広がる。

 パンに野菜スープにスクランブルエッグ。

 冷めていないところを見ると、俺が起きたことを知って温めなおしてくれていたのかもしれない。

 机の上には俺用の朝食が既に置いてあって、美人だが小柄な金髪の女性……いや違う、俺の妻が優しく声をかけてくれた。



「あ、あれ?

 おまえ、心臓病はどうした……?

 先天性の、たしか大動脈弁?の閉鎖不全症だとかで、手術が必要で……それで、失敗して――」


「なに、夢でも見たの?

 手術に失敗したのなら、今ここに私がいるはずがないじゃない。」


「そ、そうか?

 いや、そうだよな、そりゃそうだ。

 ははは、悪い。なんか俺、今日は起きた時から頭に靄がかかったみたいでな。」


「お仕事で毎日お疲れですものね。

 でも、ピシっとして準備しないと、あの子が拗ねるわよ。

 昨日の夜からとっても楽しみにしていたんですもの。」


「そうだな。早く準備しないとな。」



 いつも俺が座る席に着き、いただきますと声をかけてから食事に手を付ける。

 準備ができたら声をかけてと言っておきながら、テレビの横でちらちらと俺が食事を済ませ準備に取り掛かるのを待ちわびる満を、微笑ましく思いながらも朝食を味わう。



「ああ、そういえばあなた。この前学校の個人懇談会があって。

 担任の先生がおっしゃるには今はアニメや漫画・ドラマの影響で、自分のことをオレって呼ぶ女の子も小学生から高校生の時期には一定数いるものなんですって。」


「だから言ったろ?心配するほどのことじゃないって。

 一人称がオレなだけで、性同一性障害なんじゃないかって心配しすぎだ。

 それにもしそうだったとしても、満が満であることには何の変わりも無い。」


「もう!

 お父さんお母さん、早くしてよ!!」



 怒られて、俺たちは顔を見合わせて軽く笑う。

 これ以上待たせると、我らが愛娘をさらに怒らせてしまいそうだ。



「ごちそうさま。今日も美味しかったよ。」


「はーい。

 洗い物はしておくから、その分早く準備してあげてね。」



 その言葉に甘え、寝間着から着替えて歯を磨く。

 さてと、早く身支度を済ませて、遊園地へ出かけないといけないな。



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