傍白 四
重い。重い一撃だった。
拳も、言葉も、そのどちらもがあまりにも重い。
幸いにも即死は免れたが身体は悲鳴をあげ、震えが止まらない。
そして正体を知ってなお許す気は無いというエージェントAa015の叫びもまた、突き刺さる。
可能なことであれば、正体を突き止められる間もなく息の根を止めたかった。
最も心を許した仲間の内の一人であったからこそ、何も知らずに安らかに眠ってほしかった。
恨み・憎しみなど向けられずに、屠ってやりたかった。
……などと言うのは、分かっている、すべて傲慢な、自分にとってのみ都合の良い理想論だ。
これは、救済だ。
救うべき相手はエージェント。
それは間違いない。
しかしそれを口で説明したところで、到底彼らを納得させられるとは思えない。
だから、どれだけ敵意を殺意を憎しみを恨みを向けられようとも。
彼らの幸福を、苦しみからの脱却を、心の底から願いながら剣を振るう。
これ以上茨の道を歩むことがないようにと祈りながら、命を刈り取る。
それしか、できることはないのだ。
さあ、立ち上がれ、己が身体。
どうにか彼らを、救ってみせろ。