Aa00056世界 日国 【所見】
出席番号1上田 夏樹
10歳にしては少し落ち着きがない。
テストの点が軒並み低く、低学力。
学習内容に対して理解していないふりではなく、理解できていない様子。
可能性小。
出席番号2上野 怜
大人に怯える傾向がみられる。
ただし子ども同士の中では生き生きとしており、その他学習面・生活面ともに特筆すべき点は無い。
反応も年相応と思われる。
可能性小。
出席番号3梅田 大介
文武両道、非常に優秀である。
言葉遣い等も礼儀正しいが、家や習い事といった自分のことを聞いてほしがる年相応な面が見られる。
可能性中。
出席番号4江口 幸太郎
生活面に難あり。現在不登校。
前担任の顔面を殴り、教室の窓ガラスを割った前例がある。
家庭環境に複雑さが見られ、不安定な精神もその表れである。
愛情に飢えている様子。
可能性極小。
出席番号5大月 海正
学習面では非常に優秀だが、運動面に課題あり。
また本人もそのことにコンプレックスを感じているようであり、体育の授業中に泣き出してしまうことがある。
可能性小。
出席番号6金田 大吾
非常に消極的。
休み時間にも教室で本を読むことが多いが、一方で遊びに誘われた際には目を輝かせてついていく。
スピーチの類が苦手で、アニメのモケポンが大好き。
可能性小。
出席番号7川崎 颯太
よく言えばやんちゃ、悪く言えば暴力的。
カッとなりやすく、自分から手を出してしまう場面が多々見られる。
しかし理由なく暴力を振るうことは無く、根は純真。
可能性極小。
出席番号8小島 舞子
感情が顔に出ず、考えていることが非常に読みにくい。
ただし物事に無関心というわけではなく、一定の反応は見られる。
学力は高いが交友関係が非常に狭い。
可能性中。
出席番号9杉 るい
社交的、子ども同士の輪にすぐに馴染める。
特に算数のテストの点が低く、低学力。
四則演算の類に非常に弱く、明らかに理解できていない様子。
可能性小。
出席番号10墨田 ゆり子
女子グループのリーダー的存在。
他の子どもにいじわるをすることがたびたび見られる。
典型的な年相応のボス的な立ち位置だが、それにしても学級の中での権力は強い。
低学年時から、指導事案が何件か挙がっている。
可能性中。
出席番号11竹中 美音
取り巻き気質。
自分に危害が及ばないように、強い者の側にいる。
流されやすく、自分の意見をあまり持たない。
可能性小。
出席番号12田中 拓也
大人びた言動・行動が見られる。
時に子ども同士のかかわりの中で戸惑いが見られる。
学力は非常に高く、基本的に全教科で常に満点を取るが、たまにまるでごまかす様に凡ミスで満点を逃す。
こちらに対し、尊敬のようなまなざしを向けることがある。
可能性極大。
出席番号13辻 正人
落ち着きがない。
授業中の立ち歩きやエスケープも見られる。
集団行動に苦手意識を覚えている様子であり、一人になれる場所を好む。
可能性小。
出席番号14仲谷 夢
髪を染め、耳にはピアスを開けている。
母はピアスは本人の意思であるとのことだが、夢自身はそのことに対して肯定も否定もしない。
ネグレクト傾向。
無気力で、焦点の合わない目をすることが多々ある。
可能性極小。
出席番号15能登 望
様々な物事に対して興味を示しやすい。
しかし同時に飽きやすく、結果として低学力。
母が過干渉の傾向あり。
可能性小。
出席番号16野村 ちか
こだわりが強く、自分の番号や席順で癇癪を起こすことがある。
一方で人懐っこい性格であり、交友関係は広い。
泣き虫。
可能性極小。
出席番号17久井 健二
優等生を絵に描いたよう。
両親が受験を視野に入れており、本人もそのつもり。
強いて言うなら流されやすいが、自分の意見を押し通す強さも見られる。
可能性中。
出席番号18平中 香穗
取り巻き気質。
自分に危害が及ばないように、強い者の側にいる。
ただし竹中と異なり自己主張が見られ、時に仲裁に入ることもある。
可能性中。
出席番号19深瀬 凌
クラスの中心的人物。
女子の好きな男の子ランキング1位。
社交性があり、大人にもうまく取り入る。
一方でどこか抜けたところも見られる。
可能性大。
出席番号20山口 秀人
病弱であり、あまり学校に来れていない現状。
それゆえ学校のことが大好きな様子であり、授業も例外ではない。
言動はまさに年相応。
可能性小。
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「ごめんな、田中。」
その言葉は、本心だった。
ごめんな田中。
もう一度心の中でつぶやく。
僕らは、教師と生徒。
けれど同時に、転生撲滅委員会のエージェントと転生者なんだ。
本当にただの四谷四郎とただの田中拓也だったならば。
お互いにこんな気持ちになることは無かったろうに。
「先生、大丈夫ですか……?」
先生と呼ばれて、びくりとしてしまう。
声の主がIh014だということは、ちゃんとわかっているのに。
「うん、大丈夫。
あとはもう、数日中の滞在猶予が切れるのを待つだけだよ。」
殺害現場は通学路。
決行は金曜日の部活動終了後、薄暗い下校時。
死体の処理は既に完了。
保護者には事前にうまいこと話をつけてあり、連休最終日の夜まで帰らないことになっている。
「そうじゃなくて……いえ、何でもないです。」
分かっている。
さっきのが、そんな意味の「大丈夫ですか」ではないことはわかっている。
転生者は、一人の例外もなく撲滅する。
それを誓ったのは僕自身だ。
それでもまだ、今回のように揺らいでしまうことがある。
ベテランだなんだと言いながら、結局は僕もまだ、未熟者なのだろう。
「ごめん。
情けない姿、見せちゃったね。」
「いえ。
私は少なくとも、先生がそういう人であってくれて、うれしいです。」
……ありがとう。
これも、心の中だけで、呟いた。