He83245世界 英雄帝国 【改造】
「ほっほ、面会ですよ。ほっほっほ。」
「よう。久しぶり……でもねえな。
事情も話さず不意を打つ形で悪かったとは思っているんだが、反省はしてねえんだわ。
改造手術を受ければ俺たちの目的が達成しやすくなるんだ、相当しんどいだろうが我慢してくれや。」
「師匠。アンタ、俺たちがクソしんどい思いしたんだからアイツらにもこの苦痛を味わってもらわんと不公平だ、とかいう子どもみたいなこと言ってたじゃねーか。」
「おいおい、本人の前でそれを言うなよ。
……まあ、ともかく今は耐えてくれ。面会にはこれからもちょくちょく来るからな。
喋れるようになったら文句でも愚痴でもちゃんと聞くからさ。」
こういったやりとりが改造専用集中治療室の中、手術後ようやく目覚めた僕の、生命維持装置がところ狭しと並べられているベッド横で行われた。
そこからマトモに会話ができるようになるまでに二日、ベッドから起き上がって歩くことができるのにはさらに三日、なんとか自力で歩行し最低限の活動ができるようになるには合計で二週間を要した。
改造手術というのはそれだけ心身ともに莫大な負担をかけるもので、特に手術後二日は全身に発狂しそうなほどの苦痛を感じたが、時間が経つごとにいくらかマシにはなっていった。
しかし改造手術だなんて夢の広がりそうなワードに反して実態は世知辛いものだ。
「ふう、ようやく身体の調子が戻ってきたよ。」
「おう、長いことリハビリご苦労さん。」
「ところでAa……じゃなかった、イガラシ。流石に一発、殴っていいかな。」
「ダメ。改造手術を受けさせたのだって、ちゃんと合理的だろ?」
「まあ、そうなんだけどさ。それでもやっぱりやり場のない感情なんて嫌だから、殴っとくよ。」
「おい冗談だろ……いってぇ!」
戦友、エージェントAa015ことイガラシ。
体調がようやく全快となり、こうやって秘密基地内部のロビーで彼と話している今。
不意打ちの改造手術から実に一ヶ月が経過していた。
「私も一発、殴らせてもらいたいです。」
「あ、じゃあオレも。」
「おいこら。アイはともかくサティ、おめーは完全に関係ないだろ。なに便乗しようとしてんだ。」
会話に割り込んでくるのはアイともう一人、エージェントIh30ことサティ。
彼女は前の合同任務のこともあってずいぶんとアイと打ち解けていた。
これまでに耳に入ってきた話をつなぎ合わせると、どうもアイを元気づけるために改造専用集中治療室へと頻繁に面会に来てくれていたようだ。
「ほっほっほ、みなさん賑やかですな。」
そんな僕たち4人のもとに現れた老人、ダイジョウ。
彼は僕たちに用があったらしく、わざわざ基地内を探して歩き回っていたらしい。
基地内で改造手術の第一人者であるダイジョウは常に白衣を身にまとう、白髪を散らかしたような頭に分厚い丸眼鏡のいかにもなマッドサイエンティストだ。
彼は悪の組織のナンバー2らしい。
ちなみに僕たちが所属するこの悪の組織、正式名称は無い。
というのもクロノ総帥いわく、「人々が我が組織を脅威と認識すれば、その時は畏怖の念を持って勝手に名付けてくれるだろう。」とのことで、崇高だかそうじゃないんだか僕にはよくわからない。
ただ一つ確かなことは、未だこの悪の組織には名前がないこと。
それはつまり、未だこの組織は人々に脅威として認識されていないということでもある。
……そりゃあそうだ。
なにせこの組織の主戦力はなんと改造人間。
しかしその肝心の改造人間は総勢4人。つまり僕たちしかいないのだから。
「ほっほ。しかしみなさんには感謝しっぱなしですよ。
私は自身の改造手術に絶対の自信を持っているのですが、改造手術を受けたいという骨のあるモルモッ……有望な被験者が今まで現れなかったもので。」
「そんなことより博士、オレたちに何の用?」
ダイジョウ博士の言葉をぶつ切りにしてサティが答える。
ちなみに彼女がこういうぶっきらぼうな物言いになるのは別に怒っているわけでもダイジョウ博士が嫌いなわけでもなく、ただすこしせっかちな性格をしているだけだということは最近分かった。
そして博士は嫌な顔一つせず、相変わらず笑い癖を見せながら口を開く。
「ほっほっほ。みなさんようやく体調も万全となったようなので。
いよいよ改造手術の成果を皆で分かち合いたいと思いましてな。ほっほっほっほ!」
改造手術の成果。
つまりそれは仮にもヒトでありながらヒトならざるものの力を手に入れた僕たちの、それぞれの能力のお披露目会をするということだった。




