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He83245世界 英雄帝国 【樹海】

 僕たちがいた場所は樹海。

 それも鬱蒼とした中に放り込まれたが最後、二度と生きては出られないと言われるほど有名な樹海だったらしい。


 そのはずだったのだが、老人に連れられた僕たちは悪の組織の秘密基地に来ていた。

 難しい話ではない。人目を忍ぶために、そして電波といったサーチの類を避けるために樹海の中に作られたという話で、正確に言うなら基地内とはいえ僕たちはまだ樹海の中にいる。

 そしてここは比喩でも何でもなく、『悪の組織の秘密基地』だった。



「まずはこちらにおいでください。ほっほ。」



 謁見の間という怪しい装飾品の立ち並ぶいかにもな部屋に通されると、これまたいかにも悪の組織の親玉ですという性格悪そうなインテリ系メガネ男がきらびやかな椅子に座っている。

 その側にはおつきの男女が二人。

 

 一人はビシッとしようとしていることは伝わってくるのだが、なにぶん体格のこともあって明らかにスーツに着られている感のあるIh030。

 もう一人は短髪長身黒スーツ、顎には髭を蓄えた悪役の似合いそうな男、エージェントAa015。

 ちなみに実はこの男、転生撲滅委員会に所属するエージェントの中で今や3番目に古いコードネームを冠するのだ。

 普段のヘラヘラとしたおよそ真面目とは言いようのない態度とは裏腹に、一度スイッチを入れると恐ろしく優秀な仕事ぶりを発揮するのだが、いかんせんスイッチが入りにくい。



「……。」



 そんな彼は誰にも気づかれないようにタイミングを伺い、僕に向かってウインクを飛ばしてきた。

 相変わらずお茶目な男だ。

 ただ、隣のサティには相変わらずジトリとした目で見られてはいるが。



「さて、我が悪の組織の秘密基地へようこそいらっしゃいました。

 聞くところによるとあなたたちはこちら、ワタクシの側に控えるイガラシの仲間だということですが。」


「はい、その通りです。僕、いえ、私はフォーと申します。そしてこちらは私と行動を共にしております、アデライーデ。」


「アデライーデです。どうぞお知りおきください。」


「これはこれはご丁寧に。そしてこちらからは名乗らず失礼しましたね。

 ワタクシはクロノ。この悪の組織の総帥です。」



 イガラシとはエージェントAa015の愛用する名前である。

 この世界のことは肉体に添えてあったことで何も語られずともある程度の知識があるが、今置かれている現状を理解するにはそうはいかない。

 まずはこの場の会話を無難に乗り切ってから、詳しいことは後でAa015、イガラシに聞くとしよう。



「さて、単刀直入に聞きますが、あなた方は我が組織に入り、革命を起こすという覚悟がありますか。」


「はい。」


「は、はい。」



 僕の即答に、若干の迷いがありながらもアイが追従した。

 おそらくはこの自称悪の組織、国家転覆を狙うというところにイガラシに目を付けられたのだろう。

 現在、ターゲットである転移者20名は国で保護されているということだ。

 その国そのものを敵にまわすとあらば、どさくさに紛れてどうにかするチャンスも生まれると言うことだろう。



「嬉しい限りですね。では早速、改造手術にかかりましょうか。

 たのみましたよ、ダイジョウ。」


「ほっほっほ、お任せあれ。」


「はい……はい?」


「へっ!?」



 さも当然の流れであるかのように言ってのけた悪の総帥クロノに、嬉しそうに頷くダイジョウと呼ばれた僕たちをここへ連れてきた老人。

 僕たちは反射的に返事をした後、動揺を隠せなかった。



「ダイジョーブ、寝ている間に終わりますよ。ほっほ。」



 常に僕たちの側に立っていた老人は即座に注射器らしきモノを取り出し、慣れた手つきで僕たちに打ち付ける。



「ぐ、く。」



 沈んでいく意識、言葉にならない声。

 その視界の端にイガラシ、すなわちエージェントAa015が映る。



「ファーイト。」



 彼は小声でそうつぶやき、やはり僕たちめがけウインクをしてのけた。

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