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6話 添い寝

 

 湖からお城に帰ってきたところで空は赤く染まっていた。


 帰りも使い魔に乗って帰ってきたがアサヒはまだ幼いとの理由で私はイザークと一緒にアマロに乗りアサヒは楽しそうに横について飛んできた。


「アマロ、ありがとうな!戻っていいぞ」


 中庭に戻ってきたイザークが手を足下にかざすと光が集まりアマロは光の中に消えていく。


「使い魔は持ち主が所有してる魔力の空間に滞在させることができる。

 特にアマロはデカいから基本いつも空間の中だ。コトネも手をかざしてアサヒに帰るように念じてみるといい」


 言われるがまま手をかざしアサヒにまた呼ぶときまでお利口にしていてね!と念じると光の中にアサヒは消えていった。


「これが魔法を使うってことなの…?」


「まぁ、だいたいはこんな感じだな」


 かざした手を眺めるがもちろん、手に何か変化があるわけではないので不思議でしょうがない。




 夕飯の後、どうしても一点聞きたいことがあるからと賢者さんを呼び出してもらった。

 通されたのは昨日と同じ部屋でテーブルの上に昨日の書物がそのまま置いてあるのを見ると今後もここが勉強部屋になるってことなのかな?


「お時間を作っていただきありがとうございます。どうですか?あちらに帰ってお変わりになったことなどありませんか?」


 テーブル向かいには昨日と同じ賢者のおじいちゃんがふたり。

(私の心の中で髭の長いおじいちゃんをサンタさん、髭の短いおじいちゃんをカーネルさんと呼んでいる。)


 そして私は…


「何でイザークもいて、しかもいつまで私を膝の上に乗せてるの──!?」


 は、恥ずかしい!!


「今日は一日オフなんだ。それにコトネの事なら俺も知っておかなきゃいけないしな。

 王の膝の上なんてレアだぞ?気にするな!」


「さすがに気にするわ!集中できないからせめて横に座ってて」


 サンタさんもカーネルさんもにこにこ笑ってるだけだし、誰かこの王にツッコミいれる人はいないのかっ!?


 やっとイザークが不満そうな顔をしつつも大人しく横に座ってくれたところで質問をさせていただく。


「ひとつ確認しておきたかったんですが、例えばあちらの世界で寝ている私の睡眠時間とこちらの世界で活動している時間は比例しているんでしょうか?

 昨日は時計を見ていなかったのではっきりと時間を計れませんでしたが、今日はどう考えても滞在時間が半日越えているので気になっています」


 金曜日の夜にこちらに来てからもう12時間以上たっている。

 休みの土日だからいくら寝ていても支障はないが長時間飲まず食わずで本当の身体に不調をきたしてしまっては困る。


「なるほど。お気になさるのはごもっともです。

 コトネ様のように異なる世界からの召喚は実に約7000年ぶりとなり文献も少ないので全てが分かるわけではないのですが…」


 数千年ぶりと聞いていたが7000年も前の事だったなんて!

 この国の歴史は相当古そうだ。


「現在あちらの世界でお休みになっているお体を本体、と仮にお呼びしますが本体と魂を別れさせ別の場所に移動しておりますがあくまでメインは本体となるよう術がかかっております。

 魂はこちらで活動しておりますが、脳や心臓は本体と共にあちらで活動しております。

 例えば本体が第三者に声をかけられて起こされたりする場合は脳が起きると魂も戻るような仕組みになっているかと…

 もしあちらの世界にいらっしゃるコトネ様の身体に何かが起こればそれはそのまま仮の身体にも影響してきます。

 そのお体は見た目だけでなく心身の不調等も反映するようになっておりますゆえ」


「だから昨日はアラームの時間にあっちに戻ったのね。

 じゃあ、本体が喉がかわいたとか、お腹がすいた!ってなって脳が起きようとすれば私は戻るのね?」


 それならあまり心配することはないのかな?とちょっとほっとする。


「逆にこっちの身体の時に気分が悪くなったり髪の毛を切ったりしたら本体に影響するの?」


「おい、俺は髪が長いほうが好みだからな!なるべく伸ばしてくれよ」


 (聞いてないけど…頭の隅にメモはしておいてあげるけど…)


「そこなのですが…仮の身体の変化が本体に影響するのかどうなのかは私共もぜひとも研究させていただきたいところでして…」


 なるほど、そこは分からないのか…。


「そういえばこの指輪はあちらに戻ってもはめたままなんだけれど」


 左手にはめられたイザークからの贈り物を指差す。


「おっと!その指輪は俺様特製だからそのはずだ。コトネの本体とこちらの魂の繋がりを強固にする役割も果たしてるものだから大切にしてくれ」


「ふーん、まぁ髪の毛…は切るとイザークがうるさそうだから止めておくとして、試しに爪でも切ってみようかな?」


「おっ、それならいいんじゃないか?おい!アンナ、爪をいじれるやつ連れてこい!」


「え?自分でパチッと切っちゃおうと思ったんだけど」


「メイドに仕事を与えないと皆暇で困ってしまうからやらせておけ!」


「ではコトネ様爪の件はまたお分かりになりましたらぜひともお教えください!また明日からご説明しきれていない件もお話しさせてください」


 カーネルさんはそう言って嬉しそうに本の山を指さしていた。

 イザークは私の頭を撫でながらじい共はしつこいからな!頑張れよ!と笑っていた





「あー、なんだか疲れたぁぁぁ!」


 あの後メイドさんに爪を綺麗にしてもらってお風呂にも入らせてもらって

(ちなみにお風呂でお体洗います、髪の毛洗いますってメイドさんがついてこようとしたけどそこは丁重にお断りさせてもらった!)

 やっとふかふかのベットにダイブできたのは夜遅くになってから。

 窓の外には元の世界とは比べ物にならないくらい綺麗な星空が広がっている。


 これだけこちらの世界で活動していてもまだ戻る様子がないってことはこの指輪の力ってすごいんだなぁ…

 イザークの角が埋め込まれた指輪を眺める。


 体は充分に疲れてるのになんだか寝付けそうにない。


「この世界に来て驚くことだらけだから無理もないかな」


 ベッドから降りてソファに移動する。

 足下に手をかざして


「アサヒ、出ておいで」


 言いながら頭の中でも祈ると光の中からアサヒが現れた。


「アサヒッ!あー、癒しっっ!寝てた?ごめんねぇ」


 目が半開きのアサヒをなでなでする。ビロードのような肌のさわり心地は最高に気持ちいい。


 ソファに横になると足を曲げて絨毯の上に座るアサヒとちょうど同じ高さになる。


「これなら眠れそう。昔もよく犬のあさひと一緒に寝たのを覚えてるなぁ…」




 ・・・




「っんー」


 部屋が明るくなり目を覚ますとまだ見馴れない天井だった。

 眠ってるうちにあちらに帰ってはいないようだ。


 んー、アサヒ…

 アサヒの頭があったほうに手を伸ばし撫でてみる。


「ん?」


 アサヒのたてがみサラッサラ?

ふと、寝ぼけた私の手のひらを誰かがなぞった。


「なーに、そんなに寂しかったなら俺を呼べばよかったのに」



 サラッサラだったのはイザークの髪の毛だった!


「ちょっと───!!何でいるの?やだ、私ベッドにいる!いつの間にぃ!?」


「可愛い寝顔だったぞ!」


 一発で目が覚めた!


 ベッドの外では心配そうにアサヒがうろうろしている。


 こちらの世界滞在3日目は朝から慌ただしく昨日の話の通り座学をして夕方頃に瞼が重くなり本体のいる世界に帰った。



 ・・・



「土曜日の…朝8時」


 起きてすぐスマホを確認する。言われた通りこちらとあちらの時間はイコールではないようだ。


 そして爪は形が綺麗に整えられピカピカしていた。


「サンタさんとカーネルさんに教えてあげなくちゃ」









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