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23話 ドラゴンの卵奪還作戦.2

「こちらが大使館に使われている建物の図面です」


 そう言うとケヴィンはテーブルの上に大きな用紙を広げた。

 元々大使館の建物は魔界の役所として使っていたものを貸与しているとの事で図面を急いで日本で言う法務局のような施設から借りてきてくれたそうだ。


「正面の門をくぐって右側、平屋の棟がメインの建物です。

 左側の2階建ての建物は現在1階が図書館、2階は多目的ホールとして貸し出しを行っているスペースだそうです。そして左側の建物の奥には倉庫が、右側には名屋があります」


 図面を見る限りでは多目的ホールとして貸し出している施設と倉庫には広さがあるのでもしドラゴンの卵を隠し保管しているとしたらこのどちらかではないかと言う。


「大切なことを聞き忘れたのだけれど、ドラゴンの卵ってどれくらいの大きさなの?」


 私の知っている卵で一番大きいものはダチョウの卵だ。でもドラゴンとなると…もっと大きいのかしら?


「そうだな、まぁ大体これくらいだな。色は真っ白だ。重さは20キロくらいあるからコトネじゃ1度に1つ運ぶのが精一杯ってところだな」


 イザークは自身の胸の前で大きく楕円形の丸をつくって見せる。

 大きなスイカ2個分くらいだろうか。

 そ…そんなに大きな卵が9個も!?


「もしも卵を見つけたら速やかに報告すればいいのね?」

「ああ。そうしてもらえたら後は俺が殴り込みに行くさ」


 殴り込みとは穏やかでないが、本当に卵があるならば強制的に大使館の中に入る手続きをとり即刻騎士団を向かわせるそうだ。


「コトネ様、こちらが急いで作った身分証です。大きな声で言えないものですのが…」


 ケヴィンに渡されたハガキサイズの身分証には"マリア・シールズ"と書いてある。

 紛れもない偽造文書だ。絶対に無くさないようにして終わったら即刻燃やしてしまわなきゃ!!


「イザーク、ケヴィン、ありがとう。」



 ・・・



「コトネ様、馬車の用意ができました」

「はい。今行くわ」


 いよいよ大使館に向けて出発する。

 私は一般的な女性の普段着に着替え、馬車には御者に扮装したケヴィンと騎士団員がついてきてくれる。

 腰に回されたイザークの手をぎゅっと握って「心配しないで」と伝えるといつも通り優しい微笑みを返してくれるが今日は瞳に心配の色が滲んでいる。


 急にこれ以上言葉では言い表せない感情が胸に込み上げてきてとっさにつま先立ちになりイザークの頬に唇を寄せた。


「大丈夫!行ってきます!」


 こんな大胆な事をしたのははじめてだ!恥ずかしさでイザークの顔を覗きこめないまま馬車に乗り込む。


「コトネ、気を付けて!」


 少しイザークの声は元気を取り戻しているように聞こえた。





 クリーム色の建物の前で馬車は止まった。


「コトネ様、着きました。」

「ありがとう。」


 ケヴィンが馬車の扉を開けてくれる。

 大使館はお城に比べたらもちろんこじんまりとした至って普通の施設なのだがこれから行うことを考えると心臓がバクバクして落ち着かない。


「私達はすぐそこの角で待っています。少しでも危ないと感じたらすぐに帰ってきてください」


 ケヴィンも心配してくれている。

 作ってもらった偽の身分証を握りしめ「わかったわ!」と返事をすると心の中で頑張るのよ、私!と気合いを入れていざ大使館へ向かう。



 大使館の門には警備の人が立っていて私の姿を見つけると無言で一瞥する。


「身分証の提示をお願いします。

 …今日はどのようなご用件で?」

「はい。多目的ホールの貸し出しについて伺いたいのですが」


 身分証と私を交互に確認すると笑顔を見せてくれた!全く疑われてはいないようだ!


「では、右の事務所へ入ってカウンターの中にいる者に話しかけてみてください」

「ありがとございます」


 第一関門クリア!

 怪しまれないように笑顔を保ちながらゆっくりと施設へ向かう。



 事務所施設のドアは半分開いていた。

 中は薄暗くひんやりとしている。どうやら来訪者は私だけのようだ。カウンター内にもぱっと見たところ若手スタッフが2人しか見当たらないし、やはり謁見で手薄になっているのかもしれない。

 まっすぐにカウンターへ向かい、近くのスタッフに声をかける。


「すいません、隣の多目的ホールの借り方を伺いたいのですが」

「はい!初めてですね?どのような目的で利用される予定ですか?」


 人の良さそうな男性スタッフだ。こちらもにっこりと笑顔で対応してくれる。


「主人の転勤でこちらに来たばかりなのですが、子供に人間同士のお友だちが欲しくて、母親と子供が集まってレクリエーションをするイベントを開きたいと思っています」

「なるほど!それは良さそうですね。お子さんはおいくつですか?」

「もうすぐ1歳になります」

「そうなんですか、ウチの子供も同じくらいです!ウチの奥さんに話したら喜びそうなイベントです。いいなぁ、ウチも参加させてもらいたいです。やっぱり同じ種族で友達作っておいてほしいですからね。

 これが貸し出し時間と料金表、空きスケジュールです。申し込みはあちらの黄色の用紙を使ってください」


 スタッフの男性はテキパキと申し込みの流れについて書類を出しつつ丁寧に教えてくれる。

 いい人すぎて、実はイベントしたいなんて嘘なんです!期待させてごめんなさい!と言いたくなってしまう。


「ありがとうございます。ホールを見学することはできますか?」

「ええ、大丈夫です。今すぐにご案内できますよ」


「あぁーっ!ちょっと、後ろのあれ大丈夫ですか!?」


 席を立ち上がろうとするスタッフの後ろを指差して大きな声で叫んでみせる!

 ユリアーナの時より演技力は上がっている…かな?

 スタッフが振り返る先の床には水溜りができていて、どんどん床いっぱいに広がっている!


 …って私が魔法で水を出しているだけなのだけれど。

 図面で部屋の奥に給湯室があるのは確認済みなので水漏れが起こっているように装う。


「わっ!水漏れか!?」

「ヤバイ!どんどん広がるぞ」

 カウンター内のスタッフは立ちあがり給湯室を確認する。施設の床には積み上げられた本や段ボールがあるため急いでテーブルの上に避難させている。


「あの、子供を預けていて時間がないので一人でも見てきていいですか?」

「すいません、どうぞ見てきてください!今日はどこも使っていませんが鍵はかかっていませんから!」


 水の対処に大忙しでそれどころではないと言った様子だ。

 私は素直に「ありがとうございます」とお礼をのべるとそそくさとカウンターから離れる。

 もう少し水出します!ごめんなさいっっ!と心の中で謝罪をしながら隣の建物へ移動する。


 それにしても今話をしたスタッフの人はいい人そうだったし本当にドラゴンの卵を盗んだのかしら?と疑問に思ってしまうほどだ。

 もしかしたら今日お城でイザークに謁見している偉い人達が主犯で今いる若いスタッフの人達は何も知らない…?といいな、なんて思いながら隣の施設の扉を開ける。


 1階の図書館には市民の方だろう、ちらほらと本を読んでいる人がいる。奥に見えたゆるやかな螺旋階段を静かにのぼって多目的ホールがある2階へ移動すると人はおらず、広いフロアの先にふたつの扉があった。


 とりあえず手前の扉を開けてみる。

 中はがらんとしていて角に長机と椅子が積み上がっている。窓が大きくて明るい。念のため物入れも開けて確認してみるが狭くイベントで使ったであろう小物が入っているだけだった。


「なんて事ない普通の施設ね」


 続いて隣の部屋の扉も開けてみる。こちらは舞台がありピアノが設置されて椅子が並べられている。小さな音楽会や演劇を行うことができそうだ。

 舞台にかかる天幕の内側、物入れも同じように確認するがこちらにもドラゴンの卵らしきものは見当たらない。

 あとは…今朝見た図面を頭の中で再確認する。

 1階に降りて非常口から出ると倉庫があるはずだ。


「あと怪しいのは倉庫ね…。」


 こちらも確認すべく1階へ戻る。

 今のところスムーズに事が運んでいるので幾分か私の気持ちは軽くなってる!大使館の門をくぐる時はスパイの気分だったけれど今は人間界の本をちょっと読んでみたいなと思うほど余裕ができている。


 図書館のある1階へ戻ってきた。

 非常口は左奥よね…と考えながら歩き出そうとしたその時!



「あのー…」


 背後から声を掛けられた!!


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