22話 ドラゴンの卵奪還作戦.1
最近は魔法の勉強に力を入れている。
自分で言うのもなんだけれどコントロールは上手くなってきてると思うのよね。
今日は庭園の花に雨を降らせるように水を出して水やりを成功させたし!ちなみにちょっと前には失敗して滝のように水を出して土をえぐってしまったので庭師の方に謝り倒していたのでかなりの進歩である!
そのおかげか、アサヒはポニー程の大きさだったのが今は競走馬程に成長した。
これは嬉しいのだけれど…ちょっと残念でもあるけれど…。
「最近休まず勉強に励んでるみたいだが無理していないか?」
このところ夕食後、私の部屋で雑談をするのが日課になっているので魔法のコントロールが上達してきたと報告するとイザークは誉めてくれそして心配もしてくれた。
正直、母の件があってからスケジュールを忙しくなるように埋めてもらっている。
もうあとは時間が解決してくれるのを待つしかないと思うのだけれど、心にぽっかりと空いた穴を忙しく過ごすことで埋めるしか私には方法が見付からず、つい…。
「無理はしていないわよ。ただあまり考えすぎてしまう時間を作りたくないの」
「そうか…適度に休んでもらいたいものだがな。コトネは自分の体に無理をさせるのが好きみたいだな」
「心配させてごめんなさい。こんな気持ちが自分でも初めてでどう対処するのが正解なのか分からないの…」
イザークが私を必要としてくれていて、側にいてくれる。なんて贅沢で心満たされる事なんだろう。
それでも母を失った悲しみは大きい。でも乗り越えなくては前に進むことはできない。何か前に進むきっかけがあればいいのだけれど…何かなのはまだわからない。
「失礼致します!イザーク様に取り急ぎお伝えしたいことがあります!」
突然ドアがノックされた。この声はケヴィンだ。こんな時間にわざわざ私の部屋にいるイザークを訪ねてくるなんて珍しい。
イザークもおかしいと思っているらしく真剣な顔になりソファに座り直す。
「どうした?入ってこい」
「失礼します!マウナ火山のドラゴンについてご報告したいのですが…」
・・・
魔界で一番大きな山は活火山のマウナ火山だ。
魔界にはドラゴンが数種生息していてどれも魔界でしか繁殖していない。だからこそドラゴンは神獣として大切にされている。
成獣になっても小さな種類は繁殖を行い農作業補佐や馬車をひいたりすることに利用されているが魔界の外に流出しないよう厳重に管理されている。基本野性のドラゴンは生息環境の保全をしているだけで人の手は介入させずに見守っている。
そんなドラゴンだが、マウナ火山でドラゴンの研究を行っている機関から様子がおかしいと報告があったそうだ。
今ドラゴンは産卵期で昨日までに12個の卵を確認していた。しかし今日の夕方再び見てみると3個しかなく9個の卵が消えていた!
雌ドラゴンはそのせいか苛立っておりこのままでは山から降りて人に危害を加えかねないと。
それと今日の昼過ぎ、不振な動きをする馬車が山のふもとにいたらしいとも。
「卵が何者かに持ち去れらた可能性が高いのか?」
「はい。雌ドラゴンの様子からもそうとしか考えられないそうです。不振な動きをしていた馬車に乗っていたのは人間界の者に違いないとの報告も…」
「なぜ人間界の者だと?」
「それが見た目でしか…。決定的な証拠はありません。もしも本当で卵が保管できるとしたら外部の者が簡単には入れない大使館だと思うのですが…」
「それじゃあ問い合わせをしても言いがかりだと言われるのがオチだな…」
以前歴史の勉強中に種族の見た目について教えてもらった。
人間は魔界人に比べると全体的に平均身長は低く頭髪は黒か濃い茶、目の色も黒がほとんどだと。
なるほど、人口の少ないこの世界の人間は人種の広がりは少なく日本人のような見た目の人が多いのか。と思ったのを覚えている。
きっとドラゴンの卵を持ち去ったとされる人達もこの見た目に当てはまったのだろう。
「確か明日人間界の大使がイザーク様に謁見に来られると聞いて急いでお耳にいれようと思い参りました」
「ああ、その予定だ。しかし証拠がなければこちらも強く出ることはできないな…」
私は野性のドラゴンに会ったことはないけれど卵を盗むなんて許せないし、雌ドラゴンも悲しみと怒りでいっぱいだろうと思うとやるせない。
私に何かできないかと考える……。
「ねぇ、証拠が無ければ見つければいいのよね?」
ソファに大人しく座っていた私の言葉に二人とも驚いてこちらを見ている。
・・・
昨晩私はよく考えてから提案をした。
イザークと謁見している間、魔界にある人間界の大使館は人手が手薄になるはず。
そこに見た目も問題ない私が忍び込んでドラゴンの卵がないかを確認すると。
人間界の人に魔法が使える人は少ないので危険は少ないはずだ。
魔法が使え聖霊の雫石のおかげで聖霊の加護もある私のほうが有利なのでもし見つかってしまったり危ないと感じたらすぐに逃げ出すようにすると。
「やっぱり、俺は反対だ!止めよう!」
「イザーク、今更それはいけないわ。私も魔界の為に役に立ちたいの。何よりもドラゴンを助けたいの。
それに昨日は許可をくれたでしょう?」
「昨日は焦ってどうかしてた。コトネにそんな危険な事をさせたくないんだ」
イザークは朝一番に私の部屋へ来ると懸命に説得をはじめた。
しかし私の意思も固い。
「無茶はしないって必ず約束するわ。何かあればすぐにアサヒと逃げてくる。お願いよ私を信じて?」
当たり前だけれど私は真剣そのものだ。それはイザークもよく分かってくれている。
「…頑固だな。俺は今日1日気が狂ってしまいそうだよ…本当に無茶はしないと約束してくれ」
「必ず約束するわ」
イザークは観念してくれたらしく私を強く抱きしめる。
本当に心配をかけて申し訳ない…でも私が役に立つことができるなら進んで協力したかった。
かくしてドラゴンの卵奪還作戦は本日実行される───!




