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14話 謎の女性

 

『いただきまーす』


 テーブルにはお城で食べる食事とはまた違った色とりどりの料理がならぶ。


「わぁ、このニョッキみたいなのモチモチでおいしい!」

「サラダのドレッシングもナッツの食感とコクがあって美味しいですわ!」


 ケヴィンが案内してくれたレストランは店主の故郷の郷土料理が自慢の人気店だった。

 たしかに家庭料理のような気取らなさがあり店内も和気あいあいとしている。


「お二方をご案内するにはラフすぎるかと思いましたが、たまにはこのようなお食事もおもしろいのでは?と考えました」


「私はじめてのお料理ばかりでとっても嬉しいですわ。連れてきてくださってありがとうございます」


 ユリアーナはご機嫌だ。私も肩が凝るマナー料理から解放されて食が進む。


 相変わらずユリアーナとケヴィンの食べっぷりは見ていて気持ちが良かった。食後のデザートまで美味しくいただいてから再び街に出る。



「お食事は美味しかったですし、お出かけは楽しいですわね。

 それにしても、コトネはまだ何も買っていませんけどよろしくって?」


 気になるお店をふらふらと見て回っているが未だ購入には至っていない私を心配してくれている。


「うーん、服や家具はお城に揃っているしどうしても今これが必要!ってものが特にないのよね…。

 ただ、イザークにはいつもお世話になっているから何かお礼でプレゼントをと思ったのだけれどイザークから貰ったお金で買うのはちょっと違う気がするのよね。それに何を買っていいか分からないのよ」


「男性へのプレゼント…そうですわね、難しいですわね。」

「ユリアーナは男の人にプレゼントしたことあるの?」


 何度も言うが私は年齢=彼氏いない歴だ!

 バレンタインデーやホワイトデーも学生時代は女の子同士で楽しんでいたので全くもって疎い。


「お父様にパイプをプレゼントしたことがありますわ…」


「私も父にネクタイやキーケースをプレゼントしたことなら…」


 だめだ。父親へのプレゼントじゃ参考にならない!イザークはタバコを吸わないしましてやネクタイなんてこの世界にはない。キーケースも王様には必要がない。

 これも女学校あるあるに含まれるのかもしれない。


 それにイザークは一国の王様だ。なんでも持っているだろう。


「ねぇ、例えばケヴィンが貰って嬉しいものって何?」


 ケヴィンならイザークと年も近いし幼馴染みだ!いい助言を貰えるかもと聞いてみた。


「えーと、まずイザーク様はコトネ様の選んだ物でしたらどんなものでもお喜びになりますよ。今日お預かりした財布も普段勉強を頑張っているコトネ様へのお小遣いだと思って頂いてよろしいかと思います。

 しかし、その贈り物が私の助言があって買われたものだとしたら少し不機嫌になってしまうかもしれません…」


 後々が怖いから聞いてくれるな!といった雰囲気がプンプンしている。


「そっかぁ、不機嫌になられたら意味がないわよね」


 頼みのケヴィンからも情報がないとなると益々難しい!あまりお金を使わなくてイザークが持っていないようなもの…と、ちょっとしたアイデアが頭に浮かんだ。


「ユリアーナ、買いたいもの見つかったかも!」



 ・・・



「コトネ、これはいかがですの?」

「いいわね!可愛い!

 私はこっちも気に入ったんだけれどどうかしら?」


 アイデアを話したところそれは良いプレゼントですわ!とお墨付きを貰うことができたのでさっそく扱っているお店を探し出し物色している。


「じゃあユリアーナのおすすめと、私の良いなと思ったこれで…ケヴィン、お会計お願いします!」


 お財布はケヴィンが握っているので会計をお願いする。

 イザークに何かプレゼントできたらな。という思いは前々からあったのでやっと目処がつきほっとする。


「はい。ではここで買い物をしたらそろそろ馬車へ戻りましょうか?」


 メイン通りはだいたい見終えたので今日のお買い物はここで終了になる。広場まではまだ歩くのでお城に着くのは夕方頃になりそうだ。


 会計を済ませてお店を出ようとするとレジにいたおばさんが女の子達におまけだと言ってガラスの瓶を手渡してくれた。

 瓶の中にはドライフラワーととろみのついた保存液が入っていて傾けると中に入っているラメがゆっくりと移動する。


「綺麗ですわ。コトネとお揃いね!早速お部屋に飾りますわ」

「そうね。わたしも帰ったら早速そうするわ!」


 "お揃い"がまた乙女心をくすぐってくれる。



・・・



 広場まで戻るとそろそろ帰る人も多いのか、来たときよりは人気が少なくなっていた。

 先にユリアーナが馬車へ乗り込み私も続こうと左手は差し出されたケヴィンの手を借りゆっくりとタラップに足をかける。








『みぃつけた』





 確かにはっきりと右の耳元で聞こえた。



 反射的に顔を動かし目線を向けるが人影はない。

 そのとき、誰もいないはずなのに右腕を捕まれた感覚がしっかりとあり私は凍りついた。


 全てが一瞬の出来事だった。私の体はそのまま強く右側に引っ張られてバランスを崩す。


 ケヴィンの手を掴もうとしたがパチンと誰かに弾かれた。



『だーめっ!』



「コトネ様!!」


 ケヴィンの叫ぶ声が聞こえたがすぐに街の喧騒は聞こえなくなりそのまま倒れこむ。


 尻もちをついたかと思うと目の前にあった馬車はなくなり倒れこんだ先も煉瓦づくりの広場ではなく苔むした土の上だった。



「は・じ・め・ま・し・てっ

 会いたかったのよ、コトネちゃん!」



 唖然としていると目の前に女性が表れた。


 何故会いたかったのか、何故私の名前を知っているのか?何よりもここは何処なのか!?

 全ての感情が恐怖に変わった。


「ふふっ」


 透き通るような白い肌に長い白銀の髪の毛を耳にかけた女性は無邪気に笑う。


 瞳の奥には炎が揺らいでいるようだ。

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