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12話 街へ.1

 夜会までとうとうあと半月となってしまった。

 私のダンスはなんとか様になり、マナーの勉強も一段落して最近はアンナお勧めのエステティシャンがお城まで出張してきてくれてエステまで受けさせられている。



「コトネ様、ユリアーナ様がお着きになりました」


 朝食後、自室で休んでいたところ扉がノックされアンナが顔を出す。


「ありがとう、今行くわ!」


 小走りで廊下に出て広間までユリアーナを迎えに行く。


「コトネ!お久しぶりでございますわ!本日はお時間を作っていただきありがとうございます」


 今日もユリアーナはフリルとリボンがついた女の子らしい可愛いドレスを着ている。


「こちらこそ、お誘いいただきましてありがとうございます」


 互いにかしこまったお辞儀をし顔を見合わせる。


「ふふっ、コトネとのお買い物楽しみにしていたわ!」

「私もよ!話し足りない事もあるのよ」


 ユリアーナが帰ったあとも手紙で連絡を取っていたのでお互いの事は以前より良く知るところとなったが、まだまだ話したいことはたくさんある。


「…それにしても今日のコトネの服装、いつもより何て言うか…まるで…」


 ユリアーナは一歩下がってコトネの服装を上から下までゆっくりと見てから率直な感想を言いずらいのかうーん、と唸っている。


「それがね、イザークが不安だって言うものだから…」


 ・・・


 それは今日の朝食時に遡る。


「ユリアーナが来るのはいつ頃になるんだ?」


「お手紙には昼前には着くと書いてあったわよ」


 1週間前からイザークは今日の為に警備の強化を!とあれこれ手配をしていた。今日も朝から何度もケヴィンに確認をとったり同じ書類に二度サインをしそうになったりと落ち着かない様子だ。


「必ず常にコトネの側にはケヴィンが私服で付くように言ってある。あとは街にも私服の騎士団員を多めに配備するようにしてるんだが…」


 過保護じゃない?などと口を挟むと大変ややこしい事になってしまうだろうから今日はイザークの気が済むようにしてもらおうと思っている。


「ありがとう。勝手にあちこち行動しないように十分気を付けるわ!」


「うん、それは気を付けて貰いたいんだができたらもうひとつ」


 イザークに提案されたのはなるべく地味な服装をし"ユリアーナのお供感"を出すということだった。


 ・・・


「…ということで急遽アンナの私服を借りたから、今日はユリアーナのお供として街に連れていってちょうだい?」


 事の経緯を説明するとユリアーナは驚いていた。


「そうでしたのね!そう、確かにまるで侍女のような服装だと思っていましたのよ。それにしてもイザークお兄様、とっても過保護でいらっしゃるのね。」


 "お兄様"の株が下がってしまったのではないか心配だった。しかし、そんなにも愛されているなんて素敵!愛ゆえの心配ですわね!とも言っていたので大丈夫そうだ。


 ケヴィンも合流しさっそくユリアーナの馬車に乗り込もうとすると広間の階段を慌ただしく駆け降りる音がした。


「コトネ!」


 執務中であるはずのイザークが広間まで出てきたのだ。


「イザーク!」


「どうしても気になったからな。

うん、その服装なら目立たなくていいだろう」


 腕を組み私の服装を吟味するように一周回って確認をする。無事お墨付きをもらえたようだ!


「では、今日は外出許可ありがとうございます。街を楽しんでくるわね」


「ああ、いい機会だからしっかり見てきてくれ」


 イザークは大きな手でコトネの顔を包み込み額にキスをする。


「ん?」


 人前で!と恥ずかしかったがそれよりも一瞬何か違和感を感じた。


「よし、ケヴィン頼んだぞ!」


 違和感については聞けなかったが初めての街への外出が楽しみでその事については程なくして頭から消えてしまった。


 ・・・


「すごい!煉瓦の街並みだなんてとっても綺麗だわ!素敵!」


 お城から馬車を走らせ程なくして見えた大きな橋を渡ると煉瓦造りの街並みが広がる。

 まるでテレビで見る世界遺産のようだと思ったが、それをユリアーナ達に言っても伝わらないのがとても残念だ。


「使用している煉瓦は全てシュタイーヒで作られておりますの!コトネが褒めでくださった事、お父様に報告したらきっと喜びますわ!」


「シュタイーヒの?それは是非ともお伝えしておいて!夜会でお会いできるのを楽しみにしているわ」


 大きな門が聳える広場で馬車は止まる。ここからは歩いて散策をするようだ。


 街は活気づき沢山の人が行き交っている。うっかりよそ見をしたら背の低いユリアーナを見失ってしまいそうな気がする。


「では、街へ出る前にご婦人方にご伝言です!

 "これで二人に好きなものを買うように"

 と仰せつかっておりますのでお食事でもお買い物でも、気になるものがありましたら私に教えてくださいね」


 そう言うとケヴィンは腰につけた鞄から革の財布を取り出しウインクする。


「まぁ!さすがイザークお兄様ですわ。では、お食事はご馳走していただこうかしら?」


「ケヴィンはこの街で美味しいご飯屋さんを知ってる?」


「はい。しばらく街を散策してから頃合いを見てご案内させていただきますね。せっかくだから沢山食べてしまいましょう!」


『はーい!』


 ユリアーナと声が重なる。まるで郊外学習のようでわくわくする!

 馬車から降りるとユリアーナは手を握ってくれる。ふんわりと柔らかい手だ。


「では、ここからは私がご案内状いたしますわね」


「迷子にならないよう気を付けるわ!宜しくね」


 期待に胸を膨らませ街の中へ歩き出す。

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