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続 わたくしが悪役令嬢ですか?

作者: 堀井 未咲

「アンディ様、目を覚ましてください。その女は悪人です。悪役令嬢なのです。アンディ様に相応しいのは私です」


「あら、あらぁ」


「姉上。お顔が輝いておられますね」


だって退屈なのですもの。

わたくしはクリスティアナ・ベルリー・ベラドンナ。

ベラドンナ女王国の王太女ですわ。

波瀾な卒業パーティでした隣国のリバイラナ王国から帰還しまして、遊び相手に事欠かないと思いましたのに。

弟たちが拘束し連れて来ましたリバイラナ王国の、お客様は皆様一様に卑屈になってしまわれましたわ。

まだ、然程日にちは過ぎていませんのに、同じ言葉を繰り返すばかり。

わたくしを悪役令嬢だと罵りましたヒロインさんの男爵令嬢は、あろうことか弟のアンディにすり寄ろうとしましたわ。

随分な尻軽さんだこと。

あまりにも、アンディへの粉かけが面白そうでしたから、ヘンリック王子や取り巻きに隠れて見学させてあげましたわ。

アンディにも忍耐強くお芝居をさせてみましたの。

お部屋も牢獄から貴賓館の一室に変更さしてあげました。

案の定、アンディを垂らし込めたと有頂天になりました。

自分は悪くない。

リバイラナ王国の王子に権力で付き合わされただけだと、一生懸命アンディに訴えていました。

お姫様扱いが気に入りましたのか、自分が囚人だと言う事をすっかり忘れてしまいましたわ。

その様子にヘンリック王子と取り巻きさんは、掌を返してわたくしに罪の軽減を懇願してきましたわ。

自分達こそあの女に騙された、とばかり喚く始末。

被害者意識を全面に押し出して、罪を無かったことにしてくれ、ですって。

馬鹿らしいことこの上ないですわ。


「姉上。いつまであの女をのさばらせて置くのですか?」


アンディの一言はお芝居にも飽きてきていましたわたくしに決断させましたわ。

だって、ヒロインであることに胡座を掻いてなにもかも他人任せでしたもの。

自分の魅力にアンディが虜になりまして、衣食住が満たされると溺れる始末でした。

わたくしの前では従順に振る舞っていましたが、アンディが面会するとわたくしの悪口ばかりでしたわ。

監視されていると思わないのかしら。

仮にも宗主国の王太女に濡れ衣を着させたのですから、斬首刑にならないはずはありませんのに。

最後の最期までアンディが助けてくれると思い、半狂乱で旅立たれましたわ。

もちろん、取り巻きの方々も一緒にですから、寂しくはないはずですわ。

そんなこんなで、リバイラナ王国のお客様はいなくなってしまいまして、少々退屈気味でしたの。

残念ながら女王陛下の許可が降りなくて、リバイラナ王国とは遊べなくなりましたの。

気晴らしにリバイラナ王国とは反対側のディンセル王国に招待されまして、アンディを伴い公務に勤しんでいましたわ。


「ちょっと、聴いているの。あんたよ、あんた。私のアンディ様を独り占めしている、あんたに言っているのよ」


まぁまぁ。

夜会の会場でわたくしに喧嘩を売ってくるなんて、何て楽しい事でしょう。

お口の悪さは、気にしないであげますわ。

上手ばかりなおべっかには、飽きてしまいましたもの。

さぁ。

わたくしを楽しませてくださいな。


「こ、こら。お客様に何て口の聞き方だ。謝罪しなさい」


「どうしてよ、お父様。私のアンディ様に悪人が、引っ付いているのよ。何でこんなオバさんまで招待し……」


「黙れ‼ 姉上への侮辱は許さない」


オバさん、ですか。

ええ、19才は立派な嫁ぎ遅れですわね。

王太女の地位にいると、理想的な男性に出会わないのよ。

皆様、権力目当てが丸わかりですもの。

ディンセルの王女様は10台前半ですもの、彼女にしましたらオバさんですわ。

くすん。


「ベラドンナ女王国の王太女に対する不敬極まりない暴言赦しがたい。姉上、御前を血で汚す行為をご許可ください」


「何で庇うの。アンディ様はその女に虐待されているんでしょう。私が、助けてあげるわ。お父様は国王ですもの。なんでも、私のお願いを聴いてくれるわ」


「誰がそんな嘘を吐いたか、教えろ。一緒に成敗してくれる」


「何で、怒るの。分かった。アンディ様は、洗脳されちゃったのね。安心してね。お父様に腕の良い治療師を頼んであげるから」


アンディ。

鎮まりなさいな。

話が噛み合っていなくてよ。

怒りに満ちているのは、判りましてよ。

リバイラナ王に続いてディンセル王も躾がなっていませんわね。

ベラドンナ女王国は、近隣諸国の宗主国でしてよ。

女だと侮っているのかしら。

アンディだけではなく、わたくしの護衛騎士も剣の柄に手を置いていましてよ。

無礼討ちは後にしてね。

少し、この娘と遊んでみたいわ。


「そう。ならば、お願いしてみると良いですわ」


「姉上⁉」


「殿下⁉」


ニッコリと微笑みアンディと騎士を黙らせました。

さぁ、ディンセル王はどうでてきますのかしら。

親バカ炸裂しますの?

それとも、愚かな娘を罰しますの?


「お父様。この生意気なオバさんをどっかにやってしまってよ。私、このオバさん大嫌いなんだから」


「……」


「お、王妃様お気を確かに」


あら。

愚かなお嬢さんの背後で王妃様が倒れられましたわ。

ベラドンナの王女に喧嘩を売ったのですものねぇ。

修道院送りなんて生易しい事は赦しませんわ。

わたくしが許可しませば、夜会が大惨事になりましてもおかしくありませんもの。

さぁ、ディンセル王どうしますの?

握り締めた拳を誰に向けますこと。


「申し訳ない。私の教育が行き届かないで王太女殿下に不快な煩わしさを味会わせてしまった。この通りだ。謝罪する」


「お父様⁉ 何でよ。いつもの様に私の言う事聴いてよ」


「馬鹿娘の処遇は、そちらに一任させて頂きたい」


「お父様‼」


あら、つまりませんわ。

無難な選択をされましたのね。

ディンセル王は夜会の耳目が集まりました最中で土下座ですわ。

なのに、王女は我が儘放題ですわね。

国王が謝罪した意味を理解していませんわ。

いつもの様に、と言います言葉はしっかりと記憶しましたわ。

わたくしが退屈をまぎらわす為だけに、ディンセル王国に訪れたとは思わないでくださいませ。

立派な公務でしてよ。

ここ数ヶ月、ディンセル王国の駐在大使からの定時連絡がなくなりましたの。

不審に思われた女王陛下に命じられまして、招待を受けたのですわ。


「土下座で全てが無かったことになる、と思っていますの? 女王陛下は、既にご存知でしてよ」


「!」


何を驚く必要がありまして。

我が儘娘に隠れてディンセル王国が何をしていますかは、公になっていますわ。

駐在員が最後に接触したのはお口が軽い我が儘娘でしたのよね。

何かしら重要な情報を掴んだとの連絡でしたわ。

駐在員が連絡を絶つ意味はひとつしかないですか。

今夜の夜会にしても、そうですわ。

随所に警備の騎士が多く配置されていますのね。

夜会服が窮屈そうな方々ばかりですもの。

何かが起こりますと言っていましてよ。

まぁ、一番有り得そうなのはわたくしの拉致監禁かしら。

おあいにくさま、アンディがべったり張り付いて独りにはならなかったですわね。

お馬鹿な娘をけしかけて、わたくしから引き離そうとしたかったみたいですけど。

お口の悪さで、アンディを怒らせただけですわ。

わたくし?

もちろん、オバさん呼ばわりしました小娘にお灸は据えますわ。


「女王陛下からのお言葉ですわ。

『わたしに逆らう下僕は必要がない』

 ですって」


ざわり。

わたくしの周囲を取り囲む愚かなディンセル王国の騎士たち。

リバイラナ王国と挟撃して女王国を攻め込もうとしていたのですってね。

女王陛下は、お冠でしたわ。

直々にわたくしに遊んで良いと仰せでしたの。

つまらない夜会に出席なんてと思いましたけど、そこそこ楽しめそうでしたわ。


「ねぇ。わたくしを楽しませてくださいな。それが、出来ましたら貴方の馬鹿娘だけは見逃してあげましてよ」


「な、何の事よ? お父様は一番偉い人なんでしょう」


「いいえ。大陸で一番偉い方は我がベラドンナ女王陛下でしてよ。次点でわたくしですわ」


氷原地獄(コキュートス)


無詠唱で魔法を展開させました。

わたくしに悪意ある者達を標的にしましたけど、夜会の場は当たり一面氷柱の群れと化しました。

わたくしに害を為そうとしましたお馬鹿さん達が多くいましたわね。

ちょっと驚きでしたわ。

わたくしとアンディ。

それにわたくしの護衛騎士以外は氷柱になったのですわ。

ああ。

わたくしをオバさん呼ばわりしました小娘とディンセル王だけは除外しましたわ。

話がありますもの。

無害そうな王妃は気絶中でしたので省きましたわ。

警戒は怠りませんけど。


「ねぇ。わたくしを悪役令嬢だと罵りました、お嬢さん。わたくしをそう断言したのはどうしてなのかしら」


「あっ、あんたはラドンナ公爵令嬢でしょ。何でアンディ様が姉上って言うのよ」


「ラドンナ公爵令嬢ですって? わたくしが?」


「そうよ。一作目の悪役令嬢でしょ。一作目でヘンリック王子に処刑されたはずなのに」


なるほどね。

リバイラナ王国が一作目で、ディンセル王国が二作目の舞台なのね。

わたくしは一作目しか知らないから、判らないはずですわ。

それにしましても、ラドンナ公爵令嬢に間違えられましたのも、二度目ですわね。

そんなに、ビジュアルが似ているのかしら。

確かに髪色は同じでしたけれど。

ふくよかな彼女とは似て非なる容姿をしているわ。

でも、一作目にはベラドンナ女王国のアンディが登場しませんから、ここはゲームの中ではないのは確かですわ。

一作目のヒロインが男爵令嬢で、二作目のヒロインがこの王女と言うわけね。


「馬鹿な、姉上はベラドンナ女王国の王太女だぞ。ラドンナ公爵令嬢では、決して違う」


「ベラドンナ⁉ ラドンナじゃないの? バグってるんだ」


バグ。

あら、この王女も転生者みたいね。

それならば、この愚かさも納得だわ。


「アンディ。この娘は連れて帰りますわ。新しい玩具が手にはいりましたもの」


「この娘をですか? 姉上のお気に召す何かをお持ちなのですね。判りました」


「ぎゃあ」


アンディの魔法で拘束された王女が雛壇から転がりましたわ。

みっともない悲鳴ですわね。

凍り付いた床の上を滑っていきました。

アンディ。

わざとやりましたわね。

でも、見事な転がり振りですわね。

誉めてあげましてよ。

頭をなでなでしてあげますわ。

殺伐とした夜会が和みましたわ。

わたくしをオバさん呼ばわりしました王女は壁に勢よくぶつかり沈黙しました。

あら、もしかして気絶しました?

なんて柔なのでしょう。

扱いには気をつけなくては。

簡単に壊れる玩具はいらないわ。


「王太女殿下におかれては娘がいたくお気に召したようですな」


「ええ。リバイラナで手にいれました玩具を退屈なあまりに壊してしまいましたの」


「……左様でしたか」


「姉上、お下がりください」


「大丈夫よ、アンディ」


暗器なら把握していますわ。

わたくしに近付いて人質にでもとり起死回生を狙ったみたいね。

つまらないわ。

見え見えな魂胆でしてよ。

跳ね上がる腕を鉄を仕込んだ扇で打ち据えました。

簡単にディンセル王の腕が折れました。

あら、貴方も柔なんですわね。


「ぎゃあ」


反撃されるとは思わないのかしら。

お馬鹿さんですこと。

つまらないわ。

あっさりし過ぎでしてよ。

わたくし、興味を無くしましたわ。


「アンディ。帰りましょう。後は軍にお任せするわ。ああ。お土産は忘れないでね」


「はい。姉上。お言葉通りに」


護衛騎士に転がった王女の回収を指示をだします。

収穫は王女一人だけ。

リバイラナと違い少ないですわ。

遊び方を考えないといけいわね。

どうやって遊びましょうか。

お姫様扱いは男爵令嬢でしましたから、二番煎じはやめて起きましょう。

ならば、どの扱いがいいかしら。


「うふふ。何だか暫くは退屈しなくて済みそうだわ」


「姉上。ディンセル王は如何致しますか?」


「放置で良いわぁ。女王陛下の事ですもの、軍が既に派遣されていますわ」


抜け目ない陛下ですもの。

この展開を見通しておられるわ。

わたくしを警戒するあまりに、夜会に騎士を集め過ぎたのが敗因となりましてよ。

人形の氷柱は2、3日はそのままですわ。

国の滅亡を身動き出来ない氷柱の中で、おとなしく聴いていれば良いですわ。

女王国を敵に回したディンセル王を恨むといいわ。

戦禍に巻き込まれた民人が憐れだけど、致し方ないわ。

精々、足掻くと良いわ。

いずれは、わたくしも出陣の沙汰が下りますわね。


「では、ディンセル王。ごきげんよう。次に出会いますのは、戦場ですわね」


うふふ。

とっても楽しみに待っていますわ。

久しぶりに大暴れでしますもの。

オバさん呼ばわりしました憤りは貴方の民にぶつけてあげましてよ。


「あはは。嬉しいわぁ。早くその時が来ないかしら。待ち遠しいわぁ」





前短編にブックマーク、評価、感想ありがとうございます。

ご要望がありました後日談です。

当初は姉上様が無双しまして、首やらが万々と飛び交いグロテスクになってしまいました。

マイルドな表現に改めました。


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[一言] 舞台が中世風とは書いてない。 【妄想劇場】 前話のお馬鹿たちの意識をコンピュータの中にアップロードし、仮想世界の中で斬首刑を繰り返している。 お馬鹿たちの身体には、忠実に設定した人工知能…
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