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『ROSA×Damascena』

番外編はまとめてあげることにします

5日目

 そのあと空いた席にどっちが座るかなんてひと悶着があったけど、無事にショッピングモールに到着することができた。誰かを気にしているのを気遣って席を譲ってあげたのに、私に席を譲ろうとするんだもん。優しくしてくれるのはうれしいけど、こっちの気持ちも考えてよ。結局後から入ってきたおばあさんに席を明け渡して事なきを得た。


 ここにきて一番に行く場所はすでに決まっている。翔は及び腰になっている。


「……ねぇ、本当にいかなきゃいけないの?」

「ダーメ。こういうのはすぐにでもつけなきゃいけないものなの」


 これは女の子には必要な試練なのだ。避けられるといったものではない。私は無理やり彼の手を引っ張って目的地へと向かった。


「――よし、着いた着いた」


 ランジェリーショップ『ROSA×Damascena』。質も種類も良質なのにお値段はリーズナブル。それに初めて買ったとき店長さんと仲良くなったいうこともあって、こちらに来てからはたいていこの店でそろえている。


「あれ、舞彩ちゃんじゃない。今月頭に来たばかりだけどどうかしたの?」

「あの時はありがとうございました、真澄さん」


 彼女がその店長の真澄 楓さん。いろいろなおすすめを紹介してくれたり、私に会うものを見繕ってくれたりしてくれる気さくな女性だ。何度か相談にも乗ってもらったこともある。


「実は親戚が昨日から泊まりに来てるんですけど、その子の下着があってないことに気付きまして。それで真澄さんに見繕ってもらおうかと」


 ひとまず簡単に翔の素性はごまかしておく。正直、さっきの相談の内容ってバレないか不安だったけどあっちはあっちで何やら納得してくれているようだ。


「ふんふん。何だ、そういうことだったの。妙にかわいい子連れて歩いているから、てっきりそっちの子に乗り換えちゃったのかと思った。

 もう、女の子ならちゃんと女の子らしくしないとね」

「……はい」


 翔は今にも縮こまってしまいそうなほど緊張しているご様子だ。男としてはこのようなところ居づらいんだろうなと思いつつ、その姿がかわいいから積極的なフォローは入れないでおこう。

 翔を私の後ろから引っ張り出して真澄さんに預ける。あとは真澄さんが何とかしてくれるだろう。私はその様子を見守ってあげよう。


「サクラのこと、よろしくお願いしますね」

「え、」

「よし、じゃあこっちで採寸しようか。大丈夫、大丈夫。そんなに緊張しなくてもいいよ~。お姉さんはこの道一筋のベテランだからね。痛くなるなんてことはない、むしろしてあげた子たちはみんな気持ちよく帰っていったからね」


 真澄さんの手に渡った翔は試着室の一つに連れ込まれていった。彼女の腕は信用しているんだけど、私の初めてのこれには慣れなかったなぁ。なんというか、彼女の手つきが艶めかしいくて。


 数分も経たないうちにその個室から翔の色っぽい声が聞こえてきた。周りの店員さんも少し呆れた顔をしながら先ほどまでと変わらずに作業しているところから、割と見慣れた光景なんだろう。

 ……私のときもここまで声が漏れていたと思うと少し恥ずかしくなるな。


 それからしばらくすると真澄さんが個室から出てきて下着を数点見繕ってから再び部屋の中に戻る。それが数回繰り返された後、彼女は翔を連れて私のもとに戻ってきた。妙に顔をつやつやさせて。


「いやー、まさかこんな子がいたなんてねぇ。十分に満足させてもらったよ」

「……流石に捕まりますよ」

「その時はその時だよ。

 はい、とりあえずこんなところかな。個人的には派手目なものも入れたかったんだけど、それは彼女の要望でね。あ、着てきた下着とはすでに入れ替えてきてもらってるから。こちらが料金ね」


 手渡された下着はどれもシンプルなものだった。せめてこれぐらいで、と翔が頑張って要求したのだろう。彼女ならぎりぎりのラインを押してくることがあるし。

 それにしてもやっぱり私のよりも大きいな。あとでじっくり観察、もとい触察する必要がありそう。


 ひとまずそれは置いておいて真澄さんに代金を渡す。彼女はレジで会計を終わらせてこちらに戻ってきた。


「今日もありがとうございました」

「いやいや、こちらこそ楽しませてもらった式にしなくてもいいよ。彼女、初めてで疲れちゃっているみたいだし早く一緒にいてあげな」


 彼女の言うとおり、翔は店から出て近くのベンチでぐったりとうなだれている。


「あー、はい。しっかりと慰めておきます」

「うん。じゃあまた何かあったらうちに来てね。安くしておくよ」


 私は彼女に軽くお礼をして翔のもとへ向かった。だいぶダメージが大きかったらしく、家にいた時よりも落ち込んでいるように見える。もうどうしようもなく女の身体を実感させられてしまったんだろう。


「――クーちゃん。僕もうお婿に行けない……」


 また昔の呼び方に戻ってしまっている。想定よりも傷が深かったらしい。仕方がないけど、しばらくは翔の好きなようにさせてあげるかな。


翔サイド描こうとすると長くなりそうだから後日書くことにしました。期待してる人いないと思うけどごめんね

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