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状況確認(物理)

三日目

 ひとまず状況が落ち着いて安心したのか、翔のお腹が小さく鳴った。今日何度目かになる恥ずかしいそうな顔を私に向けてくる。


「……とりあえず朝ごはん食べよっか」

「……本当にごめんなさい」


 キッチンに向かって簡単な朝食の準備を始める。そこまで買い置きがあったというわけじゃないし、冷蔵庫の中にあるものからベーコンエッグとサラダ、あとはトーストぐらいかなかな。ご飯食べ終わったら買い物に行かなくちゃ。


 そうこうしていると翔が立ち上がって家から出ようとしていた。


「あれ、どうかしたの?」

「いや、泊まりがけなら家から洋服とか持ってこなきゃいけないし」

「大丈夫? もう人通りも多くなっている時間だけど」


 時間はすでに9時を過ぎている。暑いといってもさすがにこの時間になれば外を出歩く人も増えてくる頃だ。


「でも僕寝巻のままで来ちゃったし……」

「私にいい考えがあるからご飯食べた後に、ね?」


 それなら、と翔を納得させて私は調理を再開した。

 正直、手間のかかるものじゃないから10分もあれば仕度は終わる。だからあとは二人でご飯を食べるだけ。……これってまるで新婚夫婦みたいじゃない? 二人とも女の子っていうわけのわからない状況になってるけど。


「――それでいまからどうするの?」


 食事を終えて一息ついてから翔が予定を聞いてきた。あの様子からすると私が何か戻るあてを持っているって思ってるような口ぶりだけど、私にはそんなこと全く心当たりなんてない。


「ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから」


 そう言い残して私は自分の部屋に戻ってあるものを探す。できれば翔が似合うのがいいし、ある意味腕の見せ所だ。

 適当に見繕って戻ってくると、翔は私の手に持っているものを見て顔をひきつらせた。


「え、黒羽。流石にそれは冗談だよね? 僕今はこんな姿だけど男だよ」

「翔、今は女の子なんだから女の子らしく振る舞わないと。大丈夫、抵抗感がまだ少ないの選んであげたから」


 私が持ってきたのは自分の私服。これから行く場所のためにもこれぐらいの準備は必要だろう。


「これでも翔の子と想ってやっているんだよ。女の子になったんなら短い期間でもそれを楽しまなくちゃ」

「そう楽観視できないよ!」

「なら今から一緒にデパート、自分の私服で行く? あそこ学区内だから知り合いとかに会うかもなー。同じ服着てたら性別が変わったのばれちゃうかも……」

「そ、それくらい黒羽一人で行けばいいだろ。僕は家で待っているから」


 はぁ、翔は全然わかってない。ま、仕方ないといえば仕方ないか。男の子には女の子のこういうところなんてわかるわけないんだし。


「翔のための買い物だから翔が行かなきゃダメなんだよ」


 私はそう言いながら翔の背後に近づいて彼(彼女)の胸をもみしだいた。


「ふぇっ!? ちょ、黒羽!? 急に何を――んっ」


 私は自分の大きさと比較して翔の胸の大きさを予測する。ふむふむ、やっぱり私より若干大きいな。C……いやこれはDあるかもしれない。うらやましい。


「――あっ、んっ……。ねぇ、黒羽ぁ、んっ!」


 だんだん翔の顔が赤くなって声が荒くなってきている。……なんか楽しくなってきたけどこれ以上やると本気で拗ねて口きいてくれなくなりそうだからそろそろ開放してやろう。帰ったらうまいこと言いくるめて存分に楽しんでやる。


「ふぅ、触ってみて分かったけどやっぱしブラは買いに行かないとダメみたい。私のじゃ少し小さいかも」

「はぁはぁ……、それ確認のために、あんなにもむ必要はあったの?」


 正直に言えばその必要は全くない。軽く触れば自分のと比較するだけだしすぐにわかる。でも――。


「翔の反応がかわいかったからつい、ね」

「く、黒羽のばかー!」


 翔は涙目になって部屋の隅に縮こまってしまい、慰めるのに数十分の時間がかかってしまった。


 ――それにしても翔、本当に女の子になっちゃってるんだなぁ……。


土日は休ませてください

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