第一話 起床と支度
◇◇◇◇
次の日。
「んがっ?」
まだ日が昇っていない時分に、ジーンが目を覚ます。
「おお、寒っ!」
身を竦めて、ジーンが飛び起きた。
夏にもかかわらず、気温は随分と低い。
そもありなん、ここは北国である。
年中温暖なサラたちの町と比べたら、朝は相当に冷え込んでいた。
「あれ? 俺何でこんなところで?」
辺りをキョロキョロ見渡して、ジーンが呟いた。
ジーンにしても、旅先であることは重々承知である。
だがしかし、問題は寝ている位置である。
ジーンが起きたのは、ベッドではなく床上であった。
「よいしょっと……って、なるほどな」
立ち上がって、ジーンが納得した。
果たして、ベッドはサラが独占していた。
布団に包まって、ド真ん中に収まるサラである。
ジーンが押し出されたのは、想像に難くない。
「自分から勧めておいて、なんつー女だ……」
呆れながら、ジーンが肩をグルグル回す。
「う~ん……。この感じだと、2~3時間はベッドで寝れたかな?」
疲労を確認するジーンであった。
「おい、サラ。サラってば!」
「……ぐぅ」
ジーンが揺すってみるも、サラは目覚めない。
ハンターの朝は早く、本来ならば寝坊である。
もっとも、今は旅の道中でしかない。
むしろ、それだけサラの疲労が強いと言えた。
「しゃーねーな……。先に出かける準備でもするか」
ジーンが言って、荷物の山に向かった――。
「うわ―……。分かっていたけど、無茶苦茶だなこれ……」
剣を鞘から抜いて、ジーンが頭を抱える。
ジーン自慢の両手剣は、刃がポロポロ欠けた上に赤錆が浮いていた。
先日の地虫戦の結果である。
「一応手入れはしたんだけどなー」
剣の腹に顔を映して、溜息をつくジーン。
元来、両手剣は対人用に過ぎない。
魔物相手に使えば、損耗は必至である。
「駄目だ! 素人じゃどうにもならねー」
修繕を諦めて、ジーンが剣を収めた。
…――…――…――…
別段ジーンにしても、刃物を研げない訳ではない。
ナイフや包丁はもちろん、短剣程度なら、ジーンは自分で砥いでしまう。
だがしかし、長剣それも両手剣ともなれば、話しは別である。
長い刃物は、それだけで砥ぎにくい。
砥ぎ具合にムラが出来、グニャグニャな刃筋になりやすい。
そのため、たとえ本職の戦士であっても、こういう武器は専門家に任せるのである。
…――…――…――…
「取り敢えず、着替えてっと……」
ジーンが甲冑を着込み始めた時である。
「うん?」
動きを止めるジーン。
「ひい、ふう、みい……。3人か」
扉を見つめて、ジーンが笑みを浮かべる。
「おいおい、面白くなってきたじゃねーの!」
言って、ジーンが再び両手剣を抜いた。




