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魔法使いの世界にて  作者:
三章 マジックバトルトーナメントにて
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忍術と言う名の魔法にて①

「それでは続きまして、第二試合を始めたいと思います。マグノリア支部の次鋒は出場してください!」


 地面に倒れるベルベットを医療班が運んで行った後に、審判がマイクでそう呼びかけた。

 チカはマグノリア支部の控え室と繋がる出入口を見つめて相手を待つが、なかなか出てこない。そんな時だった。


「お主のその技、侍でござるな」


 いきなり背後から声が聞こえた。

 チカは驚きながら後ろを確認すると、背中合わせで立つように、一人の背の低い忍び装束を着た男が立っていた。

 これには審判も面食らったようで、その目をパチクリとしていた。


「……そうです。私は侍ですが、あなたは忍者ですか? わざと人の後ろに立ってから話しかけるのは止めた方がいいですよ。割と本気で気分が悪いので」

「それは失礼。それがしは忍び故、常に気配を消す事を心がけているでござる」


 そう言って彼はピョンと飛び跳ねる。空中でクルリと体を回し、指定の位置に綺麗に着地をした。


「某はマグノリアの次鋒を務めるザザと申す。お主とは一度手合わせをしてみたいと思っていたでござるよ」


 ザザは自分の目の前で人差し指を握り、人差し指を立てる。まるでこれから忍法を使う時のような仕草である。


「そうですか。私もお互いに整列していた時からあなたの事は気になっていましたよ。魔法使いでありながら、自分のあるべき姿をしっかりと決めている者ですから」

「確かに。某は忍者が最強だと信じ、それを証明するために魔法の力を忍術に見立てて戦闘に組み込んでいるでござる。お主に勝てば、それすなわち忍者の方が勝っている事の証明なり!」

「私と同じですね。けど忍者が最強だと証明するのは難しいんじゃないでしょうか。だって忍者と侍を並べたら、明らかに侍の方が強いのは明白ですから」


 それを聞いたザザの眉がピクピクとひくついた。


「お主は何か勘違いをしているようでござるな。忍者というのは影の存在であり表に出る事は決してないでござる。だから他と比べる事はなんて出来ないし、比べたとしても客観的に低く見られがちでござる。しかし実際に戦ったら、勝つのはまず間違いなく忍者でござるよ」


 今度はチカの眉がヒクヒクと動いた。


「いや意味分かりませんよ。今自分で比べられないって言いましたよね? なのになんで勝つのは忍者だって断言できるんですか? 単純に戦闘能力で考えたら勝つのは間違いなく侍ですから! 忍者なんて不意打ちとか闇討ちとか、そういう汚いやり方でしか戦えないじゃないですか!」

「そういうのを全部ひっくるめて忍者の方が上だと言っているのでござる! 逆に侍なんて正面から刀を振り回すだけの単細胞にすぎぬ。そんな相手なぞ忍びの敵ではござらんよ」

「いやいや何言ってるんですか? 最強なのは侍ですから!」

「いやいや世界を知らぬとはまさにお主のような者を言う。最強なのは忍者でござるよ」

「いやいやいや……」

「いやいやいやいや……」


「あの~……そろそろ始めてもよろしいでしょうか~?」


 いがみ合っている二人に、女性審判が恐る恐る訊ねるのだった……


「あ~……オホン! もう少しだけ待って下さい。最後に一つだけ、あなたに聞きたい事があったんです」


 チカは一度間を置いて、真剣な表情と声でザザに問いかける。


「ウチの権利書を盗み出したのは、あなたなんじゃないですか?」


 すると、忍び装束から覗くザザの瞳がギラりと揺れたように思えた。


「何を言うかと思えば……聞いていないのでござるか? あれは我らがノードの街へ視察しに行った時に道端で拾った物でござるよ。盗んだなんて人聞きが悪い!」


 あくまでも拾ったと言い張るザザに、これ以上話しても無駄とか思った時だった。


「――まぁ、仮にも盗めるかと問われれば、某なら余裕でござろうな。忍者ならそれくらい朝飯前でござるよ。……例えそれが、施錠の掛かった倉庫の一番奥にしまってある金庫の中。だとしてもな」


 ニタァと、口角を上げて笑うザザを見た時、チカの中で疑惑は確信に変わった。

 権利書は、金庫に入れて倉庫の一番奥へとしまっていたはずだとアレフは言っていたからだ。これによってチカの怒りは沸々と湧き上がり、気が付けば刀の鞘を強く握りしめていた。


「そうですか。もういいです! さっさと始めましょう!」


 チカは敵意を込めた眼差しでザザを睨みつける。同時に、居ても立っても居られずに刀を抜き、その先端をザザに向けていた。


「あなただけは、私の手で裁きを下します!!」

「ククク、面白い。我が忍術の肥やしにしてやろう」


 狂気じみた笑みを浮かべるザザに、さらに頭が熱くなっていく。チカは出来る限り落ち着こうと、必死に冷静を装っていた。


「それでは第二試合を始めたいと思います! 先鋒チカ選手対、次鋒ザザ選手。試合ぃぃぃ開始ぃぃぃ!!」


 女性審判のコールと共に、二人の闘いは幕を開けるのだった。

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